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悪戯は、意識を遠ざける。

…だめだ、またやってしまった…。

普通に話してただけなのに、なんで気付いたら彼に迫っているのだろう…。

「…はぁ…はぁ…。」

意識を逸らそうとすればするほど、どんどん脳裏に強く焼き付いてしまう。

想いが溢れてしまう。止まらなくなってしまう。

…しかし、このままだと…いつか彼のことを…傷つけてしまうかもしれない。もしかしたら、既に…

「…う、うぅ…。」

…そうとは分かっていても、我慢できない。自制できない。

好きだ、彼のことが。

彼が欲しい、もっと欲しい。もっともっと…

「ぐ、う…っ…。」

また抱き枕では我慢できなくなってきてしまった。

しかしまた彼の家に行くのは流石に…。

「んぅ…っ…。」

だめだ、止まらない、今彼のところに行ったら…いけない。

しかしこの想いを止める術なんて私は知らない。

「…ちゅっ…」

…抱き枕にキスをすると、少し落ち着く気がした。

彼のことは考えてはいけない。別のことに意識を集中させて…。

「…!?あ、うぅ…!」

彼の唇の柔らかさ、温かさ、感触を思い出してしまった。

またしたい、あんな軽いキスで収まるわけがない。一回で収まるはずがない。

「すき…すきぃ…ちゅっ…。」

やばい、胸がどんどんきゅんきゅんしてきて…苦しい、熱い…。

愛が止まらない。欲が止まらない。

…だめだ、良い加減前の自分に戻らないと…。


「…あ、夕透くん…?」

「あぁ楓先輩、どうしました?」

「えっと…ね、お願いがあって…。」

「…というと?」

「…あのさ…澄夏のことなんだけど…。」

「…澄夏先輩…?」

「…そんなにさ、その…仲良くしないで欲しいな…?」

「…えっと…それは…。」

「…ごめん、こんなこと言うのはだめだって分かってるよ…?…分かってるんだけど…。」

「…最近、ホルンの一年生から聞くんだ。澄夏と夕透くんが距離近いって…。」

「…それは…仲良くさせていただいてますけど…。」

「…噂立ってるんだよ、付き合ってる…。」

「えっ!?いや、そんなわけ」

「事実じゃなくても…!…そう見えてるの、みんなから…。」

「………。」

「…怒ってるわけじゃないよ、でも…。」

「…僕、どうしたら良いんでしょうか。」

「…え?」

「…いろんな方に親しくしてもらえて、嬉しいんです。色んな方に好意を向けられて…ちょっと理解に苦しみますけど、ありがたいです。…だからこそ、みんなに平等に接したいんですけど…断れなくて、僕。まさかあんなに魅力的な人から告白されるだなんて思ってもみなかったし…分かんないんです。一年生のみんなとも勿論楓先輩達とも仲良くしたいです。でも誰かと関わったら誰かとは蔑ろになっちゃって…わざとじゃないんですけど…やっぱり、そう見えても仕方ないんです。…なんか、何が言いたいのか分からなくなっちゃいましたね、ごめんなさい。…やっぱり、僕は皆さんと釣り合わ」

ぎゅっ

「!?…か、楓先輩…?」

「分かってるよ、夕透くんがみんなを大切にしたいのも、悩んでるのも知ってるよ。だから…困ったら頼ってよ。…出来たら、私だけに…。」

「…そんなん情けないですよ。女性に甘えるなんか」

「ううん、そんな事ないよ。夕透くんは甘えていいんだから。いっつも夕透くんに頼ってるのは私たちの方なんだから…辛かったら、頼って…ね?」

「…でも、それだと…。」

「…わ、私と…。」

「…?」


「…私と付き合えば…合法的に…甘えて良いんだよ…?」


「…あの、だから別に僕は…。」

「…強情だなぁ…。そんな悪い子には…ぎゅーっ…。」

「…あの、楓先輩…。」

「…何も気にしなくて良いから、目閉じて、私にもっと…甘えて…?」

「………。」

「…えへへ、いい子いい子…よしよし。」

「…もっと、素直になって良いんだからね。元々無理言って吹奏に入ってもらったんだし…。」

「…ごめんなさい、何か…。」

「…何も謝ることなんかないよ。夕透くんは頑張ってる、頑張ってるから…ね?」

「…ありがとうございます。」

「…もっと…好きになっていいんだよ、私のこと…。」

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