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悪戯は、正常を装う。

「…(プーーーーー……)」

今日は久しぶりに朝練に来たのだが…なんと夕透くんが居た。先週の件もあるし気まずくはあるが…せっかく会えたのに何も話せないのも嫌なので勇気を出すことにした。

「お、おはよう…っ。」

「あ、遠野さん。おはよう。」

…彼の行動一つ一つにキュンキュンしてしまう。違う違う、今はキュンキュンしている場合ではない。先日のことを謝らなければ。

「ゆ、夕透くん…。」

「ん?どうかした?」

「き、昨日はごめん…!!!」

「ちょ、こ、声が大きい…。」

「あご、ごめん…でも、本当に謝りたかったから…!」

「あの、分かったから、もうちょっと声を抑えて…。」

「…うん。」

「普通にめちゃくちゃ似合ってたから。心配しないで。じゃ。」

「あ、うん…。」

…優しいなぁ…かっこいいなぁ、やっぱり…


「えー、ここに判別式を用いるとD>0なので…」

第一回定期考査が終わり、なんと席替えが夕透くんの隣になっていた。

「……………(カリカリカリカリ…)」

こうして見ると、本当にかっこいい顔だと思う。入学当初こそイケイケな男子達に気を取られていたが、他の女子と同じようにしばらくすると物静かな男子…特に、彼に視線が集まった。現にクラスの女子達だけのラインでは彼の話題がしょっちゅう上がっている。そんな彼は想いを寄せられているとは知る由もなく、真面目に二次関数の共有点の個数を求めている。噂によると彼は入試で成績トップだったとか…ん?そういえば…

「あっ!!」

「ん?どうした遠野、解けたか?」

「あ、い、いや、何でもないです…。」

そうだ、彼はあの日壇上で…




「ご紹介預かりました、新入生代表の1年2組、結宮夕透です。ご存知の方もいらっしゃるでしょう、今年でこの瀧宮高等学校は創立100周年になります。この記念すべき高校の100期生として入学できることを光栄に思うことと同時に、この先に待っているであろう、いろんな人との出会い、体験、繋がりを大事に…新入生一同、成長していく所存です。…ここで、自分語りを一つさせていただきます。僕には、人生において大事にしている言葉があります。



『自分にはできると信じれば、あなたはもう道半ばまで来ている』



…アメリカ合衆国第26代大統領、セオドア・ルーズベルトの言葉です。彼は史上最年少でニューヨーク議員になった人物なんです。ニューディール政策で知っている人も多いでしょう。そんな彼の残したこの言葉…何事も、信じることから始まります。成功、失敗は信じ続けた人にしか分からないお楽しみ。そう思うと…どうです?挑戦してみたくなってきましたか?自分の可能性を信じ続け…チャレンジするのはいかがでしょう。そんな彼の言葉と共に、新入生代表挨拶と替えさせて頂きます。」



そうだ、私は彼の素晴らしいスピーチに心惹かれたんだ。

彼のあの姿が眩しくて…目に焼きついて…だから私は…彼のことが…


「遠野さん?当たってるよ?」

「あ、え、?」

「ここ、問3の(4)。」

「あ、えっと…√5…です。」

「正解だ。でも授業はちゃんと聞いとけよー。」

「は、はい…。」

「………(にひっ。)」

「………っ……///」

…隙あらばキュンとさせてくるのは心臓に悪い。

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