悪戯は、理想に邂逅する。
「今未橋先輩とあそこで勉強してたんです。良かったら深涼さんも一緒にどうですか?」
「あ、えっと...」
...流石に無理だ。興味より危機感が上を行っている。
「...きょ、今日友達と待ち合わせしてて...また別の機会に誘って欲しいな。ごめんね。」
「なるほど...なら仕方ないですね。また近いうち勉強しましょう。」
「あ、うん。」
前回の彼との勉強の約束も自分のせいでお流れになった事を思い出し少し胸が痛んだ。
「じゃあ僕はこれで。また月曜会いましょう。」
「うん......あ、あのさ...っ。」
「どうしました?」
「...夕透くんは...1年生なんだからね...?」
「...そんなこと分かってますけど...。」
「...違くて...その.........あ〜もう...!!」
「......あ、あんまり...先輩と仲良くしないで...。」
「...え?それはどういう風の吹き回しで...?」
「...それは.........。」
「...夕透くんには私とか...千春ちゃんとか...居るじゃん。」
「...そりゃ、お二人共良い人ですけど。」
「...違う、そういう訳じゃなくて...!もう...いい加減気づけ、ばか...。」
「......は、話したいの!夕透くんと。私も千春ちゃんもみんな!別に先輩は2年の男子の先輩居るじゃん。私たちには夕透くんしか居ないんだから...責任を全うしてくれないと困る...から...。だから、その...」
「...もっと...私を見て...?夕透くん...。」
「...あ、おかえり。何話してたの?」
「お待たせしました...ちょっと近々の練習の事でお話が...。」
「なるほどね。やる気満々で先輩は嬉しいよ...。」
「いえいえ...これからも頑張ります。」
「謙虚だなぁほんと。そういう所もすーきっ。」
「...ありがとうございます。」
「おっそいなぁ千春...。」
「ごめん茜音!めちゃくちゃ道混んでて...!」
「もう!せっかくこの私が彼を落とす為のコーデを考えてあげるって言ってるのに!」
「ごめんごめん...でもその...ほんとにやるの...?」
「当たり前でしょ!前も言ったけど千春素材良いんだから絶対めちゃくちゃ可愛くなれるって!はい歩く歩く!」
「わわ、ちょっと押さないで...」
「ん〜…どっちが似合うかなぁ…」
「ね、ねぇ…本当にその服達着るの…?」
「当たり前でしょ!…あの子のこと、好きにさせるんじゃないの?」
「そ、それは…そうだけどさ…」
「じゃあぐずぐず言わずに着る着る!」
「あぅ、ちょ…」
「き、着れたけど…」
「お、じゃあお披露目だ。」
「その…ちょっと出過ぎじゃない?肌…」
「そーかなぁ…大体の女の子そんなもんじゃない?」
「いや、こんな短いスカート穿いたことないもん…」
「んもー!つべこべ言わずに開ける!」
さーっ
「えぁ、ちょっ…!!」
「え、めちゃくちゃ似合ってんじゃん!絶対好きになってくれるって!」
「わ、私なんかじゃ無理だよ…こんな暗ーい女好きになる訳…」
「あれ、遠野さん?」
「…んぇ?」
目に飛び込んできたのは、今一番私が考えていた人だった。