悪戯は、三竦みへと変わる。
「…ふわぁぁぁ…2楽章譜読みしなきゃ…ん?」
「はぁ…。」
「よっ。(ぽんっ)そんなため息ついてどうしたよ少年。」
「………途月先輩。」
「あ〜!今私の名前忘れかけてた!?」
「あいや、違います、ちょっと別の問題が…」
「ふ〜ん…何の問題?」
「…秘密です。」
「ちぇ〜…教えてくれたっていいのに、けち〜!!」
「あはは…すみません。」
「ま、いいよ。私の名前覚えてくれてたんだし許しちゃう。」
「ありがとうございます。」
「うむ、良かろう。」
「あ〜お〜い〜!!2楽章合わせ…あれ?」
「あ…お疲れ様です。」
「こんなところで2人で何してたの?大事なお話?」
「ううん、なんかこの子落ち込んでたからさ。お話聞いてあげたほうがいいんじゃないかなぁと思ってさ。」
「なるほどね〜…ま、それは私の役目だから、碧は練習行ってていいよ〜ん。」
「役目?」
「うん、部員の悩みを聞いて解決するのが部長の役目でしょうよ。」
「そうかね…ま、今回は私が聞くから、かえちゃんは戻りな〜。」
「あ、あの…」
「あれ、深凉ちゃん?どしたの?今一年生パート練の時間じゃなかったっけ?なんか不備でもあった?」
「いやその…それはそうなんですけど…時間になっても夕透くんが来なかったので探してました。」
「ありゃりゃ…ごめんね、今夕透くんから大事な話聞いてるから、先に戻ってパート練続けておいて。」
「いやでも…一年パートリーダーは夕透くんなので…彼がいないと効率的に進まないと思うんですけど…」
「んー…でも今は無理かなぁ…」
「……。」
「…じゃあさ、夕透くんに決めてもらおうよ。」
「あ、え?」
「ほら、選んでよ。部長のお話、ちゃんと聞いてくれるよね…?」
「第一発見者の私と話すじゃんね?」
「夕透くんがいないと練習できないから…来て…?」
「ほら、夕透くん。」
「「「誰にするの?」」」
「…あの、えっと…」
「それ…順番にやっちゃダメなんですか?」
「例えば…?」
「…あくまで一例ですけど、か…名塩先輩とお話しして、途月先輩にお話し聞いてもらって、パート練に入るって言う感じで…」
「一番に君のこと見つけた私が2番目なのは納得いかないなぁ〜…」
「夕透くんがいないとパート練どころじゃないよ…!!」
「あくまで一例ですから…」
「…だめ、ちゃんと1人を選んで…?」
「え、何でですか、割と筋通って」
「…3人じゃダメなの、ちゃんと1人だけ選んでよ。」
「夕透くん、優柔不断すぎるのはダメだよ、ちゃんと決めて。」
「……えぇ〜…」
「ほら、早く…!」
「うーん……(誰でもいいからお邪魔しに来てくれ〜…)」
ぐいっ
「どこ見てんの。」
「あ、碧、何して…!?」
「途月先輩だけずるいです…!私も」
「ねぇ…3人揃って何してるの…??」
「澄夏…?」
「いいから。もう全体合奏の時間なんだけど。」
「あ、え、もう10時!?行かなきゃ!!」
バタバタ
「ほら、夕透くんも早く。」
「は、はい…。」
「…ねぇ。」
「はい…?」
「…何されてたか、後でちゃんと教えてね…?」