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悪戯は、克己心と戦う。

「…あ、依澄さん。深凉さんの様子どうでした?」

「さっき起きたよ。もうだいぶ良くなったと思うんだけど…今日中はひとまず安静にしなきゃかな。」

「まぁそうですよね。依澄さんも気を付けてくださいね、熱中症。」

「ありがと、でも夕透くんも気をつ」

ずいっ

「わぇ、ちょ、夕透くん…?」

「ちょっと目、閉じてください。」

…え?これってもしや…キス…!?

「ちょちょ、そんな急に…心の準備が…」

「良いから早くしてください。」

「う、うん…。」

ごめん深凉…!でもこんなふうに迫られたら私も我慢できないから…

「じゃあ失礼しますね。」

「うん…っ。」

かさっ

「ひゃうっ…!」

「ん、はい。良いですよ。目開けても。」

「…え?何したの…?」

「あ、まつ毛にほこりみたいなのが付いてたので取りました。」

「……そっか。」

「…何か不機嫌になってません?」

「…別に。早く掃除続けよ。」

「あ、はい…。」

なぜかしばらく依澄さんと深凉さんからの対応が冷たくなったのだった。


「…あ、おかえり。」

「…ただいま。」

「どしたのそんなにしょぼくれちゃって。何かあった?」

「…聞いてよお姉ちゃぁぁぁん…。」


「なるほどね…かっこいい男の子の特権ね、キス思わせぶりは。」

「…割と期待してたのに。まつ毛触るだけ触って…。」

「…そもそもなんだけどさ。」


「依澄はその子のこと、好きなの?」


「んぇ…?わ、私…?」

「だって、そうやってもやもやしちゃうのはその子に気があるからじゃないの?」

「…そうかもだけど…わかんない、単純に男の子からそんなことされたの初めてだから…戸惑ってるだけかも知れないし…。」

「ん〜…でも好きじゃ無いならドキドキより嫌って気持ちが先に来るんじゃない?」

「…それは…あの子顔がいいから…。」

「へぇ〜…青春だねぇあんたら…。その子彼女いるの?」

「…わかんない、かっこいいからいるかも知れないけど…。」

「明日学校で聞いてみなよ、彼女さんいるの?って。」

「無理無理無理!!そんなん恥ずか」

ピンポーン

「こんな時間に珍しいなぁ、依澄なんか頼んだ?」

「最近は別に…」

「ふーん…。」

ガチャ

「あ、こんばんは。杠さんのお宅ですか?」

「はい、そうですけど…。」

「良かった、僕娘さんと同じ高校の結宮夕透と申します。今娘さんいらっしゃいますか?」

「居ますけど…何か御用で?」

「机の上に明日までの課題が置きっぱなしだったので持ってきたんですけど…もし良かったらお渡しいただけますか?」

「…いや、本人呼んでくるので、ちょっと待っててください。」

「あ、はい…」


「こんな遅くに誰…って、夕透さん…!?!?な、なな何で…!?」

「あ、依澄さん。机の上に明日提出の課題置きっぱなしで、見た感じまだやってないように見えたので持ってきたんですけど…迷惑でしたかね…?」

「あ、いや、ありがとう…!」

「良かったです。じゃあ自分はこれで。また明日」

「あ、ちょっと待って…!」

「…どうしました?」

「えっと…ね?聞きたいことがあって…」


「夕透くん…か、か…のじょ…いるの…?」

「…急にどうしました?」

「え、いや…別に…」

「…それは…秘密です。」

「え、それはだめ」

「おやすみなさい。依澄さん。」

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