悪戯は、誓いを交わす。
「えーっと、出席番号1〜20番は校舎側、21〜40番は体育館側を掃除してくれ!ブラシは人数分ないから適当にペアを組んで2人1組で使ってくれ!それじゃ長い時間になるけどよろしくな!暑いから水分補給もしっかり忘れずにな!」
…まさか高校でもプール掃除をする羽目になると思わなかった。しかもかなり暑い。プールサイドに太陽が照り付け地面に反射した熱が顔に当たっている。本当に5月なのだろうか。地球温暖化を舐めてはいけないと反省した。しかも2人1組でペアにならなければいけないらしい。まぁ適当に奏翔辺りを誘おう…と思っていたのだが…
「あ、美咲さん!一緒にペア組みませんか…!!」
…あちらは忙しそうだ。だがただのペアにあれほど命懸けで挑むものなのだろうか。まぁ仕方ない、せっかくの青春の1ページを邪魔しないためにも誰か他の人を…
「……………………。」
なぜかとても睨まれている。校舎側からとても睨まれている。が、あれは反応しない方が良いのだろう。申し訳ないがスルーするしかない。
「ね、ねぇねぇ…!」
「え?」
「!!!!!!」
「…杠さん?」
「あっ、覚えてくれてたんだ…!」
「いやまぁ…深凉さんのお友達なので。」
「…そういう覚え方かぁ…。」
「え?何て言いました?」
「あ、いや、なんでも…」
「そうですか?」
「はい…えっと…夕透さん!」
「どうしました?」
「えっと、その…2人1組でペアになるって話あったじゃん…?」
「先生が言ってましたね。それが何か…?」
「も、もし良かったら…ペアになってくれない…かな…?」
ほう。自分も探していたところだし好都合だ。この誘いは乗るしかない…のだが。
「……!!!!(ブンブンブンブンブンブンブン)」
視線の先で物凄い速さで首を横に振る女性が見える…が、あれは多分夏の瞞しだろう。相手にしてはいけないのだ。
「自分も探してた所なんで、ありがたいです。よろしくお願いします。」
「ほんと…!?ありがとう…!!あっ、私ぶらし取ってくるね、待ってて!」
「あ、ありがとうございます…」
「おうおう、夕透も女の子getか…良かったな!」
「言い方。合コンみたいに言うんじゃねぇ。」
「まぁ強ち間違いじゃないだろ。」
「あ、ちょうど良かった。ひとつ聞きたいんだけどさ。」
「おう、何だ?」
「奏翔とかが必死に女子とペアになろうとしてるのはただの変態だからか?」
「…え、お前もしかして知らないのか?」
「あいつらが変態なことは知ってるけど。」
「そこじゃねぇよ。てっきりお前も誰かから聞いたもんかと思ってたんだけどな。」
「だから何をだ?」
「ジンクスだよ。ここで誘った異性とはその…いい感じの関係になれる、ってやつだ。」
「へぇ〜…だからあいつらはあそこまで必死に…。」
「おう。俺も…ってか、お前以外の男子皆誰かに猛アタックしたんじゃないか?俺も可愛いなって思ってた子に話しかけてペアになれたし。」
「へぇ…ん?待てよ、だったら依澄さんが俺を誘ったのは…?」
「…そういう…事だな。」
「…マジ?」