悪戯は、誘惑を試みる。
…結局、昨日のあいつの返信が気になって中々寝付けなかった。別に私は碧羽ぐらい大きくありたかった訳じゃ…いや、もしかしたらそうかもしれない。理由は何にせよ、男の人の目を引く要因になり得ることには違いないのだから。まぁあいつの興味を引くことが出来るかはさておき…。
中々早く学校に着いた。教室には髪のセットをしている女子やこんな日でさえ参考書を開いている真面目な男子、そして机に突っ伏してガチ寝をしている隣の席の…いや、あいつじゃん。
「夕透くんおはよう!」
「……………。」
こういう時、理想の可愛い女の子はどうやって起こすのだろう。起きるまで目の前で腕を組んで目線を合わせて待つ…いや、私はそんなに辛抱強くない。となると…
「……えいっ。」
ぷにっ
「……ん、ぁ……。」
…起きない。これはチャンスだ。
ぷにっぷにっぷにっ
むにむにむにっ
ぎゅーっ
「…ふふっ。」
これだけほっぺを弄ばれても起きないとは…鈍感にも程がある。
「みっすーおはよ〜…って、何してるの?」
「ん、依澄。おはよ。今こいつのほっぺをむにむにしてるの。」
「そりゃ見たらわかるよ…なんでそんな事してるのって意味なんだけど。」
「そりゃ、登校したにも関わらずぐーすかしてる誰かさんを起こすために」
「いや、起きてるじゃん夕透くん。」
「…んぇ?」
「あの…何されてるんですか?」
「…ふ、ふぇぇぇっ!?い、いいいいつから起きてたの!?」
「ほっぺを人差し指でぷにぷにするフェーズに入った辺りですね。」
「めっちゃ最初じゃん!!」
「すごい楽しそうだったんで声をかけるのも躊躇っちゃって…」
「てか、夕透くん寝癖付いてるよ。」
「え、ほんとですか。付かない感じで寝てたんですけど…」
「えへへ。ここがぴょこって跳ねてる。(つんつん)」
「あはは…お恥ずかしい。」
「あ、私櫛持ってるよ。直してあげる!」
「すみません、ありがとうございます。」
「ふふふ、天才依澄さんに任せんしゃい!」
「てか、依澄今日髪型違くない?」
「確かに、いっつも後ろで編み込んでなかったですか?」
「え、私の髪型見てくれてるの!?」
「…まぁ、後ろの席なんで見るというか目に入るというか…」
「…えへへ、嬉しいな。」
「可愛いなぁこの結び方。私もまた真似しよっと。」
「ん、ほら、直ったよ寝癖。」
「お手数おかけしました。ありがとうございます。」
「じゃあこの恩はいつか返してもらおうかな…ふふふ。」
「じゃ、私たち着替えて来るから。またね!」
「はい。」
「おっはよー!」
「おはよ碧羽。珍しく早いね。」
「メイク早く済んだからね〜…たまには早く来てみようかなって思ってさ。」
「なるほどねん。」
「今日もあっついね〜…5月の暑さじゃないよほんと…(ぶるんっ)」
「…………。(じーっ)」
「ん?深涼どうしたの?そんなにこっち見て。」
「へ?あ、いや、なんでもないよ。」
「ふーん…そう?ならいいや。てか、体操服おっきいサイズ買っちゃったな…全然Mでピッタリぐらいだったよ。」
「私はSでピッタリだなぁ…ダボダボ好きだからMにしたけどこんぐらいがいいかな。深涼いくつだっけ?」
「え?あ、私は…Dだったかな。」
「ん?D?サイズにそんなんなくない?」
「あ、あぁ、服の話か。私Mにしたよ。」
「何の話だと思ってたんだか…。」
「というわけで今からお前にへそチラの正義について」
「バカ。もう一時限目始まるから静かにしろ。」
「つれねぇなぁ。俺的には古典よりも数1Aよりも大切だと思ってるんだぜ?」
「だから中学の数学成績2なんだよ。」
「うるせぇ!」