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悪戯は、恋心に気付く。

「...ふぅ。」

部員の名簿管理を終わらせ、私、未橋澄夏はパソコンを閉じた。大きく伸びをする。時計を見るともう日付が変わってしまった。昔から熱が入るとぐったりするまで突き詰めてしまう。休憩を取るのも習慣にしなければ。しかし、最近は忙しかったから仕方ないのだ。別に進学校というわけでもないし、課題もあまりないのだが、副部長という役職を持ち、後輩を迎え、新しい出来事も多く、色々と疲弊していたこの1週間。なかなか充実はしていたが流石に少し疲れが来た。

...ふと、印刷し終わった名簿の、1番下の名前を見る。

「結宮夕透」。あまりにも特殊で、異端な立ち位置にいる彼。流石に気になって経歴を調べた。恐ろしいほどの受賞歴。一瞬で聞く人の心を奪い去る演奏。自分の吹いている楽器と同じものとは思えない深さ。年相応とはとても言えない卓越した技術。大人の演奏と言われても遜色ない。しかもこの時満10歳。私なんてまだリコーダーも上手く吹けていなかったのに。そんな人が自分の高校、自分の所属する部活動、同じパートに来ただなんて。しかもそこそこ、いや、かなり...かっこいい。深涼ちゃんが惚れてしまうのも分かる。他の1年生の子から聞いた。深涼ちゃんは学年1モテるらしい。それはそうだ。新歓の時ビックリした。艶やかな黒髪、透き通る瞳、白い肌、薄い唇、華麗な佇まい。これを美少女と言うんだなぁと感心すら覚えた。しかし、正直意外だ。そんな美少女がこの男の子を好きになるだなんて。もちろん、結宮君も人気があることは知っている。以外にも多くの女子が彼を気になっているらしく、噂では既に何人か告白したとか...?まぁ、彼も容姿端麗な方ではあるし、無気力系男子は今流行りだし、だからこそ結宮君はモテモテになるだろうと楓...名塩楓、我らが部長も言っていた。だがなっしーの話は話半分、いや話⅓位で聞いておいた方がいいのだが...今回ばかりはなっしーの方が合っていると思わざるを得ない。正直、彼の事が少し気になっている。私だってれっきとした女子高校生で、乙女なのだ。ちょくちょく告白だってされるし、口説かれることもある。でも私は断ってきた。それは、自分の趣味、ホルンに理解がある人が良いからだ。いくらかっこよくても、ホルンの音を鬱陶しがったり、吹くなとか言ってくる人は嫌だ。その点において、彼はこれ以上ない人だろう。なんなら、私より理解あるし...。そんなわけで、実際ここ最近何にも手が付かなかったのは、彼の事を考えていたから...かもしれない。いや、そうだ。所謂一目惚れなのだろうか。同じホルニストとして、後輩として...1人の男性として。彼のことが...

「あ、これ提出しなきゃダメなんだった!」

急いでパソコンを立ち上げ、出し忘れていた課題を提出する。何とか間に合い、ほっとため息をつく。

部屋の電気を暗くし、ベッドに寝転がる。

「...好きだなぁ。」

自然と口から零れた言葉に、思わず赤面してしまう。本当に自分から出た言葉なのだろうか。いや違う、決して彼の事を思って言ったとは限らない。そうだ、決して...。考えてはいけないような自分の思考から逃げるようにして、眠りに着いた。

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