表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/59

悪戯は、過去を救い出す。

「...なんですか、急に呼び出して来て。」

「単刀直入に聞かせてもらおう結宮君......。」

「…釉暖ちゃんって彼女さん?」

「はぁっ!?え、は、いや、なんで釉暖の事…!?」

「論点はそこじゃなーい。どうなの、彼女さんなの?どっち!?」

「…別に、そんな関係じゃないです。ただの小中高同じなだけの腐れ縁ですよ。」

「…の、割にはあの子、君の話してる時目キラキラさせてたけど。」

「太陽が眩しかったのでは?」

「一日中雨だったんだけどその時。」

「…ん?何を話したんですか?」

「えっ?あ、あ〜…それはあれだよ、あの…」

「…女子の話。」

「…そですか。」

「おぉ〜い呆れんなそこの男〜!!!」


「…っ!」

がしっ

「あ、え、深涼さん…?どうしました…?」

「…何で、教えてくれなかったの。」

「え?何をですか。」

「…過去だよ。君の。」

「…釉暖から聞いたんですか。」

「…うん。」

「…何でって言われても、別にわざわざ人に話すような事じゃないし、自分の中でも区切り付けてたんで、もういいかなって思ってたんです。」

「…嘘はつかないで欲しいんだけど。」

「いや、本気ですけど…」

「…怒るよ、私。」

「…はぁ…別に、そこまで思い詰めてる訳じゃないです。深涼さんが思ってるよりは。ただ…ちょっと、不思議で。」

「…何が?」

「…あれだけ自分でも敬遠してたホルンに、何故か躊躇いなく触れて、吹いて、入部も検討して…そりゃ、時間がある程度解決したのかもですけど、完璧には無理だろうし、だから尚更おかしくて。」

「…その人のこと、好きだったの?」

「…どうですかね、もう今はそれを確かめる術は無いんですけど。」

「…確実に言えるのは、大切でした。世界中の誰よりも。あいつが。」

「…ありがとう。話してくれて。」

「…はい。」

「…あっ、あのさ…っ!」

「ん?どうしました?」

「…時間が解決してくれないなら…わ、私が……っ!」

「…………?」

「…救いたい。君の心の悲しみを。」

「…別に、そこまでしてもらわなくても」

「…。」

「…大丈夫ですよ。深涼さんとか、先輩たちと話してたらだんだん薄くなります。過去も。忘れることは無理ですけど、思い出すことが出来るぐらいには、留めておきます。」

「…ちゃんと、向き合うの?」

「…良いんですよ。昔の自分に一喝できた感じだし、満足です。もう。」

「…じゃ、吹奏楽部、入ろっか。」

「…え?いや何で」

「当たり前でしょ!?昔と向き合えたんならもう入らない理由ないでしょ!また名塩先輩泣かせるつもりなの!?」

「…考えとくから、一旦離れて…。」

辛い過去でも、箱に閉まって、鍵をかけずに置いておけば、開けられる。思い出せる。向き合える。過去の自分に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ