悪戯は、どうか他の方に。
______今年創立100周年を迎えた瀧宮高等学校。
そんな由緒ある高校の入学式で結宮夕透は、今。
「……………すぅ…ふぅ…。」
ガチ寝を決め込んでいた。周りの生徒たちも「なんだこいつ」みたいな目で見てきているが当の本人はどこ吹く風。そしてついには入学式が終わってしまった。全員退場となるのだが…
「んぁぁぁ………………」
まだ起きない。そうこうしている間に1人きりに…いや、正確には、もう1人。
「あれ、あの人…え、もしかして寝てる…?」
私、水都深涼は彼の元に近寄った。今日はこの高校の入学式だったと言うのに。もしかして約1時間ずっと寝ていたのだろうか。どの道放ってはおけないので起こしてあげることにした。
「もしも〜し…?君、大丈夫?具合悪い?」
「…………………」
「むぅ、起きないかぁ…」
とんとん
「ん〜………?」
「あ、起きた?もう入学式終わっちゃったよ?」
「………あ、そうだった。」
…もしかしてこの人は入学式に参加している自覚がなかったんだろうか。
「…ええっと、早く一緒に教室行こ?この列なら同じクラスって事でしょ?」
「…あぁ、そうですね…起こしてくれてどうも…」
「ううん。さ、急がないと遅れちゃうよ!」
「ん、ふぁぁぁい…」
「と、言うわけで、新入生の皆さん!入学おめでとう!このクラスの担任を担当する前島だ!1年間よろしくな!」
ながーいながーい朝のホームルームが終わった。まさか自分でも入学式中に寝ているとは思わなかった。夢の中では全然起きていたのだが…
「…ま、いっか。」
そして1時限目の準備へと取り掛かった。
「ったく…入学式で寝るとか聞いたことねぇぞ…。」
「俺も寝るとは思ってなかったんでございますわぁ…。」
そうやって話すのは中学校からの同級生の速水奏翔。本音をぶつけられる唯一の存在だ。同じクラスになれたのはやはり腐れ縁というやつだろうか。
「にしてもお前、あの水都さんと会話出来るなんか恵まれてんなぁ…今年の運もう使い切ったんじゃね?」
「まだあと8ヶ月あるんだけど。ってか誰?その人。」
「いやいや…寝過ごしてたお前の事を起こしてくれたあの美少女のことだよ。水都深涼。第1学年の中で最も美しいって言う人もいる程の美少女らしいぞ。」
「ほぇ〜ん…そりゃそりゃ、お手を煩わせて申し訳ないなぁ…。」
「なんか興味無さそうだなお前。可愛い子大好きマンなのに。」
「ったく…俺が世の美女全員好きってわけじゃねぇからなぁ?」
「選ばれる側が何言ってんだか。」
「言い返せないのが悔しい。」
「でも良かったじゃねぇか。あんな美少女がクラスにいるだけでも十分すぎるだろ。」
「…まぁ、なぁ…。」
「ねぇねぇ、夕透君!」
「…あ、噂をすれば。」
「どぅえ!?す、すす水都さん!?」
「さっきは大丈夫だった?具合悪かったりしない?」
「あぁ、そういう訳じゃないので。お気遣いどうも。」
「そっか。なら良かったぁ…。」
「ちょ、お前!」
「ん?何だよ。」
「もーちょっと嬉しそうに話せよ!あの水都さんが目の前にいるんだぞ!?(こそっ)」
「え〜…ならお前が話せよ。」
「いやお前に話しかけてくれてるんだぞ!?感謝しろよ!」
「なんでお前あの人側なんだよ。」
「ん?どうかしました?」
「あぁいや何でも!?」
「ふ〜ん…ほんと?」
「もうちょっと嬉しそうに話s」
「バカそれ言うんじゃねぇお前」
「なんも無いですよ。はい。」
「そっか。夕透君ってさ、もう入る部活決めた?」
「いや…俺は入る予定ないですけど。」
「えぇっ!?もったいないなぁ…せっかくの高校なのに…」
「そういうあなたはどの部活に入るんです?」
「…むぅ…そのあなたって呼び方どうにかならない?」
「え、貴殿の方が良かったですか?」
「違う!普通に名前で呼んで欲しいの!」
「えっと…あれ、何でしたっけ、ミスド?ミスト?あれ?」
「みすず!!!深海の深に涼しいの涼で深涼!覚えた!?」
「覚えました…んじゃ、深涼さんはどこの部活に入るんです?」
「んへへぇ…ちゃんと呼んでくれた。私もまだ決めてないかなぁ…」
「いや決めてないんですか。ってかもう授業始まりますよ?」
「あほんとだ!じゃあまたね!夕透君!」
「永遠にさようならぁ…。」
「…お前、ある意味恐れ知らずだな。」
「…肝が据わってるって言ってもらいたいな…。」
「変わんねぇよどっちも。」
自分もこんな美少女がクラスに欲しかったです。マジで。