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幕間

リオンの視点です。

他のお話よりも少し短めです。


 夜の空は、雲に覆われていた。

 寒風が吹き荒び、雪が舞いあがっている。


「……復讐のときは来た」


 リオン・クロスは、帝都の方角を見据え呟いた。


 彼女が魔女になったあの日から、姉さんが死んだあの日から、もう二年が過ぎた。


 ひらひらと雪片が降り注ぎ、銀の髪のうえで溶けていく。

 今宵は大雪になるだろう。

 ちょうど、二年前のこの日のように。


 リオンは帝都に背を向けると、複数の視線を浴びせられる。

 振り返った先には、数人の魔女が控えていた。


 あの地獄の中から、ともに逃げ出し合流したわずかな同胞。

 彼女たちは、リオンにとっての数少ない理解者であり、同じ志を持つ者だ。


 そして彼女たちの後ろには、千を超える数の魔獣が控えていた。

 漆黒の獣たちはギラギラと目を光らせながらも、静かに帝都を見つめている。

 今か今かと、魔女からの許しが出るのを待っているのだ。

 帝都へ駆け抜け、鋭い爪で人間の喉笛を切り裂き、獰猛な牙で喰らいつくその時を。


 元来、魔獣は凶悪で獰猛な生き物だ。

 それでも獰猛な魔獣が従順な姿勢で従っているのは、魔女と同じルーツを辿っているからだ。

 狂暴な魔獣は、魔素の濃い場所に居続けた動物が汚染されることによって生まれる。


 対して魔女も、人工的に魔素を凝固させた魔蝕細胞を埋め込まれた存在だ。

 そのため、普通の人間とは比べ物にならないほど膨大な魔素を体内に有している。

 つまるところ、魔獣たちは魔女のことを同胞として、さらにはリーダーとして認識しているのだ。


 魔獣は一体一体が、並みの人間が相手にできるほどやわではない。

 魔女は単体でも脅威なのに、この数の魔獣をともに攻め込ませれば、陥落させることも不可能ではないだろうとリオンは見込んだ。


 リオンは瞳を閉じて、小さく息を吸う。

 冷たい空気が流れ込ませてはやる気持ちを抑え込み。


「さあ、あなたたち」


 そして、高らかに号令をかける。


「今からは待ちわびた狩りの時間よ。思う存分に帝国の兵を殲滅しなさい。一人残らず殺しなさい。邪悪で醜悪なこの国を火の海に沈め、阿鼻叫喚の地獄を作り出しなさい」


 リオンは歌うように、言葉を紡ぎ出す。


 終わらせるのだ。

 のうのうと平和な日々を暮らす帝国の民を、多くの魔女を斬り殺した騎士たちを。

 魔女を生み出し、処分してきたアルスカリの残党どもを。


 終わらせるのだ。

 あの偽善者に対する、ざわつく想いを。


「それこそが私たち魔女の復讐よ」


 そして、リオンは思い描いた。

 困惑と憐憫と悲しみを浮かべるハルト・ロペスの顔を。


 ――――私が、直々に殺してやる。

 そして、進軍が始まった。

ここまで読み進めていただき、ありがとうございます。

次回から3章に移ります。

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