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32:結婚式4

「凪様っ!」


 月のように冴え冴えとした美貌が茜に向けられている。


「あ、その、これは……」


 花の近くで話をしていたが、凪本人が茜に話しかけてくるのは想定外だった。

 来客も多いしそちらを優先するものと考えていたのだ。

 所詮花より彼らのほうが大事だろうと……。

 だというのに、凪は険しい顔を崩さない。


「先ほどから、龍王家に関する根も葉もない噂をばらまいて、どういうつもりだ」

「違いますぅ。これはぁ、凪様のことではなく花の……」

「黙れ! それについては以前否定したはずだ」


 ピシャリと命令され、茜は思わず口をつぐむ。


「家族の結婚式に参列できないのは酷だろうと、情けで招待したのが間違いだった。私の顔に泥を塗られるとは」

「なっ、誤解ですぅ! 私は凪様の悪口は言ってません!」

「花は私の妻であり大事な龍王家の一員。花への侮辱はひいては龍王家への、そして私への侮辱になるのだ」

 そうして、凪は先ほどまで茜が話していた男性に声を掛ける。


「よもや、今の話を信じてはいないだろうな? 全部根も葉もないデマだ。我々の間では常識だが、花嫁になる女性には予め身辺調査や身体検査が課される」


 男性は焦りながらも凪に同意した。


「ええ、ええ、もちろんですとも。龍王家が問題のある女性を迎え入れるわけがございませんからね」

「その通りだ。うちの招待客に根も葉もない噂を振りまき、絡む迷惑な人間には全員出て行っていただこう」


 凪は蒼や両親にも茜と同様の措置をとり、披露宴の途中で春川家は凪の部下により全員強制退場させられる。


「ふざけないでよ! 花嫁の身内を追い出す結婚式なんてアリ!?」

「花嫁の害にしかならない者たちなら、退場させるのは当然のことだ。報復措置をとられなかっただけマシだと思うんだな」


 凪の部下らしき男に言葉を投げつけられ、茜はキュッと唇を噛んだ。


 両親はマスコミの人間相手に話していたようだったが、彼らも凪になにやら言い含められ、神妙な顔で頷いている。


(なによ、権力者に靡いちゃって)


 茜の期待していたような、花のスキャンダル記事は出ないかもしれない。残念すぎる。

 当の花は、茜が追い出されているのに気づきもせずに、来客の対応に追われていた。

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