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⑼『闇に帰らざるべきか』
⑼『闇に帰らざるべきか』
㈠
九死に一生を得る、と言う言葉がある。俺は無論、そんな劇的な人生を送っている訳ではないが、ふと、闇に居ると、何かもう光が灯ることはないんじゃないか、と言う一種の不安が脳裏を掠める反面、そのほうが、良い小説を書き続けれるぞ、と神が言っているようで、たいそう困るのだ。
㈡
神の言葉を信じる信じない、の話ではなく、つまり、そういう声が、聞こえるということが問題である。本当の囁きなのか、また、幻聴なのか、分からないが、少なくとも俺は、その声に、何かしらの影響を受けることは明白なのだ。
㈢
だからと言って、マイナスな面だけではない。時によっては、その幻聴をも、小説に変えてしまうことが出来る。インプットしたものを、アウトプットする。だから、俺の先々の人生は、ぼんやりと明るい暗さに、定記されているようで、なんとなく安心するのである。