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⑵『闇に帰らざるべきか』
⑵『闇に帰らざるべきか』
㈠
何、俺の人生じゃないか、と割り切ることは、非常に難しい。小説で食っているならまだしも、見習いの俺なら、捨てられた馬の骨で、誰かの手を待つしかないのだろうか。また、闇に戻れば、それなりに、書いていくことは可能だと思うが、どうにも、迷うのである。
㈡
この迷いとは何だろうか。有名になりたいから、ではない。自分の小説を、認められたいから、でもない。ただ、自分の書く小説に、死ぬまで携わっていたいという、或るぼんやりとした、希望である。その希望の灯は、闇に居るからこそ、光を放つのである。
㈢
どうせ無駄だよ、世間はそういうに違いない。はやく現実を見なよ、と言われるだろう。お前に才能などない、と言われても、俺は小説を書くことが出来る。闇に帰らざるべきか、脳内で反芻する言葉、俺は、一体どうしてしまったんだろう。光の世界に入れば、希望の灯は、光を失うのにな。