最果ての修道院②
不思議に思ったパナピーアはアクアを見る。
すると彼女は後ろめたそうにパナピーアをチラッと見てすぐ目を逸らした。
「もう決まっている事ですから……避けるのは無理だと思いますわよ?」
「決まってる? でもゲームそのままのことが起こるわけじゃ無いんだし、今度はあたしがフラグ折っちゃえば良いんじゃないの?」
「それが……」
言い淀むアクアを不思議そうに見るパナピーア。
そして見兼ねたフィリンティアが話し出す。
「あの……今度は据え置きのゲームじゃないの」
「え? もしかしてPC?」
アクアとフィリンティアが首を横に振る。
「じゃあ、携帯型ゲーム?」
「きっとスマホなんじゃない?」
メロディーが口を挟んだ。
すると、アクアが言いづらそうに……。
「漫画化されましたの。空前の大ヒットでしたのよ? ですからストーリーの分岐もありませんし、本人が話を捻じ曲げる事も難しいと思いますわ」
「はい⁉︎」
予想外の展開に声がうわずった。
「以前この修道院にいらした女性で、漫画の主人公という方が……」
「そ、その子、どう成ったの?」
「私たちのように、何かを選ぶ自由はほとんど無かったそうですわ。それに変えられる所が少なく、やっと変えても結局元に戻るとおっしゃってましたし……」
「その人、パナピーアと入れ違いで、第二章のお話のためにお迎えが来て、連れていかれちゃったわよ?」
「ううう、嘘でしょう?」
あっけらかんと言われ、パナピーアは開いた口が塞がらない。
そこへフィリンティアが追い討ちをかける。
「あの人、ここでもフラグ折りまくってたのにダメだったんだから、きっと無理なのよ。諦めたほうが良いんじゃない?」
「いやぁ〜! 嘘って言ってぇ〜!」
「お察ししますわ……」
「パナピーア、かわいそう。──でも私じゃなくて良かった」
どうにもならないと聞き、ポジティブなパナピーアもさすがにしょんぼり項垂れる横で、メロディーが思わず本音を漏らす。
パナピーアは本当にもう主人公は懲りごりだったのに……。
「あ、でも。ほら、漫画ならハッピーエンドだし、頑張れば幸せになれるんだから大丈夫じゃない? 私ならラッキーって思うかも?」
「そうよ大丈夫。わたし、漫画も読んだの。あの話はハッピーエンドよ? だから今度は幸せになれるわ。わたしが断言する」
「本当?」
必死に励ますメロディーとフィリンティアに、ほんの少し気分の上がったパナピーア。
二人が、パナピーアはチョロくて良かったと思った時、アクアが最後を締めようとするかのように口を開いた。
「きっと後から、楽しい思い出になると思いますわよ? 何しろ全五十二巻の大作ですもの……」
「へ? 何巻?」
「だから、番外編含めて全五十二巻ですわ」
パナピーアの目がこれ以上ないほど見開かれる。
「ごごご、五十二巻〜⁉︎」
あまりの長さに呆然とするパナピーア。
「お話的には第四章まであったけど……パナピーアなら大丈夫。頑張れるわ、わたし信じてる!」
フィリンティアのはなむけの言葉が耳を吹き抜け、さっきの言葉が脳裏を過ぎる。
戦闘でてんこ盛りが事故って暗殺のハプニング⁉︎
パナピーアは完全にパニクっていた……。
むり無理ムリ!
あたし耐えらんない!
これからはここで慎ましくも自由に生きられると思ってたのに……。
なんてこと!
パナピーアは涙目だ。
「私、あなたの活躍を楽しみにしてるわ」
「わたしたちは応援しか出来ないけど、頑張ってね? パナピーア」
「私も何かできるなら協力いたしますから、お手紙くださいましね? ……なるべく詳しくお願いしますわ」
瞳を煌めかせるメロディーと、口許をヒクつかせるフィリンティア。
そして慈愛と見せかけた黒い笑みで優しく声をかけるアクア。
「みんな……ありがとう?」
パナピーアの困難はまだ始まってもいなかったらしい。
この作品を見つけて、最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
少しでも楽しかった、面白かった、と思ってもらえていたら嬉しいのですが……。
また、他にも作品を掲載しておりますので、ご興味があれば読みに来ていただけると嬉しいかぎりです。
最後に、読んで頂いたみな様に厚く感謝いたします。ありがとうございました。
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紗奈(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾




