表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/25

現実のエドウィン②

 しかしよく考えると、教室棟への道標(みちしるべ)はたくさんあるはずなので、戻らずに彷徨(さまよ)い歩くのは不自然だ。


「なぜ教室棟のほうへ戻らなかった? 素直に引き返せば長時間迷子にならずに済んだのだぞ?」

「えぇ~! そんなの知らないもの。それにあたし()エドウィン様に早く会いたくてほかの事考えて無かったし……」


()だと? お前と一緒にされるなど虫唾(むしず)が走る。私はお前と会いたいなど思った事は一度も無い」


「あはは。そんなに照れなくても良いのに~。それともあたしがちゃんと会いに行けなかったから怒ってるんですかぁ?」


 甘ったれた舌っ足らずの話し方がエドウィンたちをイライラさせる。


「何を勘違いしているのか分からないが、私が会いたいと思う女性はアデリアーナだけだ」


「え⁉︎ アデリアーナ? なんで? パナピーアの間違いでしょう?」


 エドウィンの口からアデリアーナの名前が出るとは思わなかったようで、パナピーアは反射的に否定する。


「どうして初対面のお前がアデリアーナより好かれると思うのだ? 有りえん。私をこれほど不愉快にするとは……不敬極まりないな」


「へ⁉︎ だってアデリアーナって、プライドばっか高くて、意地悪で……それにエドウィン様のこと、全然分かってないでしょう? その点あたしなら、エドウィン様がたくさん努力してるとか、実は甘いものが好きとか、全部知ってるし、あたしを選んだらハッピーエンディング……って分かんないか。えーと、そう! エドウィン様も幸せになれるんだよ?」


 言い終わったパナピーアが見たものは、本気で怒ったエドウィンだった。


「お前に私の何が分かる? お前を選べば幸せになる? バカを言うな。お前では、私のアデリアーナの足元にも及ばない。比べること自体が彼女への冒涜(ぼうとく)だ」


 エドウィンの怒りは凄まじく、本当に室温が下がったかのような錯覚に(おちい)った。

 これにはさすがのパナピーアも大人しくなる。

 しかし納得がいってないのか、小さくぶつぶつと呟き出した。


「……なんで怒るの? 意味分かんない。アデリアーナなんかより、あたしのが可愛いじゃない。それにあたしのほうがエドウィン様のことよく知ってるもん。だからあたしと結婚するほうが良いのに……」


「ほう。私の事を知っているとは大きく出たな。それから私と結婚するとか、冗談でも聞きたくない。私の妻になるのはアデリアーナだけだ。それ以外有り得ないし、許さない」


「エドウィン様! 目を覚まして! 何か薬でも盛られてるんじゃないでしょうね? じゃなきゃこんなのおかしいわ」

「おかしい? 私は(いた)って正常だ。おかしいのはお前だろう」


 冷たく言い放つとパナピーアは盛大に顔をしかめた。

 この場の男性たちはやっと化けの皮が剥がれたかと期待するが……今度は早口でブツブツ言い始め、とうとう狂ったのかと思うほど様子がおかしくなる。


「あ~もう。なんなのよこの世界。バグだらけじゃない。エドウィン様なんか()めて、ほかの人のルート目指したほうが良いのかな? あぁ、それにあの林だって……すぐ知ってる場所に出ると思ってたのにちっとも出なかったし、ぜんぜんゲームと同じになんないなんておかしいわよ……」


 彼女の言っている内容には意味不明な事が多かったが、その呟きに聞き捨てならないものが含まれているとエドウィンは気付く。


「知っている場所? お前は新入生なのに、あの林の付近で知っている場所がある? ……まさか、以前にも不法侵入していたという事か?」

「あ……えーと、そうじゃなくて……」


 これはパナピーアの失言だ。

 彼女が何かしらの罪を犯していると、この場にいる全員の疑惑が確信に変わった瞬間だった。

 そしてアンセムがハッとする。

よろしければブックマークや下の⭐︎印で評価頂けると励みになります。

イイねもお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ