プロローグ
本作品はすでに最後まで書き上がっている完成作品です。
最初の数日は連続投稿いたします。
よろしくお願いします(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
「アデリアーナ、キミとの婚約を破棄する」
王立学園の卒業パーティーで高らかに宣言したのは、ハニーブロンドの髪に蒼玉の瞳の美丈夫。
エドウィン王太子殿下だ。
王の系譜に連なる者が始めた突飛な行動にその場は静まり返り、誰もが事の行く末を見守っている。
凍りついた空気の中、アデリアーナは公爵家の威厳を保つべく、冷静さを装って聞き返した。
「エドウィン殿下、理由をお聞かせください」
「この後に及んでまだトボケるのか?」
「アデリアーナ様、ちゃんと罪を認めてください。そしたらあたし、全部許しますから」
エドウィンの後ろから躍り出たのは、パステルピンクの髪を振り乱す男爵令嬢パナピーア。
王太子はそんな彼女を庇うように腰に腕を回して引き寄せた。
「証拠はありますの?」
「貴女は本当に自分の間違いを認めないのですね。証人ならいくらでも用意できますよ」
横から口を出したのは、黒髪に公爵家特有の金の瞳を輝かせたアンセム、王太子の側近だ。
彼もパナピーアの味方らしい。
「あぁ、今からもみ消そうとしても無駄だぞ」
「姉上、もうこれ以上罪を重ねないでください」
赤毛の騎士団長子息ガイウスと、アデリアーナの義弟セドリックが畳み掛けるように発言した。
こうなると、もうその場にいるすべての人がアデリアーナの敵となっている。
なぜか味方が一人も居ない中での断罪はスムーズに進み、アデリアーナは平民に落とされ国外追放が決まった。
しかしこれに異を唱えたのはパナピーアだった。
「国外追放だなんて酷いわ! アデリアーナ様がかわいそう」
「しかし彼女はパナピーアにあれだけ酷い仕打ちをしたんだよ?」
「パナピーア嬢は王太子妃になられるのですから、その方に害を成した者としては軽い罰だと思いますが?」
「あんな野蛮な女、もう一生見たく無いだろう? だからこれで良いと思うが……」
「あんな義姉が居たなんてボクの黒歴史、知られる機会が減ればへるほど良いんだけどな。パナピーアは優し過ぎるよ」
「でも、言葉も通じない外国に放り出すなんて……せめて国内で王都から離れた場所とかにならないかしら?」
以降、パナピーアは慈悲深い聖女として国民に浸透していく。
実は七ヵ国語で日常会話ができるアデリアーナ。
できればそのまま国外追放のほうが良かったと、本人が嘆息する事になるのだが……。
あれは果たして本当にパナピーアの良心から出た嘆願だったのか?
この後アデリアーナは、北の端にある環境も戒律も厳しい修道院に送られ、怒涛のように押し寄せる理不尽や暴力で生きる気力も体力も無くなり、やがて病にかかる。
あぁ、私はこのまま冤罪を晴らせないまま人生を終わるんだわ……と、アデリアーナは妙に納得して意識が遠退いた。
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*この作品は只今アルファポリスに掲載中の作品と同じものとなります。