天に挑む剣
最上位ランクに上がった翌日、アルルカが作ってくれた朝食を食べると、出かける準備をする。
「じゃあ、行ってくるよ」
「はい。お気をつけて」
今日は上位三者との戦いだ。相手の情報はアルルカから聞いているが、相手も同じように俺の情報を持っているだろう。
条件は互角、それなら負けるわけにはいかない。こんなところで躓いていたらこの先なんてないんだから。
コロッセオに着くと大勢の応援の声が俺を出迎えてくれ、それに応えつつ、控室に入った。
中位のランクを越えてくると武器は自由になっている。どうやら、戦闘に耐えきれるほどの武器が容易には準備できないかららしい。
まあ、途中から俺は魔力で武器を作るようになったので必要は無いのだが。
そして、自分の名前が呼ばれて、入場する。相手は、ランク三、シャドウデーモンのウラジ。
高い敏捷性に飛行と分身のスキルを持ち、速度で翻弄するタイプと聞いている。
◆◆◆◆◆
お互いの戦意が高まる中、運営のアナウンスが入る。
『それでは、両者構えてください……試合開始!!』
相手は開始と同時に分身、数は十体はいるだろうか。それらが凄まじい速度で上下左右から迫りくる。
「お前ら、いくぞ」
≪やっつけろー!≫
精霊に声をかけ、集中する。見えていない部分の空間も把握できるようになり、相手の攻撃を避けていく。
頭上からの槍を首を傾けることで回避、それを掴み、右から横薙ぎに放たれた剣の間に入り込ませガード。
背後から迫る魔術をかき消しつつ、そのすぐ後ろに控えた弓矢を掴んで止める。
弓矢を掴んだ側の手の方から忍び寄る相手の突きを体を回転させつつ回避しつつ、魔力で編みこんだ刀を形作り相手に切りかかる。
そして、数を少し減らしつつ、相手が一瞬引く姿勢を見せると反撃をする。
「お返しだ!」
スキルをコピーできるわけでは無いので、ただのモノマネだが、魔力で分身を二体作って相手にぶつける。
だが、手動で操作している関係上、動きに制約が多く、一瞬で倒されて消える。
相手のスキルで発生した分身はそれぞれの意志で動いているようなので、同じようにするのは難しそうだ。
でも、それなら単発で終わる形にすればいい。
俺は、身体強化をして相手に駆けつつ、先ほどの要領で魔力で物体を形作る。
だが、先ほどとは違い、武器の形にすると、それらを多数複製、砲弾のような勢いで放っていく。
俺は、迎撃する相手のスキを突き、攻撃、更にその数を減らしていった。
降り注ぐ武器の雨が止むと、相手は手負いの一体のみが残るのみになっていた。恐らく、あれが本体だろう。
「まだやるか?」
「…………降参だ。ここまで一撃も与えられないとなると勝てぬだろう」
『勝者!アマギ』
相手が降参の意を示し、勝利者が決まると歓声が上がった。
◆◆◆◆◆
そして、次の戦い。ランク二、ミノタウロスのスパリタス。
巨大な戦斧と城門すら切り裂くほどの膂力に加えて、魔術すらも弾くような鉄壁のスキルを使い戦う相手だ。
体長は三メートル近いかもしれない。そして、その体に匹敵するサイズの戦斧。
その姿は、まるで戦車と相対しているかのような重厚感すらあった。
『それでは、両者構えてください……試合開始!!』
相手が咆哮を上げ、こちらに迫る。そして、風を切る音を響かせながらその斧を振り下ろした。
俺は、身体能力を高めつつ、魔力で編んだ大剣でそれに真っ向から立ち向かう。
二つが激突した瞬間、周りに凄まじい衝撃が起きる。それによって生じた風圧は、観客席でも吹き飛びそうな人がいるほどだった。
お互いの獲物が何度もぶつかり合う。だが、順応者のスキルで慣らしながら徐々に俺の身体能力はギアを上げていく。
そして、ついにその刃が相手に届き始めると、その硬い体に傷を少しずつ増やしていく。
それを見て、相手は戦術を変更したのだろう。ひと際大きな力で武器がぶつかり合った後、鍔迫り合いのごとく力の比べ合いになった。
地面が砕け、亀裂が入る。運営側が常時魔術をかけ続けて補強・修理しているが、それが間に合っていないようだ。
際限なく高まり続ける力により、しばらくの拮抗の後、俺の剣が相手を押していく。相手は再び咆哮を上げながらそれに逆らおうとするが、既に趨勢は決した。
相手の斧に亀裂が入り、そして、砕け散る。その後、俺の剣が相手の首元に突き付けられた。
「まだやるか?」
「……儂の負けじゃ」
相手が悔しそうな表情で降参の意を示す。
『勝者!アマギ』
◆◆◆◆◆
最後の戦い。ランク一、複数の腕を持つヘカトンケイルのグレイ。
優れた身体能力、洗練された技能に手数、更には灼熱の炎を身に纏うスキルを持つ相手だ。
開始後、相手が体に炎を身に纏い近づいてくる。周りの空気が揺らめき、地面が溶け出している。
だが、それは、俺に近づくとまるで最初から何もなかったかのように掻き消された。
相手は、スキルを何度か試したようだが、諦めたようで、絶技ともいえるほどの技でこちらに攻撃を仕掛けてくる。
俺は眼を最大に集中、両手に剣を形作った後、相手の動きを先読み・模写し対応していく。
まるで嵐のような連続攻撃を受ける中、最初ははじき返していたものが、受け流せるようになっていく。そして俺は、相手に少しずつ近づいていった。
相手はその連撃を平然と進む俺に、驚愕すると共に焦りの表情を浮かべるが、それを覆すすべはないのだろう。手数を集中して距離を保とうとしている。
集中のせいか、頭に血が上り、熱を帯びる。だが、これくらいならまだいけそうだ。
更にギアを上げ、応戦。
剣を弾く音がまるで一つの音のように繋がる中、相手の武器が少しずつ傷つき、砕け散っていく。
そして、最後の武器を破壊すると、剣を相手の目の前に突き付けた。
「まだやるか?」
「…………貴方が、ランク一位だ。おめでとう」
相手は一位の座に感傷があるのか、天を仰ぐようにした後、こちらへそう告げてくる。そして、全ての終わりを告げるアナウンスが入った。
『勝者!アマギ。これで全対戦相手を制覇し、最高位ランカーとなりました。ここ数年代わることが無かった、王者の交代。そして、同時にガイオス様との試合が後日行われることが決まります』
割れんばかりの歓声が響く。
ようやく、ここまで来た。いや、まだ始まりか。
まず、この街を支配下に置く。そして、いずれは魔界を統一して見せる。
俺は天に挑むように剣を空に掲げた。




