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未来への扉

 宴の翌日、少数だけを連れ、シャルロット達を送り出しに向かう。



「悪いけど、頼むよ」


「任せて」


 

 ガイオスとリリス、ルシエルとバロンも似たようなことを話しているのかそれぞれで集まっているのが見えた。

 

(……こいつらにも、言っておかないとな)


 シャルロットの近くでは、彼女にずっと付いて回る一人の精霊に加えて数人が飛び回るようにして遊んでいる。

 しかし、黒い炎が一度も外に出てきていないところをみるに、彼らはちゃんと自分達の仕事を全うしてきたのだろう。



「お前達も、頼むな」


≪おっけー≫



 相変わらずの軽い返事に苦笑する。

 だが、彼らは別にどうでもいいと考えているわけではない。

 ただ、人とは違う考え方を持っているだけなのだ。


 組織や集団、国などというものは当然なく、上下関係や仲間という概念すらわかっていないのだと何となく思わされる。

  

 そもそも、楽しそうだからというのが根本にあって、俺がやろうとしていることを理解して協力してくれているわけでもないのだろう。


 だから、俺はそれが当然であるものと考えていてはいけない。

 自分の力だと勘違いしてはいけない。


 王だなんだと言われても、正直俺にできることなんてたかが知れているのだから。



「行ってくる」


「ああ。よろしくな」



 自分の炎に複雑な想いを抱いているのは知っている。

 それでも、彼女はやると決めた。

 助けてくれると、言ってくれた。

 なら、俺にできることは信じることくらいなのだろう。



「シャルロット。無事を祈っています」


「いらない。アルルカは、ここを守ることだけ考えてればいい」


「……相変わらず、ですね。もう少し、言い方を考えた方がいいと思いますよ?」


「わかる人だけ、わかればいい」


「………………はぁ。勝手な人ですね」


「大丈夫。アルルカは、頭が良いから」


「……わかりました。もっと理解できるように頑張ります」


 

 そして、以前は距離を取り合っていたアルルカとシャルロット。

 彼女達がお互いの領分を任せ合う姿に、余計にそんなことを思わされる。

 俺が全てやらなくても、世界は回っていくと、それがはっきりとわかるから。






「ちょっと寂しいみたいね?」


「はは。そうかも、しれないな」


 

 本当に、鋭いやつだ。

 視界の端から近づいてきたレオーネに、そう心を言い当てられ笑うことしかできない。

 


「ふふっ。まるで父親みたいね」


「じゃあ、レオーネは母親役でもやるか?」


「それは口説いているのかしら?」


「いや、そういうわけじゃないんだが」

 

「そう。残念」



 さして残念でもなさそうな顔に、何を考えているのかを察することはできなかった。

 でも、その瞳には朧気ながらも慈愛の色が見てとれて、彼女なりにアルルカとシャルロットを気にかけていることは確かなのだろう。



「………………でも、まぁ。お姉さん役くらいなら……ちょっとくらいはやってあげてもいいのかしらね」


「……そっか。それは、嬉しいな」

 


 口ごもったような、はっきりとしない曖昧な言葉。

 しかし、家族というものを嫌っていたレオーネにとってはそれは何よりも重いものなのだろう。

 何故なら、取引だ、損得だと一線引いた立場でいようとする彼女が明確に輪の中に入ろうとするその一歩だろうから。



「ふふっ。文句は貴方に言いにいけばいいんでしょう?」


「ああ。なんなら、膝枕でもつけといてやろうか?」


「あはははっ。それなら何も貰わない方がマシね」


「おいおい。言いすぎだろ」


「ごめんなさいね。つい本音を言ってしまったわ」



 この関係が、何と呼ぶものなのかはわからない。

 でも、それは家族と呼ぶのが一番近いのではと思って――願っている。



「…………ここまで、来たんだもんな」



 ずっと求めてきたものはまだ遠い。

 でも、ようやく視える位置までそれが来たのだ。

  

 そして、それはシャルロットが戻ってくれば、余計に加速するはずだ。

 


「なんとかなるよな」



 新しい世界への不安はある。

 しかし、それ以上に自信があった。


 助けてくれる人がいる。

 俺にとっては、たったそれだけのことで、何よりも未来を信じることができた。 






ちょっと、荒いですが、スピード重視で投稿したものです。

今週は時間ないので、いったんこれで残しておきます。

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