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重い王冠



「とりあえず、俺の報告は以上だ。まっ、戦いがなくなるってんならまた何か闘技場みたいなの考えといてくれや」



 ガイオスからの近況報告が終わり、あぐらをかいていた彼が体を解きほぐすように動かしながら立ちあがる。



「ふむ。確かに、今後はそういった場も必要になるかもしれんな」


「ああ。俺みたいなやつなんざ、魔界を探せばけっこーいる。鬱憤を溜めさせたら余計に面倒だぜ?」


「……君が言うと余計に説得力があるな。検討しておこう」


「おう、頼んだ。じゃあ、俺はそろそろ出てくよ。どうせ聞いてもわかんねぇんだし」


  

 いつも、軍事の次にされる内政に関する報告をガイオスが聞くことはない。

 理解できないか、寝ているだけならいても無駄という彼の意見を個人的にも認めているし、わざわざ必要のないストレスを与える必要もないと思っている。


 

「バルベリース殿はどうする?長くなるかもしれんが」


「……ユウトは?」


「え?そりゃ、俺は当然いるけど」


「なら、いる」


「そうか。では、次の議題に移ろう」



 少し退屈そうにしているシャルロットを無理に引き留めておく必要はないが、さすがに俺が出ていくわけにもいかないので我慢してもらう他ない。


 そして、主にバロンとアルルカ、時折レオーネと俺が意見を出しながら会議は進んでいく。



「財政に関して、根幹となる貨幣という概念の普及は急速に進捗しています。併合時におけるバロン様の分身体の派遣及び公共事業の大規模実施に伴う大量流通が上手く活かせました」



 普段の自信なさげな姿とはまた違ったアルルカの姿。

 その流れるような説明は、いつも要点を的確に押さえていて、わかりやすいものだった。



「偽造品は出ていないのかしら?コストと利益、それが利益に傾けば人は簡単にそれをするわ」


「可能性としてはあるかと思います。でも、大量の人員を集め、その魔力を圧縮。そして、感知できるよう内包させた上で作っているので、ある程度のモノを作ろうとすればなかなかに骨が折れる作業になるでしょう。それに、人件費の支払いもその貨幣なので、より普及に繋がっています」


「なるほど。上手く考えているのね」


「大勢の人員を導入できるのが、強みですから。コスト的にはもう少しやり方がありますが、魔界の中で多種族の共同作業をより広めるためにも今のやり方はしばらく継続する予定です」


 

 市場原理と国家の強権。

 将来的に受け入れられるようであれば民主政治というものを導入したいと思っているが、現状では課題しかない。

 少なくとも、国家自体が成熟し、個々人の常識が統一できるまでは、主導する立場は維持したほうがいいと思っている。

 


「次に、街道及び移動技術の整備は順調です。特に、ユウト様に発想を貰った鉄道という概念は飛行魔法に近い速度、かつ汎用的に使える移動手段として優先的に整備しています」


「バロン。魔力無しの機関はまだ作れなさそうか?」



 欲をいえば蒸気機関、魔力による格差をできる限りなくせるのが理想だった。

 


「ああ。それについては、今はドワーフの種族を中心とした技術局で試行錯誤中だ。彼らもやりがいを感じて熱心に取り組んでくれているようだが、やはりそう簡単にできるものではないようだ」


「みんなすまないな。いつも迷惑をかける」



 どういったものかは何となく言える。

 でも、どんな構造でかと聞かれると詳細まで答えられるものなんてほとんど無かった。

 今出来上がっている制度や物も、俺は正直アイデアだけで、バロンとアルルカが具現化してくれなければ具現化できなったと思う。



「………………私自身、魔力の有無で左右される人を無くしたいと思っていますから」


「そうだ。行き止まりつつあった我々の道に、未来を与えてくれた。それに比べればそう大したことでもない」


 

 助け合っていけば、自分だけではできなかった何かを成せる。

 それが確かに実を結びつつあることが嬉しい。

 


「ははっ、そっか。なら、もう少し頑張るとするか」


「ふふっ、そうね。夢を見せる側であるはずの私に、貴方は夢を見せたのよ。逃げることは許さない」


「おお、怖い。失望されないように努力するよ」


「……まぁ、それでも疲れたら言いなさい。たまには休ませてあげるから」

 


 途中から椅子に座って寝息を立て始めたシャルロット。

 それにレオーネがさり気なく来ていた上着を羽織らせていたのは眼の視界に映っていた。



「じゃあ、膝枕でも期待しておくかな」 


「ふふふっ。緊張して寝れないんじゃなくて?」


「ははっ。あり得そうだ」



 全員が同じことをする必要はない。


 アルルカ、ガイオス、バロン、レオーネ、シャルロット。

 それぞれが違って、だからこそいい。


 自分で抱え込み過ぎて、こんな良い眼を持っているくせに視野が狭くなっていたことを改めて実感する。



「みんなで、進もう。未来へ」



 俺は、完璧な王なんかじゃない。理想的な王なんかじゃない。

 頼れる仲間がいるのなら、もっと、寄りかかってみようと、そう思った。




 



主テーマが色の悪魔であることもあり、本筋に関わらない内政説明を削ってきましたがこの回だけは情報量を多くしております。

今後はまたざっくりに戻ると思いますが、ここだけは一応キーとなる部分なのでご容赦ください。

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