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夢から覚めて

 沈んでいた意識が急速に浮上していく。目の前には驚きに目を見開く黒い瞳。


 どうやら、戻ってこれたようだ。先ほどまで感じていた温もりの喪失感からか何とも言えない切なさがこみあげてくる。 



「俺の勝ちみたいだな」



 一度深呼吸をした後、そう伝える。



「…………どうして、貴方は。幸せな夢では無かったとでもいうの?」



 明らかに動揺した素振りで彼女が呟くように言葉を投げかける。



「いや、幸せな夢だったよ。それこそ、何もかも忘れてここにいたいと思うほどには」



「……なら、なんで。夢の中にずっといればいいじゃない、そうすれば、貴方も、私も幸せになれるんだから」



「それは、出来ない。俺の夢は俺だけのものじゃないから。背負ったものは投げ出さない、たとえその先にどれだけ辛いことが待っていたとしても」



 確かに、俺だって辛いことは嫌だ。もしかしたら、何も背負っていなければ、戻ってこれなかったかもしれない。


 だけど、今は違う。自分を信じてついてきてくれる人達がいて、その人たちに俺はまだしっかりと応えきっていない。



「……人は皆自分勝手よ。その時の機嫌や、状況で平気でそれまでと違う行動をとるわ。もしかしたら、貴方も裏切られるかもしれない」



 恐らくだが、彼女は人を信用していないのだろう。愛して欲しいと言いながらも、人が信じられない。だからこそ、スキルを使い、裏切られることの無い好意を求めた。



 どんな行動をしても、どんなことを言っても変わらぬ愛。



 それは、義父や、義母が俺に与えてくれた愛に似ている。だけど、決定的に違うのだ。


 何故なら、彼女の場合はそこに人の意志は無く、張りぼてのものだから。

 


「そうかもしれない。だけど、そうはならないかもしれない。俺も、裏切られたことはたくさんある。だけど、それ以上に報われてきたことのがたくさんあるんだ。そして、今の俺はまだ仲間を信じたいと思っている」



 彼女は俺の眼を射抜くように見た後、疲れたような、諦めたような寂しげな笑顔をして言った。



「貴方は、強いわね。自信があって、真っ直ぐで、それでいて人の暗い部分も知っている」


 

「別に強いわけじゃない。それに、まだまだ夢への道は遠いしな」



「そうね。でも、今日からまた近づく。リザードマンとドワーフの二つの国が手に入り、その後も同じようにしていけばある程度は終わるんだから」



「いや、まだ手に入ったとは限らないだろう?一度直接話をしてみないとな」


 

 今回は降伏を受け入れる目的で来たが、彼女のスキルが解除された後、相手がどんな反応をするかは分からない。お互いが譲歩できる部分で話が終わるといいとは思うが。


 そうして、この後に起こり得るだろうことを脳内でシミュレーションしながら考えていると、目の前の彼女がポカンとした表情をしているのに気づく。



「どうした?何かあったか?」



「…………もしかしなくても、私のスキルを解除した状態で彼らと話をするってことよね?」

 


「そうだが?」


 

 あまりにも当然のことだったので、ただそう言葉を返す。



「……一つ忠告しておくけど、恐らく、それをすると彼らとの戦闘は避けられないわよ?」



「確かに、俺の部下もそんなようなことを言っていた。だけど、相手の意志を無視して進める気は一切無い。一度戦って満足するならそうするし、それ以外ですり合わせられるならそうする。これまでそうしてきたし、これからだってそうするつもりだ」



 俺が、そう伝えると、彼女は大きなため息を吐いた。



「本当に、物好きね。私のスキルを使えば、貴方の夢はすぐ叶うかもしれないのに」



「それじゃあ意味が無いんだ。だって、それなら初めから力づくで全てを従わせればいいだろう?だけど、そうしては来なかった。それが答えさ」



「確かにそうね。でも、それじゃあ私もここで終わりか。スキルを解除して、事情を知れば、気性の荒いリザードマンやドワーフが切りかかってくるのは目に見えてるし」



 どこか清々しさすら感じさせるような笑顔で彼女はそう言うが、それも違うので否定をしておく。



「いや、君の身柄の安全も含めて交渉するつもりだ。それに、その後は自由だが、どこも行くところが無いのなら俺の国に来て欲しい」



「…………貴方、正気?彼らが許すと思ってるわけ?」



「わからない。でも、相手が折れるまで話し合うつもりだ。やり方は間違っていたが、君の行いが平和に繋がっていたのは事実だ。だから、俺は、できるなら君にも仲間になって欲しいと思っている」



 彼女は今日何度目かになるような気の抜けた顔をした後、これまた何度目かになるような呆れた顔をして言った。



「私の一族は特殊よ。保有する魔力は多くとも、その供給先はスキル以外には使えない。正直、完全にお荷物だけどそれでもいいの?」



 その言葉は暗に、肯定を示す言葉で、少し嬉しくなる。



「ああ。正直それはどうでもいいんだ。君はいくらでも自分だけ良い思いをできたはずなのに、皆の幸せを優先していた。俺は、君のその考え方を気に入っただけだから」


 

「…………わかったわ。本当に不思議な人ね」



 彼女はしばらく目を瞑った後、感情を感じさせない声色でそう言葉を返した。

すいません。ちょっとプライベートをさぼり過ぎて相棒を怒らせてましたので更新止めてました。


間が空きすぎて読んでくれてる方がいるかは不明ですが、とりあえず、何とか挽回したのでぼちぼち更新していくつもりです。


ただし、以前ほどの頻度は出せず、不定期更新になるかと思いますのでよろしくお願いします。

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