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水面下ならば潜ろうか  作者: 森羅秋
瞬とカンゴウムシ事件と夏休み
29/56

兵士を疑う理由

文字数1200くらい


 女神ミナの話をまとめるとこうだ。

 新種のカンゴウムシが泉都市に出没し、それがホープ周辺で確認された。時空の歪みから発した新たな虫は浄化されやすく、現存しているカンゴウムシよりも弱く、数も少ないため近いうちに自然淘汰されるであろう。危険性は何もなく、危惧する必要もないと報告を受けた。それが環境課での意見であり、最初に発見され経緯を観察していた東側地区担当者たちが決定づけたそうだ。

 そこに異を唱えたのが西側地区担当者たち。二つの情報の食い違っている事に危機感を覚えた女神ミナは、兵士に再調査を依頼しても虚偽を報告される恐れがあると判断し、たまたまここに訪れた何人かのリクビトに調査をお願いするも、瞬以外はすべて断れたところまで話した。

「だから、この件に絡んでいるのが兵士だと思ったのですね」

『ええ。その通りです』

「ある程度の目星がついていると言えば、知りたいでしょうか?」

 ピクリと女神ミナの眉毛が上がる。すぐに手で口元を覆ったのは、冷笑を浮かべたことに気づかれないためである。ああ思った通りこの子は秀逸だ。と女神ミナは瞬を見下ろした。そして何も知らないと少し不安そうな笑顔を浮かべた。

『貴女がご存知ならば、教えて頂けませんか?』

「はい。東側地区開発研究室でカンゴウムシ改造の証拠を発見しました。数人の研究員とそれを指示した者がいます。首謀者はまだ確定出来ませんけど」

『あらまぁ。そんな近くに……』

 すぅっと目を細くしてアクアソフィーに視線を向ける女神ミナ。手で隠した口元はいまだ冷笑を浮かべている。

『首謀者は研究員ではないと思っているのですね』

 はい、と瞬は頷く。ガリウォント本人の動向をまだ調査していない以上、迂闊な事は言えない。その辺はアル経由で手がかりが得られるはずだ。

『他に疑わしい者はいる、と?』

「はい。私はもう少しこの件に首を突っ込みたいと思います」

 女神ミナは深く頷いた。

『分かりました。では、その者について調査できる範囲でお願いします』

 そして女神ミナは口元から手を下ろす。少し困ったような表情を浮かべていた。

『危険だと判断したらその時点で終了すること。くれぐれも無理はしないように』

「分かっています」

 瞬は身に染みる思いで頷く。自身の力量を過大評価して無理をすれば、そのしっぺ返しで周りが大変な事になると、過去の経験から学んでいる。出来ない事をするつもりは毛頭ない。

 用件が済んで立ち去る前に、瞬は小道で来ているがあそこの警備が手薄で危険はないのかと進言した所、女神ミナは可笑しそうに笑って

『貴女が来るためにわざわざ警備を緩くしているのですよ。普段はもっとしっかり警備しています』

 そう答えた。ならば、どうして瞬が来るときは手薄なのかと尋ねると、女神ミナは『ふふふ』ともう一度笑って。

『水滴すら、私の目になるのですよ。貴女がここへ来たタイミングで、信頼できる者に警備を緩めてもらっています』

 絶句する瞬に向かって、妖艶な笑みを浮かべ得意げに答えた。

 上手いこと手のひらで踊らされてる感じだなぁと。瞬は再確認させられたが、相手が相手だけあって不快感はほとんどなかった。



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