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水面下ならば潜ろうか  作者: 森羅秋
瞬とカンゴウムシ事件と夏休み
24/56

研究室に潜入

文字数1800くらい


 深夜2時過ぎ。夜勤の兵士がアクアソフィー内に残っており通路や一部の窓に最小限の明かりがついている。今夜は急な事件は発生しておらず平和だった。真面目に勤務している者、仮眠している者、通路を歩く者など、監視カメラがいくつかその姿を映しており、異常がないか管理室が逐一チェックしている。

(ふむ。そろそろ動いてもいい感じだね)

 瞬はノートパソコンでいくつかの監視カメラの画像を確認していた。今から向かう場所に人が居ないか、そこへ向かう際に巡回する人はいないかを、勤務表と照らし合わせて念入りにチェックしている。予定通り、今宵は研究員全員が帰宅しており、内部調査にはもってこいのようだ。

 瞬はコードを抜きノートパソコンを黒いリュックに納めるとゆっくりと立ち上がり、ドアをゆっくりと開けて隙間を覗く。誰もいない事を確認すると、そぉぉぉっと通路へ出た。今の彼女は真っ黒い服で統一されている。黒い帽子を被り、薄い眼鏡型暗視ゴーグルをつけ、黒いジージャンを着て、黒皮の手袋、黒い靴。背中は黒い大きなリュックを担いでいる。まさに闇に紛れる泥棒スタイル。

(さてさて~。さっさと済ませちゃおう)

 一度自宅に帰って、匠から貰った侵入に必要な道具を取ってアクアソフィーに戻って来ていた。深夜張り込んで調べるという事はアルには秘密。夜遅くにと怒られるからだ。なので匠にだけ今日の計画を告げている。

(映像はカモフラージュしてるからゆっくり進もう)

 アクアソフィーの内部に侵入してから倉庫に隠れている間に、管理室の防犯映像をハッキングして監視しながら、一台の防犯カメラの映像に細工を行っていた。現在、管理室にはデジカメで撮ったこの階の通路の映像が流れているはずだ。多分、映像を流さなくても問題ないかもしれないが、念には念を入れておくことにしている。これはすべて違法行為である。見つかれば処罰される。

 重々承知の上だが、虎穴に入らざれば虎子を得ずというように、多少の危険を冒さなければ手に入らないこともあるのだ。匠と電話で相談して、計画は問題ないと太鼓判を押したので大丈夫だろう。彼女の手腕の師匠は匠だ。この技術も道具も彼が授けた。

(警戒を怠らない、油断しなければ大丈夫)

 匠とは二年前までは一緒に行動していた。しかし最近は一人でも大丈夫と言われて、今回以外にも色々チャレンジさせられている。違法行為に多少なりとも罪悪感はあるが、慣れてしまえば楽しさが際立ち、最近では嬉々としてやっている。とはいえ、得た情報は決して悪用しない。あくまでも、悪いことをしている証拠を掴むために同じ穴に飛び込んでいるだけだ。まぁ。どんなに言い訳してもこれは悪いことのであるけれど。

(到着~~~っと)

 瞬は誰とも会わず、東側地区担当箇所の開発研究のドア前に到着した。

(さぁて。一応確認したけど、いないよね~?)

 ここで最も注意することは、ガリウォントという存在だ。アルと同じ役職で統率クラス。この開発研究室も実は彼の部長室のすぐ近くにある。夕方に帰ったと思うが何しろカンゴウムシ改造の黒幕候補である。帰ったと見せかけて、実は研究室の中に居ま~すって事も十分にありえる事だ。

(でもまぁ、いないのは確認済み)

 帰宅している姿は防犯カメラで確認している。

(さてさて)

 音を立てないようにゆっくりドアノブを捻ったが、当然のように鍵は閉まっている。瞬は胸ポケットに忍ばせている特殊な針金を二本取り出した。長さ十センチ程度の金属棒でくねくね折れ曲がった構造をしている。一般的な施錠の鍵穴に針金を入れ、あっさりとドアの鍵を外す。その間約8秒という早業だ。工具を納めてからゆっくりとドアノブを回す。ドアノブに抵抗が全くない事を確認して、瞬はそろっとドアを開けた。室内は真っ暗だが、暗視ゴーグルのおかげで探索するのに申し分ない。

(いや~。やっぱ盗聴器仕掛けて正解だったわ~)

 ゆっくり中に入ると音を出さないよう慎重にドアを閉めて鍵を掛けた。見回り兵士は部屋の鍵が掛かっているか必ずドアノブのチェックしている。こうしておかなければ、ちょっと危ない。

 今回実行するための下準備をする為に、昼間にアルに無理を言って見学という名目でここに侵入した。ペン型カメラで室内の動画を撮り、部屋の構造と監視カメラの位置を把握する。後々確認してみても、この研究室に監視カメラはないと思われる。途中、瞬は鼻をかむふりをし、捨てたばかりと思われる空のゴミ箱に、くしゃくしゃに丸めたティッシュを小型の盗聴器と一緒に捨てて忍ばせておいた。深夜誰かいれば音を拾えるし、そうでなくても秘密のお話が記録されるかもしれないという打算もある。

(まぁ今回は、音の収穫はなかったけども)

 瞬は潜入下準備のためにアルを利用したのだった。ばれたら大目玉どころか、軽蔑されそうである。絶対にばれていはいけないと、瞬はわざわざアルが帰宅する日を狙って実行に及んだ。まさか下準備する当日に帰宅するとは予定外だったが、早ければ早い程良いと思う。



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