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昨日まで

――――昨日までは




「じゃあ、俺今日こっちだから」


少しはにかみながら告げられた言葉に体を固くした。

7時を少し過ぎる時間だが、外は明るく夏の足音を感じさせた。部活の火照りの冷めない体にじっとりと水分を含んだ風がまとわりついて少し不快だ。


「そうだったな」


自転車のカゴに荷物を載せてサドルに跨った。


「じゃぁ、おつかれ」


そう言ってペダルを踏み込みこんだ。


「また明日」


これから待ち受けることに気を取られているのか、アイツの声は弾んでいた。背中に言葉を受けつつも振り返ることはなく片手をあげて答えた。



ーーギーコギーコ


ペダルを踏むたびに嫌な音がした。西門まではそれほど距離はないのに、ペダルがどんどん重みを増した。


ーーーギーコ



ついに足が止まった。自転車に跨ったままその場に立ちすくむ。

遠くのほうでボールのはねる音と床をする足音が耳をついた。


昨日まで隣で聞こえていた不快な音が今日は無い。

何故かそれがひどく寂しく感じた。


きっと今頃、正門で待つ彼女の元についたのだろう。

はにかんだアイツの顔が浮かんだ。


もう一度ペダルを踏み込む。ゆっくりと進み出す自転車。耳障りな音が踏み込むたびに聞こえる。


西門を抜けるとあたりは少しだけ夜の色を運んできていた。


ーーギーコギーコ


昨日まで、隣で奏でた音がふと聞こえた気がした。



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