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君に届かないこの手が酷くもどかしい
わざと選んだ大学は、君とは真逆の方向で君から離れる口実だった。幸せそうな二人を見るとつらかった。いい人のふりをして、君の背中を押した。
あれでよかったと言い聞かすわりに、いつまでも君は僕の胸に居座る。君が幸せならそれでいいと思ってた。
離れてみるとよくわかる。
大切なもの、大切な人。
離れようと思って選んだのに、君に届かないこの手が酷くもどかしい。
かなわなくても君の近くに居続けたかった。伸ばした腕の先。君に届かなくなっていた。
君に届かない、この手が酷くもどかしい。