いいっすねぇ
放課後の教室。人のいなくなったそこに、一組の男女が向かい合っていた。
緊張のせいか表情の硬い男子が、意を決して言葉を発する。
「好きです! 君と一緒に過ごしている内に、どんどん好きが大きくなっていきました! 僕と付き合ってください!」
「嬉しい、よろしくね。私も好きだよ」
「…………ぃよぉっしゃぁぁ!!」
感情のこもった告白が成功した喜びに、思わず大声で喜びを表現する男子。女子もまんざらでもなさそうだ。
「じゃあ、一緒に帰りませんか」
「でも、家逆方向じゃなかった?」
「送っていきます!」
「ありがと。あと、敬語がそのままになってるよ」
元々仲が良かったのか、女子はかなり気楽な口調だが、男子はまだかたさが残っている。
「あ、いや、これは……ずっと緊張してたから、つい」
「距離感じちゃうな〜」
「ごめんなさい」
「冗談だよ。それだけ告白に気持ちがこもってたって事でしょ」
「うぅ、言葉にされると恥ずかしい」
「ま、からかうのはこのくらいにして帰ろっか」
終始女子優位だが、両者共に表情は緩く、空気は甘い。楽しんでいることが分かる。
「じゃあ、はい」
「え?」
女子が差し出した手の意図が分からず、呆けてしまう男子。
「送ってくれるんでしょ? 手、繋いで帰ろ」
「あっ、うん! そうだね!」
「何そんなことで大袈裟に喜んでんの」
「だって、今までは出来なかったから。それに、君から言ってくれたのが嬉しくて」
少し照れながら答えた男子の素直な気持ちを受けて、自分がやった行為に顔を真っ赤にする女子。
「……っっ!! いいからっ、帰るよ!」
「うんっ!」
「…………私だって好きなんだから、仕方ないじゃん」(ボソッ)
「? なんか言った?」
「なんでもない! さっさと帰るよ」
「ちょっ、引っ張らないでよ〜」
幸せそうに手を繋いで帰る男女。家に着くまで、一度も手を離さなかったとか……。
ここに、一組のカップルが誕生した。周りからはとっくの昔にカップルだと思われていたが。
好き