身勝手
10年程昔近隣市町村で中高生の女の子が3人立て続けに行方不明になる。
3人に接点は無く、警察は犯罪に捲き込まれたかと大掛かりな捜索を行ったが発見する事は出来なかった。
最近では彼女達の家族が駅前や大勢の買い物客で賑わう商業施設の前でビラを配り、そのビラを受け取った人がそういえばそんな事件もあったなと思い出す程度に人々の記憶から消え去っている。
その記憶が人々の頭に蘇った。
1カ月程前高校生の女の子が行方不明になる。
最後に目撃された場所の近くの倉庫の防犯カメラに映った彼女の写真に情報を求める文章が書かれ、街の掲示板などに張られた。
しかし1週間前彼女は最悪な状況で発見される。
発見に至ったのは発見場所から数キロ離れたところに住んでいた男が残した遺書とも取れるメモ。
男は母親と同居する兄が仕事で家にいない時を見計らって隣街の実家を訪れ、母親に金を無心していた。
それが最近訪れないのを不信に思った兄が男の住むアパートを訪れ、ゴミだらけで生ゴミの臭いが充満する部屋に入りちゃぶ台の上に置かれたメモを見つける。
メモに殴り書きされていたのは。
「生活保護の支給が打ち切られた、生活保護の金が無ければ生活出来ない。
担当者は俺に死ねと言っているんだ。
だからご期待通り死んでやるよ。
だけど1人で死ぬのは寂しいから、其処らにいる女を拉致してそいつと一緒に死んでやる。
責任は全て、生活保護の支給を打ち切った市の糞担当者にあるんだ」
だった。
そのメモを読んだ兄の通報で警察が男のアパートの周辺の捜索を行う。
結果、アパートから数キロ離れた彼岸花の群生地と地元の人たちに知られているが、60年程前昭和30年後半頃まで仏さんが土葬されていた墓場の脇にあったため地元の人たちも殆んど寄り付かない場所に、首を絞められ殺されたあと木に吊るされた女の子の隣で女の子と手を繋いだ男の首を吊った死体が見つかった。
警官達が見つかった遺体を運び出そうとしている側で、日にちが経ちすぎ役に立たなかった警察犬が此処掘れワンワンとでも言うように地面に穴を掘り始める。
側にいた警官が不信に思い犬が掘っていたところを掘ったところ、10年前行方不明になった女の子達の引き裂かれた衣服を纏った遺体が掘り出された。
此処掘れワンワンをした警察犬の初めての出動は、行方不明になった女の子達の捜索だったらしい。
発見された遺体の1つが手に犯人逮捕に繋がる重要な証拠 を握り締めていた。
俺の紛失したと思っていた車の免許証をだ。
俺は遺体が発見された日の夜逮捕された。
チクショー!
あの糞野郎があの場所で無理心中なんてしなければ!
気づかれず逃げ切れたのに。
チクショー! チクショー!
あの引退間近の糞犬が遺体の臭いに気がつかなければ!
逮捕されなかったのに。
嫌だ! 嫌だ!
死にたくない。
3人も殺している俺は死刑にされる。
死にたくないよー!
ワアァァァァーーーーン