好き過ぎる貴方の隙
「...えっとキス? ってやっぱりそういうやつ?」
「あ、ごめん...嫌だよね? 女の子同士だし...」
二人の間に沈黙が流れる。
「嫌というかその、まだよく状況が分かってないって言うかその...買い物とか趣味とかに付き合っての方だと思って...」
「じゃあ、やっぱり私と付き合うのは無理ってこと...?」
上擦った声で聞いてくる文乃さん。今にも泣き出しそうだ。
付き合うとかそういう話以前に話すようになってからまだ一日と半日なんだけど...
惚れっぽいのかな...ご令嬢がそんなんで大丈夫なの...?
「え、と...そもそも、私たちまだお互いのことあんまり知らないし。そういうのはまだ早いんじゃないかな~? って」
「...知ってる、私は知ってるよ。麗羽ちゃんのこと」
うん...?
「寝るのが大好きなところ、顔に出やすいところ、面倒くさがり屋さんなところ、成績は平均くらいなところ、甘いものが好きなところ、可愛いものが好きなところ、本当は寂しがり屋なところ、ツンデレなところ、優しいところ、不器用なところ」
...私そんなに分かりやすいのかな
「で、でも文乃さんが私のこと知ってても、私は文乃さんのこと全然知らないよ。それに、文乃さんのことは好きだけど、それは恋愛感情とかじゃなくて友達として。文乃さんはどうなの? 気の迷いとかじゃないの?」
「好き。好きだよ麗羽ちゃん。気の迷いなんかじゃないの」
泣き出しそうだった文乃さんの表情が抜け落ち、彼女は無表情でそう言った。
なんで? なんでそんなに真剣なの?
私、あなたにそこまで好かれるようなことしたっけ? わかんないよ。
「...なんで私なの?」
「一目惚れなの。入学式で初めて見た時ね、胸が跳ね上がったの。それからずっと貴方のことしか考えられないの」
私みたいなちんちくりんに一目惚れするような要素どこにもないと思うんだけどなぁ...
でも、そんなこと言われて嬉しくない訳もなく。私の胸は高鳴っていく。スロースターターにも程がある。
「ねぇ、麗羽ちゃん。麗羽ちゃんは私のこと友達としては好きなんでしょ? ならさ、それでもいいから、駄目かな? 」
「...それは文乃さんに悪いよ」
「ううん、悪くない。麗羽ちゃんと付き合えたら私はそれだけで嬉しいよ」
「で、でも...」
「...私と付き合ってくれたらいつでもこのベッドで寝ていいよ」
...
「...文乃さん、付き合おう」
評価ありがとうございます