帰るね、明日ね、またお昼寝
続きました。
「そろそろ行こっか」
「もうちょっとだけ話さない? お願いっ」
まったく、やれやれだぜ。
私はストローに口をつける。ズゾゾゾゾ
吸って返ってきたのは変な音と氷が溶けた水だけ。
「麗羽ちゃんはさ、やりたいこととか趣味とかないの?」
「ないよ。何もない」
「そっか。じゃあ一緒に何か始めてみない?」
「無理だよ。結局途中で投げ出しちゃうもん」
「も~、何やるかくらい聞いてくれてもいいのにぃ」
甘いよ文乃さん、私のやる気のなさを舐めない方がいい。まじで何もやりたくない。
三大欲求以外の欲求なんて強欲だよ。まぁ可哀想だし、何やるかくらいは聞いてあげよう。
「それで? 何やりたいの?」
「言ってみただけ、本気にしないでよ。ふふ」
このアマ...すごい可愛いからって調子に乗りやがって。可愛いかよ。というか...
「さっきからケチャップ付けっぱだよ? ほら、これで口拭きなよ」
「え」
慌てて鏡を取り出し、確認する文乃さん。
みるみるうちに顔が赤くなってケチャップと区別がつかない。もしかしてちょっと天然さん?
「お、お願い...みんなには内緒にして...///」
「えー? どうしよっかな~?」
紙ナプキンで急いで口を拭き、俯きながら小さく言う。写真撮ったらめちゃくちゃ高く売れそう。まぁそんなことしたら暗殺案件かな?
「意地悪...もういいから帰ろ?」
「はいはい、ゴミは自分で捨てるんだよ?」
「わ、分かってるよ!」
分かってないじゃん。
「じゃあ、また明日」
「う、うん。じゃあね麗羽ちゃん」
店を出て、別れを済ました私は家に向かう。
歩くこと十数分、無事家に着いた私はさっさと制服から部屋着に着替えリビングのソファで横になり、目を瞑る。
今日は何だか新鮮な一日だったな、文乃さんと仲良くなれた、のかな?
それににしても本当に気さくでいい子だったな。私とは大違いだ。ちゃんと話せてたかな? 無愛想じゃなかったかな? 文乃さんはつまらなくなかったかな? ちゃんとクラスメイト出来てたかな。
「あーーーー、不安だ」
そんなことを呟いた瞬間、ピロリンとスマホに通知が来た。取るのめんどくさいけど、たぶん文乃さんだよなぁ。
『麗羽ちゃん、今日は本当にありがとう! とっっっても楽しかったよ! また一緒に遊んでくれたら嬉しいな♪』
『私も楽しかった。私でよければいつでも誘って。』
既読付けるの速すぎたかな。あんまり見ないって言ってたのに返信早いとか思われてないかな。はーあ、人間ってめんどくさ。
やっぱりお昼寝が一番。