帰り道、寄り道、好奇心に
続きました。この後マック寄ろって感じのやつです。
つつじ丘 文乃、彼女は神に愛されている。
成績優秀、運動神経抜群、見た目だってそこらのアイドルじゃ敵わない。
まさに「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」だね。
「ねぇ、文乃さん。その、前から気になってたんだけどさ」
「んー?」
「もしかしてあの『つつじ丘財閥』って関係あったりするの?」
「そうだよ? もしかして気付いてなかったの?」
つつじ丘財閥。
この国でその名を知らない者は赤子か物資の届かない孤島のような場所に住んでいる者だけだろう。取り扱う事業は数知れず、またその全てを成功させてきており、義務教育の教科書にも取り上げられている成功者の一族。
それがつつじ丘家だ。
「もしかしたら苗字が一緒なのかもしれないって思いたかったんだよ」
「何それ、変なの。ふふっ」
だって同じクラスにそんな財閥令嬢がいたら胃に悪いし...
「ちなみにつつじ丘って苗字、私の一族以外にいないよ?」
「ひぇっ」
そんな人間が私なんかと帰ってて大丈夫なのかな...?
誘拐とかされたらたまったもんじゃないよ。
もしかして私が気付いてないだけで周辺には黒服が沢山いたりして。
「あ、私の帰り道そっちなんだよね。文乃さんは?」
家の方角を指差し、文乃さんに振り返る。しかし彼女はある一箇所を見つめて立ち止まっていた。
果たして彼女の視線の先にあったのは某ファーストフード店の看板。家柄からしてきっと入ったことがないのだろう。ドラマなんかでありがちな設定のやつだ。
「あ~、寄ってみる?」
「うん!!!」
彼女は自慢の碧眼を輝かせ、目一杯に頷いた。いっちょ、(家の)格の違いというものを教えてやりますか。
「すごい! 頼んでからすぐ出てきたね! しかもあんな低価格でこんなに量が多いなんて!」
「でしょー?」
私は自慢気に胸を張る。
やっぱりダブルチーズバーガーなんだよね、そしてセットにはコーラとポテト。あとアップルパイも外せない。
「麗羽ちゃん、ありがとね!」
「別にお礼を言われるようなことじゃないよ? でも、どういたしまして」
ケチャップを頬に付けた文乃さんがとても嬉しそうに笑う。私もなんだか胸が暖かくなった。
「あ、そうだ麗羽ちゃん。連絡先交換しよ?」
「いいよ、...ってなんで隣来たの?」
「駄目だった? 」
「全然、急だったから驚いただけだよ」
なら良かったと、彼女は居住まいを正し、スマホを出す。出たばっかの最新機種じゃん、やっぱ金持ちは違いますこと。
「ありがと! 帰ったら連絡していい?」
「いいけど、私あんまりスマホ触らないよ?」
「そうなの? 普段何してるの?」
「寝たり、起きたり」
何それ? と言いジト目を向ける文乃さん。
やめて、美少女のジト目はなんか変な気持ちになる。
「じゃあ文乃さんは何やってるの?」
「う~ん、ピアノ弾いたり、花壇のお世話とか本読んだり? あ、あとちょっとした運動くらいかな?」
時間の使い方上手すぎ人間がよ...私と対極に位置してるじゃん。共通点感じてた私が恥ずかしいよ。