きらいなところ、浮つく心
続きました。
「んぅ~、よく寝た」
今日は運が良い。なぜなら午前中に起きれたからだ。二度寝の誘惑も来ない。しかし、やることがない。暇だ。
ピロリン
枕元にあるスマホをとる、やはり文乃さんからだ。基本的に私は家族くらいとしか連絡をとらない、そもそもとる相手がいなかった。文乃さんと付き合うまでは。
『おはよう麗羽ちゃん! まだ寝てるかな? 突然だけどよかったらこの後、デート(キャッ///)でもしない?』
『おはよ、起きてるよ。デートね、いいよ。何時にどこ?』
『やった! 十時に駅前でどうかな? 』
そんなやり取りを終え、朝食を食べる為にリビングへ向かう。
「あ、うーちゃんおはよう! こんな時間に起きてるなんて珍しいね!」
「はいはい、おはよーさん。でも一言多いっ」
「いてっ」
要らんこと言う美羽にチョップして隣に座る。テーブルに置いてあるシリアルを手に取り、器に入れて牛乳を注ぐ。いただきます。
「うーちゃん、今日暇でしょー? 映画みにいこーよ」
「今日はうーちゃん予定ありまーす、また今度ね」
「え!? 嘘! めんどくさいからって嘘ついてるんでしょ!」
「む、嘘じゃないよ」
「嘘じゃないなら証拠みせて!」
「はいはい、後でね」
シリアルを食べ終えた私は唸る美羽を置いて自室に戻り、支度を済ませて姿見で最終チェック。
「...こんなことなら雑誌でも読んで勉強しておくんだった。後ろちょっと跳ねてるし...」
あーでもないこーでもないと身だしなみを整える。気付いた時には、集合時間にギリギリ間に合わないくらいの時間になってしまった。
「い、行ってきまーすっ」
玄関を足早に駆け抜け、駅まで早足で向かう。走りたいけど走ったら今までの苦労が水の泡に...うぅ...
なんとか待ち合わせの場所に着いた私は、先に着いてるであろう文乃さんを探す。ちらりと時間を見ると五分ほど遅れていた。辺りを見渡し、目印のプラチナブロンドを探す。いくら人が多くてもあれほど綺麗な金髪はそうそういない。見つけるのは簡単なはずだ。
「文乃さんどこ...?」
「わっ!」
「っ... 」
背中に軽い衝撃を与えた人物に振り返る。そこには私が探し求めていた美少女がいた。
「ごめんなさい文乃さん、遅れちゃった...」
「大丈夫、私も今来たとこ...なんてね! 具合悪い訳じゃないよね? そうなら無理しなくて大丈夫だからね?」
「うん、大丈夫。その...」
理由を口にしようとして固まる。
あなたと会うための服装で悩んでて遅れました、なんて恥ずかしくて言えるわけない。顔が熱くなってきた。
「どうしたの麗羽ちゃん? 顔が赤いよ? ほんとに大丈夫?」
「っ...うん。平気、ただその、ど、どうかな...?」
「?」
鈍感。なんでこういうのは気付かないの。
「よく分からないけど、今日も可愛いね。その服も麗羽ちゃんによく似合ってるよ。とっても素敵!」
「あっ、もしかしてそれで遅れたの? ふーん、へぇ、そーなんだぁ」
何かを察してニヤニヤする文乃さん...ほんとにこの人はっ。そういうとこほんときらいっ。ばか。あほ。へんたい。
「し、知らないっ。はやく行こ!」
「ま、待って~! 麗羽ちゃ~ん」
さらに顔が熱くなった私は、それを誤魔化すように彼女を置いて歩き出す。
今日はいったいどんな一日になるんだろう。
彼女への態度とは裏腹に、私の心は今にでもスキップをしそうなほどに浮ついていた。