元極道が異世界に参ります
「お二人ともご飯が出来ましたよ?」
バタバタと宿屋の娘であるリュカが走ってきた。
「お~ もうそんな時間か、そういえばだいぶ腹も空いているようじゃ。ありがとう。」
もう夕食の時間を過ぎているようだ。
「もお! 相変わらずですね。鍛冶場は居るだけでも暑いんですから!しっかり休んでくださいね!!」
「すまん、すまん、あと少しなんでついな」
もう少しだと言われれば、つい見ていたくなるのが少年心だと思う。
「普通 素人は居るだけでも地獄のはずなんだがなあ?」
鍛冶職人ダガンが不思議がっていた。どうやら終わったようだ。
「出来たんじゃな!!!!」
「おうよ! お前さんの言うとおりに作れたと思うぞ。これ以上のない傑作だ!それに鞘あるぞ。」
確かにそこには片刃で反りのある刃とそれが収まるであろう鞘が出来ていた!
「やっぱり、何度見ても不思議な形をしていますね?リュウゾウさんの故郷の武器ですよね?」
「そう、これは刀と言う、やはり手に馴染んだ物が欲しくてなあ、まさかこんなに速く完成するとは思わなんだ。しっかりと手にも馴染む、ダガンの腕前はたいしたもんじゃ!」
「まあ、あんだけ金を積まれて指示もしっかりとされりゃ、
そりゃおめえ、作るしか無いだろうがよ、それで作れなきゃ三流よ!」
ダガンは照れているようだが本心から良い腕をしていると思う。
「お祝いに今日の晩御飯は豪華にしますね!お父さんに言ってきます!お二人とも早く来てくださいね!」
そう言うとリュカはバタバタと走っていった。
その日の晩御飯はとても豪華な物で若返った胃を充分に満たしてくれた。
次の日
ッヴン ッヴンと素振りの音が響いていた。
やはり木刀よりも手に馴染みより実践を意識できる。
「リュウゾウさんこんにちは!訓練ですか?」
宿の仕事が終ったようでリュカがカゴ持ってバタバタと走ってきた。
「おぉリュカ、こんにちは。やはり使ってみたくてなあ。」
「リュウゾウさんはすごいですね!!」
満面の笑みで誉められるとつい気が緩んでしまう
「訓練はまあ習慣になっとるしな、やらんと落ち着かんのだよ。そう言うリュカはカゴなんぞもって何処にいくんじゃ?」
「今日は月に一度の商人さんが来てくださる日なので調味料を買いに行くんですよ。リュウゾウさんも一緒に行きませんか?たまに面白いものも有りますよ?」
「ふーむ? 面白そうだ一緒に行こうかい。」
「わーい! 行きましょう行きましょう!」
本当に可愛い娘だ、この子宿には世話になっておるし、なにか買ってあげようか。
村の広場には沢山の人だかりが出来ていた。
「ほらほら!リュウゾウさんもう商人さんが来てるみたいですよ!」
この村にこれだけ人が居たことに静かに驚いた。
「あれ?いつもの商人さんじゃありませんね?」
「そうなのか?いつもの商人はどんな感じなんじゃ?」
「いつもの商人さんはもっとお爺ちゃんで護衛の方も軽装だったはずです?」
そこに居たのはどうみても中年であり醜く太った商人と全身鎧を着た護衛達が立っていた。
「なにか、嫌な感じゃ、リュカちょっと離れておれ。」
リュカを遠くに離し様子を探る。全身鎧は3人と馬車に何人か居るのう、じゃがとても弱い、護衛ではなさそうじゃ。悪い予感が当たらなければよいのじゃが。
「なあ、もう良いだろ?充分中まで入れたと思うぜ?」
全身鎧の一人が太った商人に小声で話しかけていた。
「まあ、良いでしょうただし、女子供は殺さないでくださいね高く売れますから。」
やはりか、その会話が聞こえ始めた時に全力で走り込んだ。
「ヒャッハー!お楽しみの始まりだ!」
突然抜刀した全身鎧、近くにいた男は動けずただ見ているしかなかった。浅く切られ悲鳴が上がる。二度目の剣が振られようとした。
バシンと剣と鞘がぶつかる音が大きく響く。
異変を察知したであろう村人達が一斉に逃げていく。
「ああ? なんだオメエ俺様の楽しみを邪魔するたあ覚悟できてんだろうなあ? ああ?」
全身鎧には似つかわしくない下品な口調で男が叫ぶ
「間に合ったか。一体これはどう言うことだ?貴様らは商人では無いのか?」
「ははは、私は商人ですよ?商品は人間ですがね?あなたのせいで商品が逃げてしまった。後で捕まえないと行けませんね。」
醜く太った商人が自慢げに話す
「おいおい!何が邪魔したかと思ったら、ガキじゃねえか!こりゃあいたぶりがいが有りそうだ!行くぞおめえら!」
三人の全身鎧が剣を構える
「私は何て運がいい!異国の顔立ちの少年なんてそれはもう高く売れますよ!!絶対に殺さないでくださいね!」
商人高笑いが響く
「そうか、外道か、ならば遠慮は要らないな!この力試させてもらおう!」
静かに呼吸を整え集中する。
「そんな細い剣で何ができるんだよ!鎧でも切ってみるかあ?
ギャハハハハ!」
油断仕切っているのだろう全身鎧は上段大振りで剣を振り下ろしてきた。
「ッ!」
全身鎧両腕の肘から先が無くなっていた。
「な、、んだ、これ、、」
出血死よりもショック死の方が早かったのだろう全身鎧がその場で倒れた。
「すごいな、出来るとは思っていたがこの切れ味か。」
やはり刀は手に馴染む。
後は簡単だった。順番に残った者を切り捨てるだけ。随分怯えていたが自業自得である。外道に生きる価値はない。
全員を切り終え辺りがざわつき始めた。
「リュウゾウさん、だ、、、大丈夫ですか?」
落ち着いたのを感じたのだろう村人とリュカが半泣きで近づいてきた。だいぶ怖がらせてしまったようだ。これ以上迷惑を掛けるわけにはいかんな。
「厄介者は村を出ていこう、皆を怖がらせてしまった様じゃしな。」
そう言うと村人の一部からはほっとしたような気配を感じる
「なんでそんな悲しいことを言うんですか!!!!
リュウゾウさんは私達を助けてくれたんです!!!!
お礼をするまでは絶対に逃がしません!!!!
覚悟してください!!!!」
そう言って泣いているリュカに怒られてしまった。まだまだ人の心は理解できないようじゃ。何年生きていても不器用は直らんらしい。
その日の夜は村人全員で大宴会を行った。酔っ払ったリュカに長いこと絡まれたが、しょうがないのじゃろう。