表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/45

007話 そうぐう

グロウが指した方角には、県内最大のターミナル駅があった。

そこか、その先かは分からないが、とにかくそこへ向かおうと俺は決めた。


グロウは頭を抱えるようにしながらだが、次の目的地を指示するようになっていた。

それ以外は今までと同じに見えるが、何か変わった様に見える。

『空の回廊』の攻略を始めたときあたりから、何かが変だ。

だが、気にしてばかりもいられない。

俺はそのターミナル駅に向かって線路を進むことにした。


しばらく高架の上を進んでいた線路が徐々に地下へ潜っていく。

その切り替わりの位置で、電車がオブジェクト化していた。

中には人がたくさん乗っていた。

勿論、全員オブジェクト化している。

地下へと繋がる入り口のため、当たり前だがこの先はトンネルになっている。


EOにも地下道のようなダンジョンはあるが、ダンジョン内が真っ暗であると言う設定が無いため、アイテムで光を発することができるのは、閃光弾か、照明弾くらいしかない。

作業員用に所々照明が点いてはいるが、モンスターが出現し得る状態のまま、明かり無しで突撃するのは躊躇してしまう。

どうやって進もうか考えている時、俺は大事なものを忘れていたことを思い出した。


―――スマホの存在だ。

俺はイノリのスマホではなく、使い慣れた自分のスマホを取り出して、懐中電灯(ライト)をタップした。

当たり前と言われれば当たり前だが、スマホ背面のカメラのフラッシュにも使われるライトが点灯する。

EOのアイテムの事ばかり考えていたせいで、スマホの事はアプリ起動用の機械と思っていたが、スマホ自体が使えなくなったわけではない。

勿論使えない機能もあるのだろうが…。

そう意味での調査も、そのうちやってみる必要があるだろう。


トンネルにはシャドーマンやシャドーバットがやたらと生息しており、他の場所よりもエンカウント率が高い気がしていた。

シャドーバットは普通に戦うと強敵だが、強い光に弱いため閃光弾一発で倒せる。

知っていれば、ボーナスモンスターだ。

シャドーマンも、火の巻物(ファイアー)で燃やしておけば、照明がわりにもなって一石二鳥だった。

風魔手裏剣(おかね)が勿体ないと言う理由だけでは決してない。

勿論、それもちょっとだけはあるが…飽くまでちょっとだけだ。

何しろ俺には『金なら腐るほどある』のだ。

バッドステータスの火傷に出来ることも稀にあったし、シャドーマンが複数で現れたときは、やたらと飛び火するのでそう言う意味でも効率がよかった。

ただ、シャドーマンが現れる度に嬉々として火の巻物(ファイアー)を投げつけていたら、グロウからは若干冷めた目で見られる様になったかもしれない。


トンネルを進み初めて一時間程たった頃、突然明かりに照らされた場所が現れた。

駅だ。

もう一駅進めば、目的のターミナル駅につく。

このまま進んでも良かったが、初めての場所だったので、少し探索してみることにした。

降りた時と同じように梯子の近くにあるホームドアが一つだけ黄緑色に輝いている。

近づくとさっきと同じように自動的に扉が開く。

電気も止まっているはずなのに、どんな理屈で動いているのだろうか。

そう考えるとスマホもそうなのだが…。

そう言えば、もう何日も経つのに電池が全く減ってないことに気がついた。


ホームから、地上へと向かう。

しばらく暗い場所にいたので、慣れるまでは少しだけ目が痛かった。

残念ながら、エスカレーターやエレベーターは活性化していなかったので、全て徒歩だ。

エスカレーターを階段のように登りながら、時間が止まっているこの状況を改めて認識する。

相変わらずエンカウントするのは、サーベルタイガーやキラーベアー、バグスばかりで、新しいモンスターは出て来ない。

地図も確認してみたが、新しいダンジョンや宝箱は表示されていなかった。

最寄り駅から辿ってきた線路もダンジョンとはなっていなかった。

この世界では、扉と言う境目が無いところはフィールドと言う扱いなのかもしれない。

特に目新しいものを見つけられないまま、もとの線路に戻ろうと駅の出入口に入ろうとした時だった。


「しっ!待って!何か聞こえる!何か来るわ!」


珍しく、グロウが警戒するように指示してきた。

最近はこちらから話しかけなければ何も答えなくなっていたので、変だなとは思ったが、俺は素直にその声に従った。

駅の出入口となる建造物のちょうど真横に俺たちは身を潜めた。

暫くすると、グロウの言うように階段を登ってくるような足音が響いて来た。

シャドーマンのような軽い足音ではない。

もっと大きな何かが登ってくるような足音だ。

緊張のあまり、溢れてくる唾を飲み込む。

その音が耳の奥に響く。

俺は、自分が手に汗をかいていることにこの時初めて気がついた。

足音がゆっくり近づいてくる。

そして……。


「んー、やっぱ久しぶりのシャバの空気はうまいッスねー。」


伸びをするような声の後、気が抜けるほど明るい若い女の声が響いた。


―――


俺は………混乱していた。

バットステータスと言う意味ではない。

まさか、俺とグロウ以外に動ける人間がいるとは思っていなかったからだ。

動けるのは、俺たち以外にはモンスターしか居ないと思い込んでいた。

しかし、そうではなかった。


飛び出してとり押さえるか、このまま様子を伺うか、それとも離脱するべきか。

俺は迷ったあげく、俺は様子を伺うことにした。

チャンスがあれば接触して話が聞いてみたいと思ったからだ。


女は準備運動の様なことを少ししたあと、


「よし。」


と呟いた。

そして、一瞬にして溶けるように姿を消した。

俺は慌てて女がいた場所に駆け寄ろうとした。

だが、次の瞬間、その必要が無いことに気づく。

俺の真後ろからさっきの女の声がしたからだ。


「一応、言っておくッスよ。

無駄な抵抗はしない方が良いと思うッス。」


女はそう言うと、俺の背中に何かを押し付けてきた。


鋭く尖った………。


ん?


あれ?何だ?

押し付けられたのは俺の想像したものとは何か違っていた。


尖っていないどころか、むしろ柔らかくて……。

あ、えっと、あれだ。

と、とにかく、俺の持っていない大きなあれを押し付けられていた。


だが、それに気を取られている隙に、首元にキラリと光るものがあてがわれていた。

なるほど、こっちが本命だったか。

美味しい思いだけをさせてくれる気は無いらしい。


俺は両手を挙げた。

女はその状態のまま、俺の耳元で囁く。


「そのままゆっくりとこっちを向くッス。」


どうせならもっと違う言葉を囁いて欲しいな…と思いながら、俺は女に促されるまま、指示に従った。


―――


俺はグロウと出会ってからのことを洗いざらい喋っていた。

女は「うんうん」と頷きながら俺の話を聞いている。

時折「分かるッス」とか、「そうッスよね」とか、独特な口調で相づちを打ってはいるものの、至って真剣に話を聞いてくれているようだった。

だからだろう。

ちゃんと話してみようと、思っていた。


話終えると、女は


「なるほどッスね。よく分かったッス。

()()()()もみんな同じだったッスよ。」


そう言った。

私たちもと言うことは、この女以外の人間もいると言うことだ。

それから、グロウの方を向いて


「ね、グロウちゃん?」


と、ニコッと微笑んだ。


女はグロウを知っている風に微笑んだのだが、当のグロウはキョトンとしたままだった。

女は少しだけ寂しそうな顔をしたあと、俺の方に向き直って、


「私の名前は江藤(エトウ) 絵梨香(エリカ)ッス。

よろしくお願いするッス。」


と、手を差し出してきた。

少し明るめの髪色のショートカット、タンクトップのようなインナーの上から薄手のパーカーを羽織り、ショートパンツからのぞく足は少し日焼けしていて、いかにも運動部です…と言った風貌だった。

俺の視線が一瞬だけ差し出された手じゃないところに向いたのは、あんなものを押し付けられた直後だからだ。

いたいけな青少年の心は惑わされやすいのだ。仕方がない。

俺は差し出された手を握ると、


「俺の名前は相沢(アイザワ) (アツシ)だ。

こちらこそ、よろしく頼む。」


と返した。


その後、エリカと名乗った女は、視線を合わせてこう続けた。


「アイザワさんッスね、よろしくッス。

私の事はエリカで良いッス。

あ、あと、さっきからアイザワさんがチラチラ見ているおっぱいはEカップッス。

まだまだ成長中ッス。」


…と。


俺は、色々な意味で眩暈がした。

どうも、持瑠です。

大事なおっぱいキャラのエリカ登場の話です。

巨乳と言うには弱いんじゃないのか?と、思われている方もいらっしゃるかと思いますが、元々高校生くらいを想定していたので、これくらいが妥当なのかな?…と、思っています。

基本的にはハーレまない話を想定していますが、ハーレみたい気持ちはあります。

アイザワ君はムッツリですが、変なところで真面目なのでそんな感じにはなりづらいんですけどね…。

もし、よろしければ次話もお読みいただけると嬉しいです。ではでは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ