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038話 もどってくるもの

俺は投げナイフを取り出すと、女幽霊に対してターゲッティングした。


幽霊に対して物理攻撃が効くわけ無い?

まぁ、慌てるなよ。

もちろん、俺だってこのままで効くとは思っていないさ。


俺は追加で炎槍の巻物(フレイムランス)を取り出し、投げナイフに炎を纏わせると、その状態のナイフを女幽霊に対して投擲した。

炎を纏ったナイフは真っ直ぐに女幽霊へ向かって飛んで行った。


物理系の投擲アイテムと魔法の合成なんか初めてやったが、意外と上手く行くもんだ。

魔法同士じゃ無いので『簡易合成魔法』とも言えないし、『投擲魔法』とでも名付けるか。

投擲魔法炎のナイフ(フレイム・ナイフ)……ってそのまんまだな。


「物理アイテムとスクロールの合成とか何でもありッスね。」


エリカが半分呆れたような声でそう言った。

直後に女幽霊にそのナイフが突き刺さる。


「アツシの巻物(スクロール)って、何にでも火を纏わせたり出来るんスか?」


「ん?どうしたんだ?急に。」


「私のナイフにも火が纏わせられれば、私も戦えるなって思ったんスよ。」


「だったら、炎よりも良いもんがあるぞ。」


俺はそう言うと、ウララに詰めて貰った聖光の巻物(ホーリーライト)をエリカのナイフに纏わせた。


そこからはエリカの独壇場(ずっとエリカのターン)だった。


―――


エリカはパッと見では普段と変わらなかったが、あの女幽霊に対して相当怒っていたらしい。


俺が聖光の巻物(ホーリーライト)をエリカのナイフに対して使用し終わったと思ったら、俺の目の前から消え既にボスのところでボスをタコ殴りにしていたからだ。


『風』シリーズを装備してからエリカが本気の戦闘をするのを初めて見たが、さらに動きに無駄がなくなり、風を切り裂くナイフ捌きはゾクっとするほどだった。


女幽霊は、言葉を発する暇もなく切りつけられたところから煙を吹き出していき、あっという間に浄化され尽くしていた。


俺が投げた投げナイフなんか、ほとんどダメージを与えていないのと同じくらいに可愛らしく見えてしまう。


エリカは女幽霊を倒したあともしばらくその場でとどまって、肩で息をしていた。

それくらい夢中で攻撃をしていたと言うことなのだろう。


女幽霊を倒したことで、女幽霊が発していた黒いオーラが徐々に薄れ始め少しずつ部屋が明るくなってきはじめた。


そしてエリカが振り返って


「私でも倒せたッスね。」


と、言って微笑んだ。


その時、エリカの足元にあったチェス盤の様なボードゲームの駒がひとりでに動くのを俺は見てしまった。


嫌な予感がして、俺は叫んだ。


「エリカ、なんか変だ!

急いでそこから離れろ!」


―――


「物理アイテムとスクロールの合成とか何でもありッスね。」


私は無意識にそう言っていた。

アツシはいつも私が思い付きもしないようなことを平気でやってのける。


まさか、投げナイフに巻物(スクロール)の炎を纏わせて投げるなんて、私に思い浮かぶかと言うと、多分ノーだ。


だけど、それを見たお陰で物理攻撃しかできない私でもあいつに攻撃をする方法を思いつくことが出来た。


正直に言うと、グロウちゃんをあんな風にしたあの気持ちの悪い女幽霊を許してやる気には全くなれない。

出来ることなら、私の手で倒したい。

だから、アツシに聞いてみることにした。


「アツシの巻物(スクロール)って、何にでも火を纏わせたり出来るんスか?」


不思議そうな顔をしたアツシが聞き返してきた。


「ん?どうしたんだ?急に。」


私は答えた。


「私のナイフにも火が纏わせられれば、私も戦えるなって思ったんスよ。」


すると、私の想像を上回る答えが帰って来た。


「だったら、炎よりも良いもんがあるぞ。」


やっぱり、アツシは凄い。

アツシが取り出したのはウララちゃんの魔法が詰まった聖光の巻物(ホーリーライト)だった。


ウララちゃんが今、グロウちゃんを手当てしてくれているので、ホーリーライトは使えないと思っていた。

と言うか、ウララちゃんもいつの間にこんな巻物(スクロール)作ってたんだろう。


私は、アツシが二本のナイフにホーリーライトをまとわせ終わったと思った瞬間、気がつくとボスの前にいた。

多分、無意識に【高速移動】をしていたのだろう。


最近、上手く【高速移動】が制御できない。

考えるよりも先に【高速移動】してしまう。


私は、早速聖光を付与して貰ったナイフで女幽霊を攻撃した。

面白いようにダメージが通る。

でもそれはアツシが投げていた炎のナイフが、女幽霊を上手くピン止め出来ているからだ。

私はただひたすら、怒りに任せて女幽霊を切りつけた。

気がつくと、女幽霊はすっかり消えていた。

なんだか釈然としないが、少しホッとした。


私は振り替えると、


「私でも倒せたッスね。」


と言って、笑ってみた。

上手く笑えていただろうか。

怒りで目の前が真っ白になっていたから、よく分からない。


でもボスも倒したし、あとはきっとウララちゃんが何とかしてくれる。

その油断が判断を鈍らせる事になってしまったのかもしれない。


「エリカ、なんか変だ!

急いでそこから離れろ!」


アツシがそう叫んだあとも、私は反応が出来なかった。

こんな時に限って【高速移動】も自動的には発動しない。


私は背後から現れた新しい(・・・)女幽霊にあっさりと取り押さえられてしまうのだった。


―――


「ケヒケヒケヒ。

あだじば『戻って来る者(レヴァナント)』。

もぅびどりのあだじど同時にだぉさないがぎり、何度でももどっでぐるごどがでぎるのよ!」


エリカを羽交い締めにしながら、女の幽霊がそう言って嗤う。

しまった。

エリカが盾にとられていて、ここからでは攻撃ができない。


その時、ウララが俺に【思念伝達(コミュニケーション)】を繋いできた。


(アツシ、グロウちゃんが意識を取り戻しました。

伝えたいことがあるそうです。)


ウララが少し疲れた声でそう伝えてきた。

何にせよ、グロウが無事で良かった。


(そうか…良かった…。

ウララ、ありがとう。)


俺は、女の幽霊を睨み付けたまま、ウララに感謝の言葉を伝えた。

エリカが捕らえられている以上、隙を見減るわけにはいかない。


(私は…全然…。

では、繋ぎますね。)


ウララがそう告げる。

俺の【思念伝達(コミュニケーション)】の接続先がグロウに切り変わった。


(アツシ、あたし…なら、あの幽霊…リズから…話を聞き出せるかも…。)


グロウは、途切れそうになった意識でそんなことを言ってきた。


(お前馬鹿か!

まだ体が直ってないだろう!

そんなことは良いから、お前は自分の体の事だけ考えてろ!

元気になったらまたいっぱいこき使ってやるから!)


俺はつい、怒鳴り付けてしまった。

相手が怪我人だと言うのを忘れていた。


(うん…分かった…。

ありがとう…アツシ…。

エリカの事、任せたわ。)


グロウはそう、弱々しく言ってきた。

やはり、まだ万全では無かったのだ。


(おう。)


俺は、少しぶっきらぼうにそう言うと、接続を切った。

グロウの話から、あの幽霊の名前が「リズ」だと言うことがわかった。

ダメ元でその『もう一人のあたし』と言うやつの場所を聞き出してみるか。


「どぅじだの?

ざっぎがら、ずっどだまっで。

ながまがだでにどられで、みぅごぎどれなぃのね?

あだじをおごらぜるがら、ぞぅなるのよ!」


女幽霊のリズがそう言って荒ぶっている。


「よぉ、リズ。」


「なぁに、あなだ。

どぅじであだじのなまぇをじっでるの?」


「お前のお友達に聞いたんだよ。

良い名前だな。」


「ぞぅなの?まぁ、いいわ。

ぞぅでじょ?あだじもぎにいっでるの!

ぎゃざりん(キャサリン)にづげでもらっだのよ。

ぎゃざりんになまぇをづげだのばあだじだげど!」


名前を誉めたのに反応してか、やたらと色々喋るリズ。

そこをつけばもっと色々聞き出せるかもしれない。


「キャサリンって言うのも良い名前だ。

リズはセンスが良いんだな。」


「ぞぅでじょ?

あだじばぎゃざりんどいっじょにうまれだげど、おだがいになまぇがながっだの。

だがら、じぶんだぢでづげあっだのよ。」


「そうなのか。

キャサリンの姿が見えないが、どうして一緒じゃないんだ?」


「あだじもいっじょにいだがっだけど、べづべづのばじょにいだぼぅが安全だがらっで、ぎゃざりんがいぅがらあだじはごごで、ぎゃざりんば、ごの裏のびるのよんがぃでぞれぞれ持ち場を守るごどにじだのよ。」


「なるほど、そうだったのか。

ありがとうな、リズ。

もう、お前に用はないよ。」


俺は視線でエリカに指示をすると、もう一度投擲魔法炎のナイフ(フレイム・ナイフ)でリズを磔にした。


その隙にエリカはリズの拘束を解いた。

それを見た俺は、エリカのナイフに聖光の巻物(ホーリーライト)を纏わせる。

エリカはくるりと向きを変えると、リズに向かって切りかかった。


それを確認した俺は、ウララに声をかける。


「ウララ!」


それを察知したウララが答える。


「はい!」


「俺の持ってるSP回復アイテムをありったけ置いてく!

これでリズが復活したらエリカのナイフにホーリーライト使ってやってくれ!」


俺はウララに指示を出す。


「アツシは?

アツシはどうするんですか?」


「俺は、キャサリンをぶっ飛ばしに行ってくるよ。」


「一人で大丈夫ですか?」


「試してみたいことがあるんだ。

キャサリンを見つけたら【思念伝達(コミュニケーション)】するから、二人ともやられんなよ!」


「わかりました!」


「じゃあ、あとは任せた!

行ってくる!」


そう言うと俺は、新しく見つけたもうひとつの扉から郵便局の外へと飛び出すのだった。

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