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033話 ようせいのにわ

私は踵を鳴らしながら、ある場所へと向かっていた。


ヨコハマ駅とエメラルド地下街の連結口から150mほど進んだところから少し左方向に進むと右側に見えてくる巨大な建物――ベイシャルロッテホテルの中にそれはあった。


このヨコハマ駅と言う街の象徴とも言えるそれは、間借りしているスイートルームの名前から『フェアリーロイヤルガーデン』と呼ばれていた。


『フェアリーテイル』のギルド本部である。

エレベーターが使えないこの世界において、高い場所はマイナス要素でしかないが、それを補って余るほどの優雅さと見晴らしが約束された場所であり、権力の象徴でもある。


…が、そうは言ってもだ。

毎回20数階登るのは大変だ。


「お疲れさまでございます。」


ようやく到着した入り口で守衛のギルド職員が声をかけてきた。


「あぁ、いつもご苦労様。」


私はそれに礼を返した。

その入り口を抜けると、目の前にもう一つ扉が見えた。

その扉の奥にある執務室に私は用があった。私は、ドアを素早く二回ノックした。

中からの返事を待たず、私はいつもの様に勢い良く扉を開く。


「マスター。いるか?

ぜひ君に紹介しておきたい少年がいるのだが…。」


扉を開けるやいなや、私は中にいるであろう人物にそう言う。

逸る気持ちが抑えられなかったからだ。


「あらケイト、嫌だわ。

ここには、(わたくし)と貴女しかいないのに。

二人だけの時は、いつものように呼んでくださらない?」


窓際に立ち、外を眺めていたロングヘアーの女性が振り返りながら、そう言って微笑んだ。

肩章の付いた白いスーツを身に纏い、腰には剣を携えている。

スーツには金色の刺繍が縁取られており、襟章と袖章にはギルドの紋章でもある妖精の刺繍があしらわれていた。


彼女こそが、我が『フェアリーテイル』の現ギルドマスター岸田(キシダ) 恭子(キョウコ)だった。


「あぁ、すまない、キョウコ。

少しでも早く君に伝えておきたかったものでね。」


「あら、そうでしたの。

それで、その少年と言うのはどう言った殿方ですの?」


キョウコが優雅な口調で言う。


「そうだな。

上手くは言えないが、とにかく不思議な少年だ。

ポータルとか言う拠点と拠点をつなぐ装置を無償提供してくれたり、あのグロウを解放したり、是非とも我々の味方に引き入れておきたい人物だ。」


私は少しだけ、本音を隠して報告する。


「貴女がそう言うくらいですもの。

ギルドとしても異論はないわ。

ただ…。」


キョウコの目が光る。


「本当に理由はそれだけかしら?」


私は少しだけ動揺してしまう。


「ど、どういう意味だ?」


「いえ、少し貴女がどんな男性に心を奪われたのか気になったものだから…。」


「ばっ、バカな事を言うんじゃない!

まだ高一の子供だぞ!?」


「あら、そうでしたの。

最近、(わたくし)のところには、堅物のサブマスターが遂に恋煩いを発症させているとの報告が上がっていたのですけれど…。」


「まっ、そっ、ちがっ、キョウコ、違うんだ。

私は決してそんなのでは無いんだ。」


「あら、良いじゃない。

この時間が止まった世界――フリーズワールドには、未成年に恋をしてはいけないなんて法律はありませんもの。

そもそも、(わたくし)たちも、もう何年も……違ったわね、もう何十年も、このままなんですから…。

今さら外見なんか関係ないわ。」


「あぁ、そうだったな…。

はっ!……いや、ちがっ……。

今のはそういう意味じゃないぞ。」


「ケイトったら、おかしな人ねぇ…。

そんなこと言わなくたってわかっているわよ。

貴女と(わたくし)はお互いに一桁台(シングル)同士ですもの。

供に過ごしてきた時間が違いますわよ。」


そう言うと、キョウコはころころと笑うのだった。

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