佐藤パート3 出会い②
木の下で蹲る金髪の少女は酷く怯え、震えていた。
「あ、ああ……」
ショックで上手く言葉が出ないのか彼女からは嗚咽の音しか聞こえない。
こんな山の中で一体、何があったのか? 裸で取り残されている外国人の少女。嫌でも嫌な想像が佐藤の頭の中に過ぎる。
「大丈夫ですよー?」
佐藤は彼女が自分に対して怯えている事に気づき警戒心をさらに刺激しないように、ゆっくりと彼女に近づく。落ち着かせるように敵ではない事を分かって貰う為に。
バサバサッ!!
急に大量の鳥達が羽ばたき飛んで行く音に佐藤は空を見上げた。
――何だ?
鳥が羽ばたくと同時にピリッとした物を感じた気がしたが佐藤には、それが目の前の少女が放つ殺気だと気づく事はない。
そして、彼女を見据えて再び声を掛けながら近づく。
「日本語分かりますか?」
彼女からの返答はない。外国の人だからか、錯乱しているからか。
「アーユーオーケー?」
授業で習った英語を辿々(たどたど)しく使うが反応がない。
佐藤と金髪の少女がついに触れられる距離まで来ると彼女は蹲った。どれ程の事があればここまで怯える事があるのか。佐藤は裸ではまずいと、着ていた上着を脱いで彼女に被せた。
急に上着を被せられた事に驚いたのか蹲っていた顔を上げた。自分に被せられた物を確認していた。
「あっすいません、驚かせましたか?」
上着を見て固まる彼女
「えっと、日本語分かりますか?」
さっきは聞こえていなかった可能性を考え同じ質問をする佐藤であったが少女は相変わらず固まったままである。
「アーユーオーケー?」
念のため同じ問いを繰り返す佐藤であるがやはり少女からは反応がない。
「あのー? すいません?」
あまりに反応が薄い少女を前に戸惑う佐藤だが、彼女の震えが治まっている事に気づく。
そして、それと同時に固まった少女の顔が佐藤の方に向いた。
――可愛い。
間近に少女と目が合った佐藤の頭にまずそんな言葉が浮かぶ。が、不謹慎だと直ぐに打ち払った。事実、少女の整った顔立ちは美少女そのものであり、佐藤がそう感じるのも無理からぬ事ではあった。
頭に浮かんだ事柄を奥に追いやり、切り替えた頭で目の合った事をきっかけに佐藤はもう一度その少女と会話を試みようとする
「えっと、あな――」
が
「止まりなさい!」
真後ろからの叫び声によって遮られてしまった。
佐藤が振り返ると、そこには拳銃らしき物を自分に向けて睨む黒いスーツを着た女性がいた。拳銃を持っている事から警察を連想した佐藤は焦る。
裸の金髪の少女と二十歳の学生、客観的に見て犯罪の現場のようにしか見えないからであった。
「ち、ちが……」
「動かないで!」
弁解する余地もなく、一瞬で言論を封殺された佐藤。
命令すると女は佐藤に拳銃を向けたまま、しばらく黙った。
約一分近くの静寂の後、拳銃を下ろしスーツの女は、やっと口を開く。
「名前と年齢は?」
これが職務質問という奴かと佐藤は思う。
「佐藤圭太、二十歳です」
「学生?」
「そうです」
「ここで何を?」
「友達とフライングヒューマノイドを探しに来ました」
明らかにふざけた答えにしか聞こえないが佐藤は女性に正直に答えた。
「……なるほど」
怒鳴られる覚悟であった佐藤であったが、女性は何故か納得した様子である。
「佐藤さん、取り敢えず私について来てください。説明は後でします」
――説明?
今、この場に来たこの女が何を説明するのだろうと言う疑問が佐藤に浮かぶ。
「一応言っておきますが、私は警察官ではありません。説明は主にそれの正体です」
スーツの女がそれと指を向けたのは金髪の少女であった。それ呼ばわりに少し引っ掛るがそれよりも
――いま俺、何か言いったか?
佐藤がそう考えたのは、佐藤が女性を警察官と勝手に認識していた事も疑問も口に出していないのに正され、答えられたからだ。
「それも含めて全部説明するので」
またである。また佐藤が何も言っていないにも関わらず、思考した事を言い当てられてしまう。
「何者なんです? あなた?」
完全に思考を読まれている事に絶句し、佐藤の口からそんな言葉がつい零れると
「黙れ」
スーツの女は銃口を佐藤の額に向け指を引き金に掛けた。金属の重厚感のある彼女の、持つその銃はレプリカには見えない。佐藤の頬に一筋の汗が流れた。
「次、余計な事を話したら本当に撃つ。わかった?」
女の目は凍るように冷たく、それが冗談でも何でも無い事を物語る。
二度、佐藤が首を縦に振ると女は引き金から指を離して銃をしまった。
「これが最後です。説明はする。だから貴方は黙ってついて来てください」 有無を言わさないスーツの女の言動に佐藤は飲まれていた。何も言い返す事が出来ない。この場を完全に掌握されてしまっていた。
「私は貴方の敵ではないので、大人しくしている限り今は何もしません」
銃を向けて敵ではないとは、あまりに横暴な物言いである。しかし、佐藤は言われた通りに大人しくする以外になかった。
把握が出来ない状況に晒された佐藤は自分の後ろにいる少女を見た。目の前の女性がそれと言った金髪の少女は振り返った佐藤の顔を見つめる。
どこか不安そうな顔の少女に佐藤は
「大丈夫」
と頭を撫でる。
「この子は?」
「貴方が連れて来てください。今の所は無害そうなので」
無害。そのワードにまた引っ掛る佐藤であったが、もう質問するような事はなかった。
「立てる?」
佐藤は金髪の少女に手を伸ばす。差し出された手を少しの間ジッと見つめ、手を取る。
「では、行きましょう」
二人が立ち上がったのを見てスーツの女は歩き出す。
その後を佐藤と少女はついて行く。
佐藤は少女の手を少し強く握る。
何も呑み込めていない状況で佐藤は思う。
どうやら、この少女が原因で巻き込まれた佐藤であったが、恨み言や見捨てる事は思わない。
ただ、酷く怯えて震えていたこの金髪の少女を守る事を決意するのであった。
「佐藤さん、一つだけ言っておきます」
スーツの女は振り向かず佐藤に語りかける。
「それは、貴方が守るとか助けるとか」
彼女は淡々とした調子で
「そんな優しい存在ではないですよ」
また見透かした言葉を冷たく言い放つのであった。
読んで頂きありがとうございます。
明日も21時に投稿する予定です。
どうでもいい話です。まともに話せない程、喉が枯れています。冬は悪くないです。
感想お待ちしております! それでは!




