佐藤パート10 金髪少女の正体
「地球を破壊できる力ですか」
「まあ、地面を軽く殴って真っ二つ――とまでは行かないでしょうが」
コップ一杯と海。
携帯電話と世界を滅ぼす兵器。
その比較が正しいかの審議はさておいても、泉の言うとおり確かに言い過ぎとは言えないかもしれない。
「そんな……そんな存在が、本当にこのコだと?」
信じられないと言った様子の佐藤。
「そうです。だから私達はそれを回収して監視下に置こうとした訳です。世界を破壊する規模の不発弾が急に見つかった感覚ですよ、私達からすれば。居場所を突き止めてこっそり回収しようしたら圭君がそれと遭遇していて本部じゃ大騒ぎでした。私達よりも早く見つけ出すなんて、一体どんな情報網を使ったのです?」
沢田のオカルトマニア仲間だとは言えない。
「偶然と言われればそうなのでしょうが。情報社会も侮れない物ですね。自分の力が随分古典的に思えてしまいますよ全く」
「そんな事は無いでしょうけど……えっと、それじゃあ、魔族はどんな魔法を使うんです?」
「魔族の魔法は私よりもっと古典的、もはや原始的と言ってもいいような魔法ですよ。火でドッカーン、風でビューン、水ザッパーン、雷ズドーンみたいな感じらしいですよ。当然ですが見た事はないので伝聞ですが」
「安いバトル漫画みたいですね」
「バトル漫画って技名を叫ばないと、大体そんな感じになりそうですよね」
「それは流石に言い過ぎだと思いますけど……」
「まあ、それでも大抵の漫画よりも破壊力では勝るらしいですが……タメを張れるのはドラゴンボールくらいでしょうか」
「安い漫画みたいって言った後に出していい名前じゃないですよね!? というか鳥山先生ネタが多いですけど好きなんですか?」
「そりゃ、好きですよ。カメハメ波の練習をよくしています」
「まさかの現在系ですか」
「1000回に一回は出ます」
「スゲエ!?」
普通に驚いていしまっている。
「魔力が多少あるせいかもしれませんね」
「冗談じゃないんですね……」
普通に凄いが本気で1000回以上もカメハメ波の練習をしていると言う事実には呆れるしかない。
「というか、例えが突拍子過ぎて現実味が湧かないんですけど」
「まあ、ぶっちゃければ、私もないですよ。現実味は。正直、地球が滅ぶ、なんて言われてもって感じです」
「えらく、ぶっちゃけますね」
「ただ実際に過去に何度か起こっている事実がある訳なので、信じる以前なのですが」
「え? 過去に何度か起こっていたんですか!? そんな歴史的大事件知らないんですけど?」
「おや? 教科書に載っていませんでしたか?」
「世界史のですか?」
「いえ、地学です」
「地学?」
「人類史が始まる以前、今から数千万年前の話。白亜紀の大絶滅、恐竜達が滅びたのは隕石の衝突でも、火山の噴火でも、環境の変化でもなく、紛れも無く魔族たちの争いが引き起こした事件なのです」