佐藤パート8 金髪少女の正体
「おい! 大丈夫か! おい!!」
銃で撃たれ、目を開かない金髪の少女を腕の中に抱え必死に呼び掛ける佐藤。
「落ち着いてください圭君」
「落ち着けだと? あんたがこの子を銃で撃ったんだろ! 何で逆にあんた落ち着いてんだよ! ふざけんじゃねえぞ!?」
銃を自分に向け撃つ相手を敬う程、佐藤もお人好しではない。今度こそ敵意剥き出しに泉に食ってかかる。
「私は大真面目です圭君。よく見てください、それは寝ているだけですよ?」
「え?」
胸元に抱える少女をよく見ると確かに「スースー」と寝息が聞こえてくる。外傷も特に見当たらない。
――外れていた?
「いえ、弾は間違いなく当たっています。これを」
また思考を読んだ泉。しかし、佐藤はそれを気にする事なく泉の差し出した物を見る。
そこには先頭が拉げた銃弾があった。
「相当硬い物に打つかっています。今この家にそれ程硬い物は「それ」以外にありません」
泉の指すそれとは当然、金髪の少女の事だ。
「そんな訳ないだろ? 人間が銃弾を受け止められる訳が……」
「人間じゃないんです。私のような半端な人間ともまた違う。純粋な魔族なんです」
「魔族?」
初めて聞く単語である。
「すみません圭君。私を信じて大人しく、この場所にいてくれませんか?」
どうすれば命令されたとは言え、自分を殺そうとした人間を信用する事が出来ると言うのだ。抵抗しなければ危害を加えないと言ったはずの彼女をどう信じろと言うのだろうか。
「そんな事っ!」
出来る訳ねえだろ! と叫ぼうとした佐藤は言葉に詰まった。
「お願いします。佐藤圭さん」
彼女が膝と手、そして額を地面に着き土下座をしたからであった。
「組織は私が説得します。あなたを殺さない事を、あなたが日常に戻れる事を、あなたに全てを話す事を、あなたの安全も安心も全てを保障すると誓います。だから、どうか私を信じて一緒にこの部屋にいて下さい」
頭を下げながらの泉の懇願に対して佐藤の返す言葉は
「この子は?」
自分が抱えているこの少女の安全確認であった。
「何の心配もありません。私にはどうしようも出来ない存在なので。その事についても、お話する事を約束します。ですから、どうか」
都合の良い話である。虫の良い話である。信用出来る訳がない。殺されかけた相手にかける情などある訳がない。普通ならば、どれだけ旧年の仲である友人だったとしても、許す訳がない。許せる訳がない。許して良い訳がない。
そんなお願いを聞き入れる事など不可能なのである。
「氷華さん」
しかし、佐藤は
「分かりましたので顔を上げてください」
泉のお願いを了承するのであった。
「本当によろしいのでしょうか?」
あまりに簡単に受け入れた佐藤に泉はつい聞き返してしまう。
「はい。また銃で脅せばいい所をわざわざお願いしたのは何か理由があるんだと思いまして。それに、この子の事を知るにはアナタに聞くしかありませんから」
佐藤は銃を向けられ自分を撃つ人間を敬う程お人好しではないが謝れば許してしまう程お人好しなのであった。
「ありがとうございます。すぐに組織と連絡させて頂きます」
「お願いします」
と、佐藤は少女を抱えている片方の手を外し、膝を着いたまま泉に差し出す。
「どうも」
その手を借りて立ち上がった泉
「確かに温かいですね……」
「え?」
「いえ、では佐藤様は……」
「改めて畏まらないでください」
「貴方がお望みなら……では圭君、私は連絡しておりますので居間の方で寛いでいてください」
こちらへ、と通された居間でがっちりとホールドしたまま眠る金髪の少女を抱えて佐藤は泉の連絡が終わるのを待つのであった。
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