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佐藤パート7 佐藤、泉、車内にて

「ご明察ですよ。拍手は要りますか?」

「ええ、是非(ぜひ)

「え……」


 泉の発言に乗っかり少し言って見ただけのつもりが本当に拍手を所望されて軽く動揺する佐藤。

自分で申し出た手前、やらない訳にもいかず、金髪の少女に手を離してもらう。

そしてパチ、パチ、パチと佐藤ただ一人だけの拍手の音が虚しく車内に響く。


「どうも」

「いえ……」


 手を下ろす直ぐに少女は佐藤の手を掴んだ。ただの小さな子供のように。


「申し訳ないですが、まだそれの正体は教えられません」

「後で説明するって言いましたよね?」

「嘘です」

「そんな臆面も無く言わないでください……」

「まあ、丸っ切り嘘と言う訳ではないです。現在、貴方の事を協議中なのですよ。結果次第では教えて差し上げられるのですが」

「いつ決まるんです?」

「分かりません。どうやら難航しているようです」

「何で氷華さんが分かるんです?」

「ですから分かりませんって」

「あ、いえ、その協議が難航している事が、です」


 泉は誰かと連絡している様子もない。それなのに実際に協議の内容を見ているような言い方である。そもそも、未だ連絡器具などを一切使っていない。佐藤達の事は一体どうやって伝えたのだろうか?


「私のテレパシーはある程度なら遠くの相手にも使えるのです。発信が出来るのが私だけという一方通行な連絡手段ですが。魔力が勿体無いので定時連絡ですし」

「なぜそんな事を?」


 携帯電話などを使わずにそんな面倒くさい方法を取る理由は何なのか。


「まあ、備えあれば何とやらです。電子機器より魔法の方が機密性に優れていますから」

「なるほど」


 秘密の組織らしい解答であった。


「向こうにはテレパシーが使える人はいないんですか? 一方通行と言ってましたけど」

「いませんね。能力が使える人間はそう多くありませんので。それに使える魔法も個人によって違いますし、基本的に一つだけなので」

「他にどんな能力があるんですか?」

「それはお答え出来ません」

「ですか」


 組織内部の話と少女については秘密のようであった。


「それも協議次第ですが……目的地に着くまでに決まるかどうかと言った感じですね」

「目的地って一体どこなんですか?」

「私の家です」

「それは会社をホームと言うような話ですか?」

「いえいえ。言葉の通り私の自宅です。組織の居場所を知られる訳にはいかないので」


――それも、そうか。


「まあ自宅と言っても借家ですが、東京の小さなアパートです」

「東京ですか」

「ええ。既に都内に入っていますよ。私の家までもうすぐです。」


 結局、埼玉から東京まで着いてしまった佐藤であった。


「氷華さん」

「あ、すみません圭君。定時連絡の時間です。少々お待ちを」


 声を掛けた所を制される。


 三分経っても泉は黙ったままである。テレパシーを遠くに飛ばしている時は他の人物と会話が出来ないようだ。銃を向けられていた時も一分程、黙っていたが、あの時に組織とやらに連絡していたのだと佐藤は気付く。


 泉が他の人間にテレパシーを使っている間に、佐藤は自分なりに金髪の少女の正体について考える。


 この子が探していたフライングヒューマノイドの正体である事は薄々想像をつけていた佐藤ではあった。泉の『魔法』の話を聞く限りでは、この少女も魔法を使えるという事なのだろうか? そうすると飛行能力?

 もし、沢田から見せて貰った東京の動画に映った謎の黒い点が本当に彼女であれば特別な力を間違いなく持っているはずである。


 しかし、泉が彼女を「それ」と呼ぶ事から、仲間を回収しに来たという事でもなさそうであった。それに少女から感じる雰囲気。中学から高校生くらいの見た目の割にあまりに無垢で幼い気がする。極端な話が今生まれたばかりのような振る舞いを少女はしている。       

泉が言う魔法使いともっと別な、特別な存在か何かなのか?


「すみません。終わりました」


 泉が連絡と言って黙っていた時間は約5分程であった。


「決まりましたか? 俺の扱い」

「はい。ですが、本当にあと少しなので、その話は私の家で」


 車は住宅街を走っており、この中のどれかに泉の家があるようだ。


「そういえば圭君。定時連絡前に何か私に言い掛けていませんでしたっけ?」

「いや、この子の正体は秘密にしていましたけど、氷華さん自体の能力の話とかはして大丈夫なのかなと」

「それは圭君が警戒していたので、自分の事を話せば私が敵ではない事を分かって貰えると思ったので大丈夫だと思ったのですが」

「思ったのですが?」

「到着しました」


 車窓(しゃそう)から見える泉が住むというアパートは特別な所は何もない小さなアパートであった。少し古臭く感じる、お世辞にも綺麗とは言えないアパートであった。

 大学に出て一人暮らしをしている佐藤のアパートも似たような物なので何も言えないが。


「家賃は三万二千円ですよ。駐車場代は別ですが、とても住みやすい物件となっています」


 駐車場に車を止めながら自宅の説明をする泉


「不動産の方ですか? 大学から遠いので住む気はないですよ?」

「いい所ですけどね……取り敢えずそれと一緒に車から降りて、私の部屋まで連れて来てください」

「はい」


 佐藤は車内にいる間も今もずっと手を握っている金髪の少女の手を引いて車を降りる。逃げる事も考えたが、抵抗しなければ敵ではないと言っていた泉。その言葉を信じるなら、ここは大人しくしていた方が懸命だと考える佐藤。

 泉に思考が読まれているかも知れない現在、迂闊に動く事が出来ないと言う理由もあった。


「圭君」


 部屋の鍵を開けている泉が佐藤に話しかける。


「すみません」

「何がですか?」

「いえ、どうぞ中へ」


 ドアを開け客人を招くように佐藤と金髪の少女を受け入れる。そして佐藤が中に入った瞬間


「がっ」


 後ろから頭を殴られた佐藤。痛みでその場で倒れ込む。


「圭君、協議の結果だけ伝えます」


 痛みで悶える佐藤の耳に変らず冷えた泉の声が聞こえてくる。


「殺せ。だ、そうです」


 やっと振り返った佐藤に泉は間髪入れず


 今度こそ指に掛けた引き金を、弾いた。



 読んで頂きありがとうございます。

 明日も21時に投稿する予定です。

 クリスマスも終わり、そろそろ年明けに向けて大掃除をしないといけない時期ですね。普段から私はガサツなので汚い部屋を掃除しようとするのは、とても億劫ですね。

 感想お待ちしております。 それでは!

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