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魔族と最強の魔族『エイン』

 毎日少しずつでも投稿するつもりです。

 書くのが遅く、荒い文章ではありますが完結まで突っ走っていこうと思います!

 ぜひ読んで楽しんでくれれば幸いです!

 遥か過去、人類の文明が始まるよりもずっと以前から、地球には魔力を持ち魔法が使える種族が存在した。魔法を使えるその種族はいつしか『魔族』と呼ばれるようになる。


 魔族は人間と同じ形をしているが、その中身は全くの別物である。


 魔法が使える点で既に人間とは別物ではある事は間違いないのだが、他にも異なる点を挙げるならーー寿命である。


 彼らは不老であった。


 最高のコンディションの状態を常に保つ事が出来る魔族は老衰で死ぬ事がない。

 さらに全生物の頂点に立つ彼らが他種族に生命を脅かされる事もなく、魔法による適応力により環境の激変にすら耐え得た。


 そのため魔族の寿命は百年や千年では到底収まりはしなかった。それこそ長くて百年程の命しかない人間にとって宇宙の果てを彷彿させる程、気が遠い年月を魔族は生きのであった。


 しかし、彼らも不死ではない。寿命がない訳ではない。


 では無敵にも見える彼らの死因は何か。


――それは同じ魔族同士での殺し合いがほとんどであった。


 魔族に人間的な理性はない。野生的で、本能に従い生きる動物である。

 その本能の中で最も強く彼らを動かしているのが闘争本能だ。


 力の誇示。どちらが強いのか。魔族同士が出会えば、そこには雄も雌も関係ない、どちらの魔力がより強いのか相手の死によって決める文字通りの死闘を繰り広げる。


 とは言え、そもそもの固体数が少ない魔族同士の戦闘は滅多に起こるものではない。


 だが一度でも魔族が鉢合わせる事になれば、その戦いは(すさまじく天災と何ら変わりのないものである。互いの力量にもよるが場合によっては周辺の生態系を一変させる程の大規模な破壊すらも起こり得た。


 しかし、疑問が一つ。


 雄も雌も顔を見れば殺し合う魔族の種がどうして途絶えないのか? その答えは、『百万年に一度の頻度で魔族達全員に発情期が訪れるから』である。


 寿命の長い魔族にとって繁殖行為はほとんど意味のない行為であり、むしろ魔族にとっての繁殖は敵を増やすという事を意味している。要は彼らには雄も雌も関係なければ、子も親も関係ないのだ。


 しかし、敵を増やしてしまうと言っても魔族は本能に生きる種族である。いくら不老の魔族と言え繁殖をしなければ絶滅は免れない。


 そのため他の動物達との例に漏れず種の存続を行うのだった。


 何とも矛盾した本能であった。ただその矛盾を飲み込むために増え過ぎず減り過ぎない期間が百万年に一度という他の動物では考えられないような長い期間のシステムが生まれたのであった。


 魔族の固体数が少ないのはこのシステムが原因となっていた。


 また百万年に一度の魔族の発情期は他生物にとっては厄災でしかなかった。それは、発情期が終われば、増えた魔族達の生存競争が始まるからである。


 出会う確率が高くなるこの時期、魔族達は各地域で魔族同士の戦闘を始め、戦場となった地域の生態系に大きな影響を与えるのであった。


 当然ながら、魔族の死亡率もこの時期が一番高い。この時期以外の戦闘というのはかなり珍しい。つまり、百万年に一度のこの生存競争を勝ち抜いた魔族は次の発情期までの期間の生存率は大幅に上がると言う事を意味していた。


 こうしたシステムによって魔族のバランスは保たれていた。


 しかしだ。何事にもイレギュラーは存在する。


 数千万から億の年単位に起こるそれは、何の因果か。増え過ぎないように調整され魔族の個体数が一定に保てるシステムのバランスを崩して増え過ぎる事態が起こる。


 そして、その結果は魔族達の生存競争は各地域で納まらず地球全土に影響が及ぶ事のであった。


 大地が揺れ、火山が噴火し、津波が押し寄せ、突風が切り裂き、地球が悲鳴をあげた。


 大戦争が終わる頃、陸上も水中も空中も、生物はほとんど生き残っていない。


 それは魔族でさえ例外ではない。何度も生存競争を勝ち抜き、死線を(くぐ)り抜けた、数百、数千万年という時を生きる百戦錬磨の魔族でさえ、その大戦争で絶命してしまう程、壮絶で凄惨な戦いであった。


 魔族によって破壊の限りを尽くされた地球が時間をかけて再び生命力を蓄えていくのと同時に、元々の個体数が少なく絶滅の危機にさらされた魔族も同じように元のバランスの取れた数に戻って行くのであった。


 だがイレギュラーは一度では終わらない。


 後に人間達の学者が「ビッグファイブ」と呼ばれる地球の歴史上、生物の誕生から五度にわたる大量絶滅。その内の歴史的に新しい二つは魔族によって引き起こされた事はわかっているが、それ以前の絶滅も魔族達の戦闘で引き起こされたかどうかは誰もわからない。


 それは、二度の大量絶滅より以前の大量絶滅を経験した魔族がおらず誰も知らないからであった。どんな強い魔族でも二度以上の大戦争を生き残る事が出来なかったのであった。


 ただ一匹の魔族を除いてだが。


 その魔族は今まさに自分に危害を加えようとした雄の同族と対峙していた。


 最低でも二億年以上の時を生き、最悪でも二度以上の大量絶滅を乗り越えたその魔族を誰が名付けか「エイン」と呼ぶようになる。


 滅多に起こらないはずの発情期終わった時期以外に邂逅をした二匹。


 エインと対峙した魔族は敵意を剥き出しに殺気を放つ。周囲を凍てつくさせるほどの殺気。他の生物達は、不穏な空気を、そしてこれから始まるであろう災厄を本能的に察知し逃げていた。


「おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 人間の声とは似ても似つかない野生の慟哭。

 魔族の雄叫びが大気を揺るがし、咆哮とともに魔力を一転に集中させていた。

 空気がピリつく。しかし相対したエインは涼しい顔であった。

 逆に顔を醜く歪ませた雄の魔族は一点に集中させた魔力を


「があああぁぁぁ!!」


 放つ。


 同族を殺すためだけ研ぎ澄まされた一撃。

 単純に魔力を熱エネルギーに変換し放出した一線。

 迫る熱波を前にエインは避ける動作を一つも見せず、そして、直撃した。

 触れた物全てを焼き尽す熱線がエインを包み込んだ。


 敵が自分の攻撃を避けなかった事に違和感を覚えつつも魔族は勝利を確信した。

 この魔族は過去に3度、同族との殺し合いを演じていた。

 そしてその3度にわたる死闘を全て勝ち残ったからこそ、この魔族はここにいる。

 その3度の戦い全てにおいて、この一撃が直撃して死なない同族はいなかった。

 つまり、この一撃はエインに相対した雄の魔族にとって文字通りーー必殺の一撃であった。


 その、はずであった。


 熱線が通り過ぎた跡を見て魔族は驚愕する。そこには相変わらず涼しい顔をしたエインの姿を見たからだ。


 しかし、一瞬の硬直はしたが、雄の魔族は次の行動に移っていた。その雄の魔族の頭の中は動揺しきりであった。


 目の前の相手は今までの相手とは違う! 過去三度、相手取ってきた同族達とは違う!

 鳴り響くエマージェンシー。危険、危険、危険。頭の中で光る危険信号は間違いなく赤色が光っている。


 だが、雄の魔族は退く事はしなかった。一度、戦えばどちらかが死ぬまで終わる事はない。それが相手とどれ程の果てしない力の差がある戦いだとしてもだ。それが魔族達の戦いであった。


 間の前の強敵を、エインを殺すために雄の魔族は新たに魔法を使用する。


 熱で駄目なら斬撃を。

 切り刻めば少しは傷つくか。

 そして、思い至った風の刃。


「があ!」


 叫びと供に音を置去りに放たれるソニックブームがエインを襲う。

 音速を超えた風の刃がまたも微動だに避けようとしないエインに直撃する……が、無傷。


 予想通りと言わんばかりに雄の魔族は次の魔法を放とうとするが、ここで一度動きを止めた。

 ついにエインに動きがあったからだ。


 エインは口元に片手を当て大きな口を開ける。


 何が来る? 雄の魔族は身構える。


 エインはゆっくり空気を大きく吸い込み、そして――


 そのまま、ゆっくりと空気を吐き出した。

 空気を吐き出し終えたエインの目に少量の涙が浮かぶ。


 何もかも焼き尽す程の炎や全てを切り裂く風の刃を受けてなお、殺し合いの真っ只中であるのにエインは退屈そうに、大きな欠伸をするのであった。


 何か仕掛けてくると身構えた魔族もエインが何もしてこないと分かると再び次に思いついた新たな魔法を放とうとするが。


 しかし、今度こそ本当にエインが行動に移る。

 欠伸の際に口元に手を当てていた手を真っ直ぐ雄の魔族に向け、魔法を放った。


 雄の魔族が始めに放った魔法と同じ魔法を。

 単純に魔力を熱エネルギーに変えた一撃を。


 その単純さはエインと雄の魔族の力の差をより明確に表した。


 雄の魔族が放った一撃が触れた物全てを焼き尽す一撃であればエインの一撃は


 近づく物全て溶融(ようゆう)させる一撃であった。


 圧倒的な熱量の差は明らかな魔力量の差を如実にした。


 雄の魔族は迫る死に瀕しながらも無意識に全魔力を防御に変換する事に成功していた。防御のため魔力を使用するのは雄の魔族にとって初の事である。

 エインに自分の魔法が一切のダメージが無かったのはこの魔法のおかげと気づき、そして


 絶命した。


 戦闘が終わり辺りは焼け焦げた匂いが散漫していた。


 エインの魔法が通り抜けた跡に黒い塊と化した雄の魔族がいた。


 原型など留めていない。


 しかし、普通ならば形も残らぬ程の魔法。それでも、例え炭となっても形が残ったのは雄の魔族が死ぬ直前に(ほどこ)したプロテクトのおかげであったのだろう。

 今やただの黒い塊となった同族の死体が光となって消えるのを見届けると、エインは再び大きな欠伸をした。


 そして、息を全て吐き出すと、勢いよく飛翔した。



             **



 エインはもう自分が生まれた時の事は覚えていない。


 ただ本能に従い殺して、生きて、生きて、殺してを繰り返していた。そして、いつの間にかエインには敵がいなくなっていた。


 今しがたエインとの戦闘で命を落とした魔族もエインに取っては何の脅威になりえなかった。

 闘争本能が至上であり、力の誇示を旨とした魔族にとって無敵である事は魔族の到着地点であり頂のようなものに思える、が。


 何百万年前、もしくは何千万年前からか、エインに退屈という感情が本人の自覚がない所で芽吹こうとしていた。


 普通、魔族に過度な感情はない。


 先の戦いで雄の魔族が圧倒的な力を目の前にしても退かなかったのは死への恐怖という感情が著しく欠けているからだ。どの戦闘に置いても必ずどちらかが死ぬまで決闘する理由はそこにある。



 他の生物からすれば随分ネジのぶっ飛んだ本能だ。


 また、何百万、何千万年と生き事が可能な作りの魔族に心といった存在はある意味では死を早める事になりかねない。


 闘争本能のみを頼りに生きる事が彼らの長生きする彼らの一種の防衛手段となっていた。

 ……にも関わらずだ。


 誰よりも長く闘争本能に従事していたエインに心が芽生えようとしている。


 これが何を意味し、はたして何か意味があるのだろうか……?


 感情を持つはずのない魔族が感情を持つと何が起こる? それは、この段階では誰にも分からない事であった。



              * *



 しばらく、空を飛んでいたエインに急激な眠気と気だるさが襲い掛かった。


 エインはその場に停止して片手に魔力を溜めたかと思うと空間を、切った。

 すると空中に一筋の切り口が生まれた。そして、その切り口の間には空洞が見えている。


 異空間を作ったのである。


 魔族は誰もが魔法を使えるとは言え、こんな出鱈目が出来る魔族はエインの他にいない。あまりに強力過ぎる力であった。


 魔族も他生物と同様に眠る。それはエインも同じである。


 ただ、エインも普段から、わざわざ空間を作り出してまで寝るような事はしない。今回のような途方もなく眠い時だけで誰にも何にも邪魔されないように作るのだ。


 それ程の睡魔がエインを襲っていた。

 切った空間の歪みの中へ入り目を閉じると、エインは落ちていくように眠った。


 深く、深く、深く。

 

 そして時間にして約一万年、数億年を生きているエインにとって少し長く寝ってしまったと感じる程度の時間。


 まだ眠気を残しながらも異空間から出て来たエインの目の前に広がる世界はまさに




 異世界であった。




読んで頂きありがとうございました!

明日も同じ時間の21時に投稿します!

面白いと思ってくれた方! 感想の書き込みやブックマークを押してくれると励みになりますのでどうぞよろしくお願いします! ……と言うのは少し嫌らしいでしょうかね? それでは!

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