第六話 薪拾いと初遭遇
のんびり掲載
次回が初戦闘
リビン、ミーナ、シーナに声を掛けられ部屋から出る。
まだ長い時間一緒に居るわけじゃないが、慣れてきてるようで普通に話かけてくれる。
エミンさんに声をかけ、リビンの案内で教会から村にでる。
何でも、村の人達と一緒に薪拾いをしているらしい。
村の人への説明は、大丈夫なのかと思っていたが、丘を下り村の広場に着いた時に40代くらいのオッさんに声をかけられる。
「君が今日から教会に来ると言う送り子様かな?初めまして。ルマ村の村長をしているジーン=ルマだ。
シスターエミンから話は聴聞いているよ。今日からルマ村が君の故郷になる。よろしくな。」
優しい村長さんだが、この村には優しい人が多いのだろうか?
村長さんを皮切りに、村の人たちが声をかけてくれた。
パッとみた限りリビンの様な年齢の子供か、ジーン村長から上の世代くらいしか居ない様に見えた。
俺やエミンさんの様な世代は村に居ないのだろうか?
気にしても仕方ないが、後で聞いてみよう。
「これから薪拾いに行くと伺ってますが、ここにいる人みんなで行くんですか?」
「大人数人が保護者代わりで着いて行く感じだな。薪拾いもするが、普段から村の外で子供らが遊ぶ時に着いていく習慣があるんだよ。」
なるほどと思う。
学童保育じゃないが、薪拾いは口実で子供達の為の遊ぶ時間なんだな。
ただ気になるのは…
「大人数人が保護者に回らなきゃいけないくらい危険もある、と言う事ですか?」
「滅多にはないが、魔獣や敵対蛮族も出なくてはないんだ。用心の為だね。セイゴくんだったかな?君は教会の子らを見てくれると助かるよ。」
リビン達三人を含め子供は16人いる。
大人は俺含め6人。
大人達は短剣や木こり用の斧を持ってはいるが、俺は無手になる。
一応アイテムバックは持参しているが、果物や肉などの食料に路銀として貨幣の入った袋があるが、貨幣の価値がわからない以上無闇に使うわけにもいかないな…
思案に耽っていると、リビン、ミーナ、シーアが側に来て出発する事を教えてくれた。
リビンが前を歩き、ミーナ、シーナの手を繋ぎながら薪拾い兼遊びに行く集団に合流する。
「三人は薪拾いしながら、何をする予定なんだ?」
「おれたちはねぇ、隠れっこするんだー!」
「「隠れっこなの!」」
隠れんぼとか隠れ鬼じゃないところに、世界の違いを感じるが楽しみにしている様だ。
村を出てすぐ近くの森に、広場があるようでそこを目指して歩いているみたいだが、森からやけに視線を感じる。
木々を見ると人型をした何かと目が合う。
目が合った瞬間に木々に隠れてしまったが…
もしかして精霊なのだろうか?
今は子供達も居るし、精霊も子供達を微笑ましく見守って居る様な視線を感じるから、敵意はないのだろう。
雑談を交わしながら、広場に到着し、大人の合図の後散り散りに子供達が薪拾いに行く。
ある程度グループが出来ている様で、各グループを大人が見守りながら薪拾いや木こり作業をするようだ。
例に漏れず、リビン、ミーナ、シーナも俺と一緒に薪拾いに行く。
リビンはついでにエミンさんに教わった傷に効く薬草なんかを集める様だ。
リビンの肩には、アイテムバックの様なものが掛かっていてそこに薪や薬草を入れている。
ミーナ、シーナも薪を拾ってはリビンに渡している。
俺も三人に習い薪を拾いながら、木々に居る精霊に近づく。
「なぁ、間違えてないなら良いんだが、君は木の精霊なのかな?」
近くに来た俺に突然話かけられ慌てているが、目線が合うとビックリした様子で恐る恐る話かけてきた。
「アナタ、私が見えるの?」
「見えてるし、聞こえてるよ。君達が子供を見守っているのも、何となく感じてる。」
「アナタは精霊士…ではないわね。精霊士でも気配を感じる程度な筈だし…」
ふむ。
加護が原因かとも思うが、精霊士でも気配くらいしか感じないのか。
まぁ聞くのが早いか。
「多分なんだが、精霊神の加護があるからじゃないか「精霊神様の加護!?」とも思うん…だが…」
「アナタ、もしかして異界送りで来たの!?」
「あぁ、来たのは今朝なんだけど、知らない事が多くてな。
やっぱ加護が4つもあるのは異常みたいだし、精霊が見えて話せても触れても異常なんだな。」
と言いながら木の精霊の頭をポンポンと触る。
感触は髪の毛だが、見た目木の幹みたいな色の肌をしている見たいだ。
褐色の子だと思えば普通の人には見えるが、頭に葉っぱや枝で出来た装飾品がある。
また、花もいくつか服に付いている様に見えるが、精霊も服着てるんだな…
「異常というか…前代未聞よ…
精霊神様は加護を与えない代わりに精霊士を広めさせた方だもの。」
精霊神は精霊との親和性のある子に神託をだし精霊士になる様にしたらしい。
今では、精霊士は稀ではあるが冒険者やガンリエン連邦のエルフ族やタビット族という兎の亜人に浸透している様だ。
木の精霊と話し込んでいたら、リビンとミーナは側に居るがシーナが見当たらない事に気付いた。
「リビンにミーナ。シーナは何処行ったんだ?」
「シーナは変な匂いがする草を触ったって言って、広場側の川にいったよ!」
なんか嫌な予感がするんだが、広場は後ろにあるし川もあるのは見えるが、シーナはもしかして迷子か?
「リビン。ミーナを連れてすぐそこの広場に一旦戻ってくれるか?
それで大人達に、シーナが迷子かも知れないから、俺が探しに行くから広場で待ってて欲しいって伝えてくれるか?」
「わかったー!」「なの!」
「二人ともすぐ戻るから、広場で村の大人の言うことを良く聞いてな?ちょっと見てくるよ。」
嫌な予感を覚えたのは、森の中で村に近いからかも知れないが、野生生物が極端に少ない事。
鳥の鳴き声すらしない森は、おかしい気はする。
予感や直感は、バカに出来ない物がある為、俺は信用を置く感覚の一つだと思っている。
二人から離れ、先程の木の精霊に声をかける。
「木の精霊さん。俺が話し込んだから悪いんだが、銀髪の女の子居たろ?あの子を探してくれないか?」
「わかったわ………ぇ?蛮族がいる!それにさっきの子が近くに居るのを蛮族は気付いてる…」
「案内出来るか?急がないと行けない気がする。」
「どうして?あの子獣人よね?耳も鼻も良いんじゃ?」
「さっきリビンが【変な匂いがする草】って言ってたから、恐らく鼻効かないんじゃないか?
それに匂いがするなら目印になっちまう。」
「! こっちよ!急いで!」
案内通りに森を走ると、銀色の何かが逃げているのを見つける。
それを追う様に、オークが2体走っているのを見つけた。
こっちは無手でオークはククリナイフの様な物を持っている。
「なぁ、木の精霊なら木の板見たいな盾と棍棒みたいなの出せないか?」
無手で挑むよりはマシだろう。
ただ精霊にもルールはあるだろうから、協力して貰えるか不安だが…
「…あの子の為だわ。決めた。血を少し欲しいのだけど大丈夫?」
「それで良いなら幾らでも。シーナを助けれるなら、血でも何でも構わない。」
「手を出して。目を瞑って。チクリとするわよ。
精霊リュアス、私の名の下に汝と歩む契約を。アナタ名前は?」
「セイゴ=ウヅキ」
「セイゴ=ウヅキを精霊士へと導かん。」
名前を呼ばれた瞬間に、目の前の精霊と繋がった感覚を覚える。
「色々すっ飛ばしたけど、セイゴはこれで精霊士よ。これなら精霊のルールは遵守してるから力を貸せるわ。」
なるほど。
いや、のんびりしてる場合じゃないな。
「リュアス…で合ってるよな?今から突っ込む。盾と棍棒で良いから出してくれ。」
「わかったわ。後援護もするわ。」
「助かる。さぁ行くぞ!」
見るとシーナは躓いた様だ。
盾と棍棒を受け取った瞬間に、俺はシーナとオークの間に割り込んだ。