第一話 憧れが招いた事
初投稿
のんびりペースで掲載していきます
ヒーローに憧れた事は無いだろうか?
特撮やアニメやゲームに漫画と、ヒーローは数多く存在するが現実になれる事はまず無いだろう。
俺こと卯月 征護は、小さい頃に父がやっていたオンラインゲームをみて育ち、そんな父が「お父さんは仲間に頼られるナイトなんだぞ〜!」と誇られながらもそんな画面の中の父親に憧れて今も生きてしまっている。
幸いにも、厨二病などの発病は無いが、映画や漫画・ゲームになるとそういった仲間を、人を守る様な行為には憧れと自分にも出来れば!と思ってしまう。
こんな憧れを持った俺は、知人友人には理解されないまでも、仲のいい連中はいる。
そんな連中と遊びの帰りに寄ったコンビニで、お気に入りのレモンティーを手に持ちレジに並んでいた。
ふと前の方が騒がしいなと思い覗いてみると、コンビニの店員さんが、怯えながらお金を取り出してはレジ袋に詰めている様子。
………これってコンビニ強盗!?
よく見れば先に並んでいた友人が包丁を突き付けられて泣いているのが見えた。
俺の憧れを馬鹿にせず、馬鹿話にすら付き合ってくれる貴重な友人だ。
人間、スイッチが入ると驚くほど冷静になることがあるが、今の俺は冷静ではあるが、同時に怒ってもいるようだ。
普通なら強盗には抵抗してはいけません!が正しい判断なのだろうが、強い憧れは時に場を考えず暴走するようだ。
友人がキョロキョロ眼を回し俺と視線があう。
助けを求めているように見え、俺は手に持っていたレモンティーを構えて友人に頷く。
泣きながらも、何をするのか理解した友人を見つめレモンティーを強盗の顔を目掛けて投げる。
強盗はいきなり飛んできた物に驚き友人を掴んでいた手の力を緩めたようだ。
レモンティー投擲と同時に、強盗を組み伏せる為に無謀ながら突進をする。
これが綺麗に出来てたら良かったのだが、現実は斜め上に行くらしい。
突進に再度驚き強盗はこちらに包丁を向けていたようだ。
突進する時にお腹に包丁が刺さったらしい。
だが、店員さんや周りの人によって包丁のない強盗は取り抑えられ、友人は俺に向かって何か叫んでいる。
何を言っているのか理解出来ないが、友人をはじめコンビニにいた人を守った事に満足しながら意識が遠くなるのを感じ、張り詰めていた意識の糸を手放して目の前が真っ暗になった。
意識が急に戻り、気付くとそこは何もない広々としすぎた空間だった。
「卯月征護くん。16歳。思い切った挙句に人を庇い刺殺。いや思い切り良すぎるじゃろうに。強い憧れが引っ張ってしまった影響じゃな…」
ぶつぶつ喋る老人が目の前に座っている。しかも正座。
「お。起きたかね。何があったか覚えておるかね?」
呼びかけられ答えようとしたら、何故か口が上手い事動かない。
なんでだ?
「意識はあるようじゃな。口が動かないのは、君が死んでからの体のまま此処に呼んだからじゃよ。考えるだけでも儂に伝わるから無理せず考えるだけでええぞ。」
どうやら俺は、意識が遠くなるのを最後に死んでしまったようだ。