エピローグ
「ええっと、マニ、よかったの? アルカディアを放っておいて」
少年は、目の前の扉を閉めながら、食器を片付ける少女に振り向いた。
「ええ、悩んだ末です」
「ふーん……うーん、今でもアルカの近くにいると思うと……」
少年は軽く握った手を顎に当てる。
「ふふ、不安なんですかエルさん? 珍しいですねぇ」
「……マニには関係ないことだよ」
「——ま、アルカディアの思考は許せませんが、話を聞く限り、彼女はただ従わせられていただけの様ですので」
ふーん、と少年が瞬きした。少女は台所に肘をつき、遠い場所を見つめた。
「彼女が学校に行くのは……きっと、彼女だけでなく、アルカさんも人間側も、望んでいることでしょうし」
そんな彼女に、軽く少年が肩をすくめる。
「マニ、なんか最近変わったね」
「なんですか? 人はいつでも変われるものですよ」
「はは、誰のおかげかな」
彼らはお互いに、あの屈託のない笑顔を思い出し、笑みをこぼした。
*
「ヘックショイゥオイラッシャア‼︎」
「活きの良いくしゃみだな……風邪引いたのか?」
「いや、そういうわけでは……うーん、なんだろ——?」




