プロローグ
「伏見さん……私は、あの子とは入学当初に、学校の入口で会いましたの。」
避難時、関城さんは伏見さんについて話してくれていた。
彼女は遠い目をしていた。
そんなに前の話、とすぐるが突っ込もうとしたのをみて、私が口を塞いだのを覚えている。
「それで、彼女は自分の右手は『ひどい火傷だ』って言って、最初は包帯をぐるぐる巻きにしておりましたの。今思えば、義手だったってことですが……きっと、それを他人に見られるのが怖かったのでしょうね。その時は、学校に入るのを躊躇していたらしいの」
関城さんは、片足に付けられた義足を大事そうにさすった。
「私はごく普通に、一人で車椅子で学校に入りましたわ。それを見た彼女が、突然私に話しかけてきましたの」
少し声真似を交えながら、彼女は胸の前で手を組んで語る。
「『アナタは堂々としていてすごい、そんな風になりたい』って。目をキラキラさせて、たくさん褒めてくれましたわ。まるで宝石ね。私は、あの時の目を忘れたことがありませんの」
後ろで金属音や破壊音が鳴っていなければ、ここがどんなに甘い空間だっただろうか。
「だから私は、お友達として、制服をプレゼントしましたわ。右手が隠れて、不自然に見えない、袖の長い制服を……」
「……それが、こんなことになるなんて」
薔薇色のドレスは、はるか向こうの悪魔に手を伸ばした。




