6-F 待望! の反対は剪裁!
5秒で分かる前回のあらすじ
「電話越しのエルくん………閃いたっ!」
「————うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「この声、すぐる⁉︎」
私は百合ちゃんを背負い、暗闇を猛ダッシュで通っていく。
「アルカ、なんでそんなにグイグイ走れるの……⁉︎」
「え? だって、ほんのり見えるし……」
「見えないよ……! アルカの目は猫の目なの……⁉︎」
そうこうしているうちに私たちは、悲鳴の元へ辿り着く。
「すぐる! 大丈夫⁉︎」
そこにいたのは————
何かに体をがんじがらめにされている、すぐると鬱穂くんの姿があった。
「——ちくしょう! 離せ、おらっ! 鬱穂、そっちは大丈夫か⁉︎」
「…………」
「ああっ! 気絶している‼︎」
…………。
「おい! 鬱穂! 目ェ覚ませ……あひゃはひゃひゃ⁉︎」
…………。
「…………はっ」
「お! 鬱穂起きたか! わぁあひゃひゃ! なんだコイツら、どこ入ってんだ!」
「……すぐるのえっち」
「言っとる場合かーーーー‼︎」
「……なんか、大丈夫そうだね」
「心配して損した」
百合ちゃんはともかく、私は彼らの足元を見てそう思った。そこにいたのは、小さな生き物——カブトガニによく似た天生物、『カプタニ』が二匹いた。
以前コレの別個体に遭遇したことがある。マニさんから教えてもらったが、彼らの頭にある触覚には殺傷能力はなく、ただ人間を縛る能力だけに長けているらしい。
そう考えると、すぐるたちの命の危険は無いと結論づけられる。放っておいても問題なさそうだ。
「よし……じゃあ次は……」
私達は関城家の最も広いリビングに辿り着いた。
「……関城さん!」
「……! 白雨さん……?」
車椅子に乗った関城さんは、険しい顔をしていた。
「よかった、無事だったんだね!」
「ええ、セラが一緒に居ましたから……それにしても長い停電ですわ……あら」
彼女は、なぜかキョロキョロしながら言葉を続ける。
「……伏見さんは……? お会いしなかったのですの……?」
「え、伏見さん?」
「ええ……停電前にここを出たのですわ……というか白雨さん、こんな真っ暗の中動き回るなんて危ないですわよ」
彼女はまだ目をキョロキョロさせている。不安なのだろうか、伏見さんを探しているのだろうか——
いや、違う。私の姿が見えないのだ。私の声を頼りに私の姿を探しているのだ。本当はそれくらい暗いのだ。
「……私、普通の人より暗闇が見えるみたいです。今初めて知りました」
「……へえ、わたしも初めて知った」
百合ちゃんが小声で相槌を打った。私は彼女を背中から下ろし、この部屋を見渡した。
「ここには伏見さんはいないです。私、探してきます」
「……わかりましたわ。くれぐれも、お気を付けてくださいまし」
彼女は心配そうに目を伏せた。百合ちゃんにはここで待っているよう伝えると、肯定的な返事を返してくれた。
私は再び靴を鳴らした。私は目標の場所に真っ直ぐ歩く。この停電を起こした犯人の場所、検討は付いている。
*
案の定、私は関城家の扉のマークが光り輝いていたのを発見した。
「……よし」
私は意を決して中に入る。ここに、停電の犯人——アルカディアがいる筈だ。そうでなければ、こんなわかりやすい目印を立てるわけがない。
取っ手に手をかけて押すと、扉はギイィィィっと音が鳴る。中は暗闇。入り口を完全に閉めれば、光ひとつなくなってしまう。
流石に私の目でも何も見えなくなった。恐る恐る奥へ進む。靴と床が擦れる音だけが、この空間を独占する。
『〜♪』
最初に響いたのは、歌声だった。
まるで私を歓迎するような、異世界に誘うような。
『……♪』
聴いたことのない甘美な歌声。心に染み込むような、しっとりした音。
やがてその歌は暗闇の向こうに吸い込まれて消えていく。
——ガチャリ。
背後で音がした。同時に冷たいものが後頭部に当てられる。
心臓が一気に跳ね上がり、瞬発的に振り向く。暗闇の中、微かに私の目に映ったそこには、
いくつもの発射口のついた機関銃があった。
「アルカ、さようなら————」
「————な〜のだ!」
6章 完




