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《4》
日の朝、もしくは今日の夕方、また顔を会わせたらなにか話をしようと決めた。上っ面の会話ではなく、少しだけ中身のある話をするのだ。
そう思ったらば、飲み終わったコーヒーのカップが素晴らしいアイテムに見え始めた。
これだ。
洗って乾かして返す。こちらから話しかける切っ掛けにはぴったりだ。
大輔は早速コーヒーカップとソーサーを洗った。
そして引っ越しの挨拶をすべきだと気がついたのだ。
出来ることなら面倒なことはしたくはない。東京は近隣住民との関わりが少ないと聞く。けれどここは昔からの住人の街であるし、町内会もしっかりしていると不動産屋も言っていた。
同じアパートの住人には、せめて挨拶くらいしておくべきかもしれない。
しておくべきだろう。
きっとそうだ。
絶対そうだ。
緊張で胸がドキドキしてきた。人と関わるのが怖い。無視されたらどうしよう。
けれど自分は変わるのだ。
そのために、逃げてきたのだ。