08 入学式
すみません、諸々の事情により今回は短めです。次話からは2日に1話投稿します。
日本と同じような時期に行われる、オーグスディアン国立魔術学院の入学式。
学院の中でいちばん広い講堂には、見渡す限り人だらけ。
その全てが、年端もいかない子どもたち。
ある者は期待に胸を膨らませ。
またある者は周囲の期待による不安を抱き。
内に秘めた野心を滾らせ、覇道を進まんと志す。
皆、何かしらの決意を胸に秘め、ここに並んでいる。
その中には、ミアの姿も見られた。
以前と変わらず、何を考えているのかわからないような表情をしている。
だが、やはりまだまだ子ども。少しばかり表情が強ばっているのは仕方が無いことだろう。
「…………」
やめろよこっち見んなよ。そして安心したのかと思いきやひと睨みして顔戻すのもやめろ。
ほらぁ!他のやつが不思議そうな顔でこっち見てくるんだから!
俺から斜め前に位置するミアがこちらを見てくるのは、実はこれが初めてではない。
5分か10分に1度くらいの頻度でチラッチラ見られては、こちらも落ち着かない。
そんなこんなで気を揉んでいるうちに、学院長の話も終わってしまった。
式典名物の『校長の長話』はいつも苦痛でしかなかったが、今回はミアの行動とそれに伴う周囲の視線が俺の精神を刺してくることが1番辛かった。
学院長が一礼し、行動から去っていった。
これにて入学式は終了し、新入生である俺たちはあらかじめ割り振られたクラスに入り、担任が来るのを待つ、といった定番の工程がある。
だが、ミアとその母アンリに出会ったことを不運と数えるならば、やはり不運は重なるもので。
一学年にクラスは7つで、1クラス40人で分けられる。
確率で言えば八分の一。
見事にその確率を引いたのだ。
簡単に言うと、運が悪かった。
端的に言うと、この先が不安だ。
俺が入った教室に────ミアがいた。
◇◇◇
担任の教師が教室に入って、全員に着席させてから諸々の説明を始める。
と言っても、そんなに多くのことを詳しく説明することはない。
担任が自己紹介をして、1年の流れを軽く説明したあとは俺たち一人一人に自己紹介をさせる。
そして今、俺たちはその自己紹介をしているところだ。
「ファルシクス・ティラニットです。魔術を極めるためにここに来ました。よろしくお願いします」
皆、まだ世間をよく知らない者同士だ。
夢は大きく語っても全く問題なかった。
それこそ、夢を見ることで成長できる、というものだろう。
「ミア・フォーガリス。私の目標は、実力でファルシクス・ティラニットを下すこと」
……おっとぉ? 何言ってるのかなこの娘は?
当然、みんながざわつく。
唐突にこんな発言が出れば、いろんな憶測が飛び交うものだ。
やめてやめて!入学式の時とは比にならない視線×28って結構きついよ!
気になってたよ、教室に入ってからずっと俺を見てきてるんだし!
辞めてくれよマジで……!
唖然としている俺を、またしても座って見つめてくる。
狩人が獲物の弱点を見定めるかのような、間隙のない観察。
……もう、弱点でも何でも見つけていいから、とっととやめて欲しい。
裏のある視線に晒されたりすることは前世でも何度かあった事なので多少は慣れていたのだが……。
純粋な視線というものが、ここまで心にくるなんて……おじさん知らなかったよ……。
とまぁ、今後が更にさらに不安になってゆく。
俺……ホントにこの先大丈夫なのかな……?