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06 進む道

 俺は、魔法が使えない。


 比喩表現ではない。

 文字通り、本当に使えないのだ。


 リネアやミラに目の前で魔法を使ってもらい、イメージをより強固なものにしても無理だった。

 呪文を間違えているわけでもない。

 ましてや魔力が足りない、なんていうこともなかった。


 なぜなのか。

 どうして魔法が使えないのか。

 そんな疑問ばかりが渦を巻いていた。


 ミラが俺に魔法を教えるということにして、魔力を測ることに特化した魔術師を呼び、俺の魔法の適性を調べさせた。その結果、魔力保有量はミラのおよそ3倍ほど、魔法適性は殆どがカンストしているらしい。


 魔法適性とは何か。

 それは、火、水、風、土、雷、光、闇の六つの基礎属性に加え、自然、鍛冶、召喚、時空、錬金、神聖の六種、合計12種類の属性別の適性である。

 火属性に適性があるものは、火属性の魔法の威力が上がる。

 逆に適性が無いものが火属性魔法を使うと、上手く調整ができず、魔法が暴発したり、そもそも使えなかったりするのだ。


 ……あれ? じゃあ俺は何なの?



 なぜ魔法が使えないのか。

 ここからは俺の推測だ。

 俺は元々、この世界の人間ではない。

 そこを観点として考えてみた。


 一つ目の推測。

 魔力の放出が出来ない、ということ。


 さっきは魔力を消費する、という言い方をしたが、魔力を魔法の構築に使用する、という意味で捉えて欲しい。

 魔法の構築には、魔力を放出する必要がある。

 そして、魔法ごとに変動する魔力を調整して放出することで、行使する、という結果が出るのだ。

 体内の魔力を練成し、イメージした事象を引き起こすための魔法を構築するために魔力を放出することは、慣れた人にとっては無意識下で出来ることである。


 それが出来ていないのではないか。

 地球に魔法なんて存在しないので、その感覚が全くわからず、魔力調整が全く出来ない。

 よって、魔法が使えない。


 そういう問題は、今までにもよく読んできたので、可能性としてあるのでは? くらいの感覚だけどね。


 推測二つ目。

 これもよく見る話だが、俺が体外に魔力を放出出来ない体質ではないか、ってやつ。

 俗にいう、身体強化しか出来ないパターン。


 まず、放出する魔力を調整するためには自分の魔力の流れを知る必要がある。

 それから、魔力を練り上げるという作業に入るのだ。


 まず、魔力は人間という容器に溜まっているというわけではない。

 血液のように体全体を循環しているのだ。

 そして、人間の体の中の魔力の流れにも当然個人差がある。


 重要なのが、魔力は人間の体組織に依存しない、ということだ。


 例えば。腕には動脈と静脈、その他多数の毛細血管がある。血液は、その血管を通って身体中に行き渡る。しかし、魔力は血管に沿ってながれている、というわけではないのだ。当然、魔力の流れる箇所には個人差があるため、たまたま血管と同じ方向に流れることはあっても、それは血管と魔力になんの因果関係もないのである。


 ちなみに、魔力の流れるルートは『魔力回路』と呼ばれ、人間の体組織とは別のもう一つの体組織として認識されている。

 そして、魔力を練り上げるためには魔力回路を流れる魔力を、自分の意識で一定の場所に留まらせる、という工程を踏まなければならない。


 その工程を踏まえた上で、魔力練成をおこなうのだ。


 魔力の練成は、本当は一朝一夕で出来るものではないらしいのだが、俺は一週間ほどでマスターできた。これもミラの血筋のお陰かな? 感謝感謝。

 

 魔力の流れを感じ、調整し、練り上げることまで出来た。

 しかし、魔法の構築をしようとしても、どうしても魔法が使えない。

 となると、『そもそも魔法が使えない』という考えに至るのは必然である。


 三つ目の推測……というか願望。

 俺には何か特別な力があり、その為にしか魔力を使うことが出来ない、という可能性。


 正直なところ、これだと一番嬉しい。

 ていうかこれであって欲しい。

 異世界転移・転生の醍醐味である主人公補正で俺TUEEEEというのは一度はやってみたいものである。


 これについては現状、全くわからない。

 突然の神のお告げだったり、窮地に立たされてから発現したり、そもそも最初から使い方が分かっていたり。

 色々と条件が揃わないと発動しないのであれば、手探りで調べるしかないのである。



 とまぁ、俺の推測を並べてきたが。

 結局のところ、何一つ進展はなかったわけで。


 日々、体内の魔力を練り上げ、魔法を使おうとしては失敗する、ということしかすることが無いのである。


 神様、早く特殊能力プリーズ。



 ◇◇◇



 それから更に3年。

 俺は、魔力を扱うことを、呼吸をすることと同じくらいに自然にできるようになった。


 だって仕方ないだろ?

 毎日体鍛えるか本読むか魔力練るくらいしかすることないんだから。


 あそうそう、俺が5歳になった時、外に遊びに行ってもいいとファーゼスに許しを得た。

 普通なら外で遊びたがる年頃だから、外を出歩かせても問題はないだろう、という考えなのだろう。

 俺は喜び勇んで外に飛び出した。


 そしてそのまま、街を走り続けた。


 残念ながら、俺は遊ぼうという考えはこれっぽっちもなかった。

 というより、体を鍛えているうちに、動くことに爽快感と充実感を覚えるようになった。

 前世では有り得なかった事だし、体を鍛えて損はないからな。


 そのお陰で、腹筋が少し割れました。


 ……え? リネア? あぁ、二年前に普通のメイドの仕事に戻されていたな。

 仕事を与えても俺にしがみついてなかなか離れなかったから、ファーゼスが首根っこを掴んで引き剥がし、仕事場所へと連行していった。「ファルクンタスケテェェェェェェェェ!!!!」と叫んでいたが、ガン無視した。他のメイドも引くどころか呆れていた。うるさいぞ、リネア。



 ◇◇◇



 俺が住んでいるのは、サーグというとても大きな街だ。

 アグルーナ大陸の西部にハーネス王国がある。

 そして、サーグはハーネス王国のほぼ中央に位置している。


 サーグは、ハーネス王国の首都である。

 そして、第146代目ハーネス王国国王、マーザリア・ラウス・ハーネスが住む王城がサーグに存在しているのである。


 サーグは、世界で最も安全な街だと言われている。

 それはもちろん、血で血を洗う5000年を生き延びた唯一の国の首都であるということもある。

 もはや伝説とも呼べるハーネス王国の首都には、おいそれと手は出せまい。


 しかし、理由はそれだけではない。


 ハーネス王国は、最も安定した国である。

 となると、商人も研究者も学者も、安定した国でないとやっていけない者達は、こぞってハーネス王国に集まった。

 他の国からも優秀な学者や研究者が安定を求めて集まり。

 意図せずして世界中の魔法、魔術の研究の成果をかっさらうこととなったハーネス王国は、どの国よりも豊富な知識と技術で豊かに成長を遂げた。

 

 その学者や研究者たちが一箇所に集まって、己の国の技術を広め合い、他の国の技術をもって更に発展させ続けた場所は、今では盛んに魔法、魔術を教えている魔術学院へと姿を変えた。


 その名も、オーグスディアン国立魔術学院。

 魔法、魔術技術の黎明期に、他国からの移住を受け入れた偉大なる第62代目国王、オーグスディァン・マルク・ハーネスの名を冠した学院は、世界で最も盛んに魔法、魔術の研究が行われており、学院を卒業した学生は世界中で活躍している。


 オーグスディアン国立魔術学院といえば、誰もが知っている超超超有名な魔術学院である。

 さらに、オーグスディアン国立魔術学院には、一つの名物がある。


 ────8ヵ年の勉学のもと、己の知識と技術をもって、新しい魔術の道を開拓せよ────


 要するに、『頑張ってきた勉強の成果をなにか形にして残してね。あ、パクリはダメだよ!』ということである。

 だが、これは絶対にやらなければいけない訳では無い。

 全員が何かを残していけば、そのうちネタが尽きるから、やりたい人だけでいいのである。

 

 しかし、名物たる所以はそれだけではない。

 審査をするのは学院に勤めている全ての学者や研究者。

 その目が肥えた人たちに、「この発想はなかった」「私も試してみなければ!」「是非私の研究所に来てくれ!」などと言わせなければ、合格にはならないからだ。


 かといって、取り組むことに対するデメリットは資金面以外は何もないので、誰でも挑戦することは可能である。


 以前、魔法技術を流用した魔法工学を題材とし、学院どころか世界中に名を馳せた学生がいた。その学生は、魔法が使えなかったという。


 また、オーグスディアン国立魔術学院の最低入学年齢は、7歳である。


 6歳になった俺は、オーグスディアン国立魔術学院に入学することを固く決意した。




ファーゼス・ティラニット。

家系について、というか出自については何も話さず詳しいことは分からない。聞こうとすると話をそらされ、ミラとの惚気話しかしなくなるので、もう聞くのを諦めた。分かっているのは、デカい屋敷を持つくらいの金と地位があることと世界を旅する冒険者で、世界各地に存在するダンジョンの宝と男のロマン探すためにミラと一緒に冒険していたということ。


ミラ・ティラニット。ファーゼスに嫁ぐ前はミラ・ミューレイグ。

ミューレイグ家は、先祖代々多量の魔力と優れた魔法適性を備えている。

しかし、当然ながら血は薄くなっていくので、それに伴って魔力量は少なくなってきている。

だが、魔法適性は依然として変わらず、魔法に関係する何らかの事柄で天賦の才能を発揮し、技術の進歩を陰ながら支えている、いわゆる縁の下の力持ちの役割を果たしている一族。

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