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04 予想外

前話でも伝えたように、二日に1話の頻度で、大体20時に投稿します!


 やべぇ、まずったか?

 もう少し時期を待った方が良かったかもしれないな。


 「た、大変です!ファーゼス様とミラ様にご報告を────!」


 「ま、まっ、て……!」


 予想外の出来事により気が動転しているリネアは、いつもの真面目な方の状態でテンパっていた。

 いいものが見れたな。


 って、違う、そうじゃない!

 このまま二人に伝わるのはまずい。

 結果としてはいい方向に行くかもしれないが、出来るだけ不安の芽は摘んでおきたい。

 何事も慎重に、だ。


 「ま、まだ、ふた、り、には……しられ、たくな、い……!」


 びくり、と体を震わせ、恐る恐るこちらを振り向く。

 二人に報告すべきか、様子を見るか。

 どちらにするか決めあぐねている様子だが、どうやら後者で決まったらしい。


 「……ファル君、なんだよね? 今の声……」


 「そう、だよ」


 まだ拙くではあるが、何とか意思疎通はできるようだ。

 にしても、ほとんど喋っていないのにもう既に舌が回らなくなりそうだ。

 感覚としては、ずっと歌い続けた後みたいな。

 早く話をつけないとまずそうだ。


 「り、ねあ、に、……ふたつ、おねがいが、ある、の」


 「な、何……かな?」


 ありえないものを見る目をしていたが、流石というべきか、ポーカーフェイスで瞬く間に取り去った。

 未だに困惑気味ではあるが。


 「ひとつ、は、ふたりに、……ほう、こくしない、こと」


 それはもうさっき聞いた、二つ目は何?

 ポーカーフェイスのはずなのに、何故か目線だけでそう言っているように感じた。

まぁそんなに焦るなよ。一応初めて喋るんだから結構つらいのよ?


 「……ふたつ、めは、……ほんが、よみたい」


 「えっ、本、ですか?」


 これは流石に驚いただろう。

 ハイハイを初めて間もない赤ん坊が喋り始め。

 更には本が欲しいと言ってきたら。

 どんな人であろうと驚くに違いない。


 「うん、ほんが、たくさんある、ところにいき、たい」


 探索? 諦めた。



  ◇◇◇



 この赤ちゃんは、いったい何なのだろう。

 

 最初にファル君を見た時に、そう思いました。

 こちらを見ているのはわかります。

 しかし、その目には赤ちゃん特有の、無邪気さとでも言うのでしょうか?

 それが全く感じられないのです。

 翡翠色の瞳はどこまでも透き通っていて、心まで見透かされてしまうような、そんな不思議な感覚でした。


 ファーゼス様からは、「ファルの世話をしてやってくれ。ああ、でも食事の時は俺たちも行くからな」、と軽く言われました。

 世話をするだけで、他に何もしなくていいなんて、正直おかしいと思っていました。


 ですが、今なら分かります。

 この赤ちゃんは、異常です。

 内心をさらけ出すならば、怖い、という感情が一番はじめに出るでしょう。


 ですが、相手はまかり間違っても赤ちゃんです。それなのに、私が不安や恐怖を表に出してしまえば、赤ちゃんに悪影響を与えてしまうかもしれないのです。


 ファーゼス様は、ひどいお方だ。

 赤ちゃんの世話ができるなんて、かわいいもの大好きな私にとっては御褒美でしかないと思っていました。

 ですが、前言撤回します。

 認識を改めなくてはなりません。


 これは、御褒美なんかではない。

 私にとって、最大級の試練なのだと。



 ファル君は、さっきからずっとハイハイをしては休み、ハイハイをしては休みを繰り返しています。

 まるで、トレーニングをしているかのように。

 それを見ていた私は、またしても恐怖を覚えました。

 赤ちゃんは、好奇心と探究心からハイハイを始める、と言われています。


 ですが、ファル君は違いました。

 ファル君は、とても必死な目をしています。ギリギリまでハイハイを続け、疲れたら寝転がって体を休める。

 その様子から、好奇心や探究心などといったものは、微塵も感じられませんでした。


 食事の時になると、ファーゼス様とミラ様がやってきます。

 来る時間帯は決まっているので、ファル君は見計らったようにベッドに戻り、寝転がります。

 

 これは、報告すべきなのでしょうか?

 いえ、した方がいいのは分かっています。

 ですが、必死になっている姿を見て、報告すべきか迷ってしまいました。

 恐らくですが、ファーゼス様は、ハイハイの早さからファル君の異常さを垣間見て、私に監視をさせているのではないか、と思います。

 息子だから、という理由だけなら良いのですが……。



 「こん、にち、は」


 「ファルクンガシャベッタァァァァァァ!!??」


驚きました。

 とても驚きました。

 もう驚かないからどんとこい、などと思っていた時期が私にもありました。

 ですが、これは無理です。私の許容量を超えています。


 赤ちゃんが喋っている。

 やはり、ファル君はただの赤ちゃんではありませんでした。

 


 ……本を、読みたい……?

 やっぱり、単に喋っただけでは無かったのね。


 この子には、知性があります。

 しかも、自分の欲求をコントロールする理性も持ち合わせています。


 「い、一応、この屋敷の中には書庫があるけど……」


 「なら、そこに、連れてい、って、ほしい」


 はい、困りました。

 書庫は、ミラ様の趣味で集められた大量の本が眠っています。

 ファーゼス様は無条件で入れますが、一介の使用人である私には許可をいただくことは出来ません。

 どうしましょう……。

 

 「えっと、書庫は、ミラ様の許可がないと入れないんだけど……」


 あ、ファル君が困った顔をしています。

 やっぱり可愛いですね。

 いくら喋れても、困るものは困るようです。


 ふと、ファル君がため息を吐きました。かわいい。

 何か決心をしたのでしょうか。かわいい。


 「……りねあ、ふたりに、ほうこく、してきていい、よ」

 「え……、いいの?」

 「そうしないと、ほん、よめないん、だよね?」


 どうやら、ファル君は何がなんでも本が読みたい様子です。

 ファル君の力強い視線が、早く、と急かしている様でした。


 どうなっても知りませんからね?



 はい。報告しました。

 実は、報告してから1日経っています。

 今はファル君に付き添って、書庫にいます。


 昨日のことです。

 報告したら、ミラ様が気絶されました。

 ファーゼス様も唖然としています。

 ファーゼス様、顔に「何言ってんだこいつ」って書いてますよ?


 ファル君についての報告を聞き終わると、ファーゼス様はファル君の所へ飛んでいきました。

 真偽を確かめに行ったのでしょう。


 とりあえず、気絶なされているミラ様を起こさなければ。

 


 ……という事があり、今に至ります。


 ファル君は現在、私が作った文字表を見ながら、解読をしています。

 

 ファル君に本を渡した時、やっぱりか、と呟いていました。

 どうやら、喋ることは出来ても、字は読めなかったようです。

 その瞬間のファル君の顔はとてもかわいかったです。

 思いっきりムスっとしていたので、抱きしめたくなりました。


 ん? 腕をファル君にぺちぺちと叩かれています。

 何でしょうか?

 私は私の行動を確認してみました。


 なるほど、私の意志に反して体は既に抱きついていました。しまった、私としたことが。自制自制。



 ファル君はとても不思議な子です。とてもかわいいです。

 いきなり喋りだしたり、体を鍛え始めたり。しかしかわいいです。

 おおよそ普通の赤ちゃんではありません。ですがかわいいです。

 もはや、普通の赤ちゃんとしては接することが出来ません。結局かわいいです。


 結論────ファル君は超絶キュートです。


皆さん、暑くなってきましたね!

いかがお過ごしでしょうか?

私はエアコンつけてグダグダしています!アイス片手に!

周りには目立って体調を崩してる人はいませんが、皆さんも気をつけて下さいね!

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