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01 序章

初めまして、火芽かが ザラメです。これが初投稿なので、文的におかしなところが散見されるかも知れませんが、生暖かい目で見守ってやってください(真面目)

『遥か現の黙示録』。

 これは、俺が初めて書いたウェブ小説である。


 内容はよくある異世界転移もので、このジャンルを選んだ理由はただ単に「取っ付きやすかった」からだ。

 初心者ながら、今まで読んできた小説から得た知識と、自分のセンスをフルに活用し、8ヶ月で完結した。出版社からのお声やコミカライズなどの話はなかったが、ランキングではまあまあ上位にくい込んでいた。


 学生時代、これでもかと言うほどに読書に没頭していた。書店で一、二時間の立ち読みは当たり前、挙句の果てには友達の所持している本を全て読み切った、自他ともに認める活字中毒者の俺は、高二の頃に初めて読書に飽きた。

 これといって目新しいジャンルの小説がなく、世界観に没頭させてくれる本と出会えなくなったのが主な理由だった。


 いつも机に向かって本を構え、俺は自分の世界に飛び立っていた。

 そんな俺が急にぼんやりと明後日の方向を向いて惚けていたところを見た友達が、「おい、お前大丈夫か!?」「頭でも打ったのか!?」「安心しろ、新しい本を持ってきたぞ!」などと言って本気で心配してきた時は本当にショックだった。

 ちなみに、最後の奴が持ってきたのは既に読破済みの本だった。嫌味か。


 その時、俺は思ったのだ。

『本がないなら、自分で書けばいいじゃない』、と。



 ◇◇◇



 友達曰く、それからの俺はまるで水を得た魚のようだったらしい。

 必要不必要問わず、『使えそう』と思った知識は全て覚えていった。

 更に、いくつかの小説を読み返し、自分にあった文の書き方を真似て、試行錯誤を重ねたのだ。


 それまでの俺の周りからの評価と言えば、「付き合いが悪い」「無気力」「学校一の陰キャラ」「クソオタク」、そして「活字中毒者」である。


俺の容姿と言えば、周りからヒソヒソと小声で会話が聞こえるくらいだ。

ちょっとツリ目で、俗に言う三白眼。鼻は高くもなく低くもなく。小顔と言うには少々大きいくらいか。強いて言うなら、目尻にホクロがあることくらい。何がそんなに気になるのかね?


 成績は中の上で、運動は可もなく不可もなく。無気力故にやる気も起こらず、成績にも無頓着だった。その結果が極々平凡な男子高校生だったと言える。


 しかし、俺には誰にも負けない特技が一つだけあった。


『速読』である。


 普通のラノベであれば、二、三時間あれば読み終えることが出来るだろう。

 しかし、俺はそれを一時間かそこらで読み終えることが出来る。


 絶対内容分かってないだろ、と思うかもしれないが、そんなことは無い。

 しっかりと理解しているし、興味がなくならなければ二、三年経っても覚えている自信がある。

 それくらい、小説に本気だった、という訳である。



 ◇◇◇



 ────解せぬ。全くもって解せぬ。

 何が解せないのかと言うと、今の現状である。

 場所は、某県某市の書店。

 時間は、講義のない日であったため、丁度正午といった頃。

 ……今、俺は本棚の下敷きになっている。


 何を言っているかわからないと思うが、ありのまま今起こったことを話そう。


 新しいシリーズの小説の設定を煮詰めるため、普段は行かない書店に立ち寄った。

 今思えば、書店にはもう俺の望むものは置いていないし、煮詰めるにしたってわざわざ書店に来るのもおかしな話だ。

 昼飯を買いに来たはずが、気がついたら書店に寄っていた。小説を書くようになってからは他の小説を読むこともほぼなくなったというのに。


 そんな時、書店の外からけたたましいクラクションと甲高い悲鳴が聞こえてきた。

 出入口に程近い場所にいた俺は、当然何事かと思って外の様子を窺った。


 俺の目に飛び込んできたのは、通行人を吹き飛ばしながら爆走する大型トラック。

 それも、法定速度時速四十キロを軽く超えた速度で。

 それだけなら良かった。いや良くはない。良くはないが、その大型トラックは、この書店に向かって突っ込んで来たのだ。


 哀れ、一般人の俺は成すすべもなく、大型トラックにぶっ飛ばされ本棚に激突し、更には他の本棚がトラックの衝突の衝撃で、俺の方に倒れてきた。


 死ぬ。間違いなく、死ぬ。

 わけも分からず、唐突に訪れた死に、知覚が引き伸ばされる。


 幼稚園。みんなは外で走り回っている。

 俺は、我が物顔で絵本を読んでいた。


 小学生。みんなは更に元気に遊んでいる。

 俺は、チラチラとそれを見ながら本を読んでいた。


 中学生。周りが下ネタを躊躇いもせず言っている中で。

 俺は、本を読んでいた。


 高校生。もはや誰も話しかけてこない。完全に腫れ物扱い。

 その中で、俺は小説を書いていた。


 大学生。講義を聞いているふりをしている。

 当然、頭の中は小説のことしかなかった。


 振り返ってみるとろくなもんじゃないな。

 これじゃあ走馬灯も浮かばれないな……。


 と、そんなことを考えている間に。

 死は無常にも俺の命を奪っていく。


 やたら頑丈な素材を使っているのか、重くずっしりとした本棚の角に思い切り激突したことにより、頭が割れた。更にその重い本棚の下敷きにされ、俺の短い人生は終わりを告げたのだ。


 本当に、解せぬ。


 


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